第1章 ネウトゥラ自治区編

第1話 日常って儚い


そして月日は流れ少年は高校生になった。


 彼―緋野断矢は悩むことになる。

入学当初、彼はいつも通り1人で席に座り本を読んでいた。


ー彼は生来影が非常に薄く誰からも認識されないー


そんな彼のいつも通りが崩れたのはふとしたことだった。


 隣のクラスのある女子がこちらのクラスの女子と雑談するために訪れた事だった。


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 私はその時、隣のクラスで小学校からの付き合いの女子、伊藤綾乃(イトウアヤノ)と雑談をしていた。

「それでさー」


 会話をしながらふとある男子の事が“目”に入った。


「ねぇ、綾乃?」

 友人に問う


「なに?」


「あそこで一人でいる彼。誰だかわかる?」

 指を指しながら言う。


「え?何処何処?あ、あの子?誰だったかなぁ…」

もう入学して大分時間が過ぎている筈なのに名前を覚えられていないことに違和感を覚える。


「ちょっと待ってねー確か座席表が…あ〜あったあった。えーと緋野断矢(ヒノタツヤ)って名前らしいね」


「緋野断矢(ヒノタツヤ)…」


「それでその緋野君がどうしたの?」

 綾乃のに問われた。


「んーちょっと気になっただけー」

 はぐらかしておこうと思う。


「気になるの!あの子が?」

 友人は身を乗り出し興味津々でさらに聞いてきた。

「あ、いや、そうじゃなくてね…」

 困った…どうしよう…。ふと時計を見ると

「あ!もうこんな時間!次の授業始まるから行くね!」

 私は逃げる事を選択した。


「えーでももうこんな時間かーそれじゃいつか話してくれることを期待しているね!」

友人が聞き分けのいい子で良かったと心から思った。


 綾乃にはああ行ったけどやっぱり気になるし……ちょっと調べてみようかな


 私は手元にスクリーンを出し彼の名前をリストから探す。しかし…


「あ、あれ?」

 ついそんな言葉が出てしまった。

彼の名前はリストに記されていなかったのだから。


「んーこんなことってあるものなのかなぁ、でも現に起きてるし……。」


「とりあえず昼休みにまた来ようかな」


 そう決めた私は授業の時間も迫っていたの次の授業に向かった。


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「はぁ…やっと午前の授業も終わったかぁ」


 そんな言葉と共に伸びをする。もちろん独り言だ悲しいことにね…。


「とりあえずご飯食べようか…」


 一緒に食べる友達もいない俺は机の上に母謹製の弁当を広げ食べ始めた。


 昼は余り食べないこともありものの10分で昼は終わる。


 食べ終わった直後待っていたかのように話しかけられた。


「君、緋乃断矢くん?」


 そこには綺麗な黒髪を肩甲骨辺りまで伸ばした俺とそう背の変わらない女子が立っていた。


「そうだけど…何か用かな?」


 僕は座ったまま答えた。


「ええ、少し話したいことがあるの。私は露郷月視(ツユサトツキミ)。少し付き合ってくれるかな?」


 黒髪の女子―露郷露郷(ツユサトツキミ)―はそう続けた。


誰だろうこの人……。と思いながらも特に用事もないので付き合うことにする。


「わかった。ここじゃダメなら移動するけどどうする?」

 立ち上がりながら問う。


 「付いてきて」

 短くそう言われ素直に従うことにする。


 露郷について行くと周りがざわついていた。


「あーまたか」

「月視さんも物好きねー」

「てかあの子だれ?」


 露郷に連れてこられたのは中庭のベンチだった。


「ここなら落ち着いて話せるね」


 その言葉に疑問しながらも

「そうだな」と同意しておく。


「で、話って何?」と本題に入る。


「そうね、まずは私の能力についてからかしら。」

 能力ね……俺には余りいい思い出がないな……。


「私の能力は《可視》普段見えない物が目をつぶっている間だけ見えるって能力なのよね」


 ……嫌な予感がする


「で、話はここからなんだけど」

露郷は喋りながら手元にスクリーンを出しそれを操作している様だ。


 そしてスクリーンを見えるよう設定し見せながら言った。

「どうして貴方の情報はここに出ないのかしら?」

いい笑顔でそう言われた。


 嫌な予感が当たった……


 俺は顔を引き攣らせた。

「え、えーと……」

 ど、どうするかなぁ……


 本当の事を言っても良いのかなぁ……


 逃げるって選択肢もあるけど…人としてどうなのかと思うし…


 「俺さ……生まれつき情報を他者に見せることが出来ないみたいなんだよ……」


 能力については伏せておくことにして当たり障りのない情報を出していく。


「へーそうなの?それってチップの故障とかじゃなくて?」

 納得はしていないようだが理解はしてもらえたようだ。


「うん。チップを埋め込む手術をしたと言う事実は有るからね。あと、俺が許可さえ出せば情報は見ることが出来るけどな」

学校に提出している資料と同じ事を言う。


「ふむふむ。そう言う事ね」


 どうやら納得してもらえたようだ。


だが断矢はそれが自分の勘違いであることを知る。


「なら、この世で貴方を認識出来るのは私だけってことになるわね」月視は凄く良い笑顔でそう言った。


 言われた断矢は口をパクパクさせていた。

何を言っているのかわからないと言ったふうに。


「いやいや、何でそうなるんだよ!確かに俺は影が薄いし体質か何かのせいで情報は閲覧させれないから誰にも認識されてないけどさ!」


 断矢ははっきりと思った。この人と居ると危ないと……。


「何故って……私の能力可視は“見えない物が見えるようになる”って能力だもの」


露郷は続ける。


「だから“普通”は認識できない貴方を私だけは認識出来るのよね」


 断矢には彼女が俺に何をして欲しくてこんなことを言っているのか分からなかった。

ただ、背中に嫌な寒気を感じているのは確かだった。


「露郷…お前何でそんな事言うんだ?俺には理解出来ないんだか…」

頭を掻きながらそう言った。


「苗字で呼ばれるのキライなの名前で読んでくれない?」

そう言われ言い直す。


「月視さんは何故俺にそんな事を言うんだ?少なくとも俺には理解出来ないんだか…」


「何故って…私が君に何をしても誰も認識しないって事を言っているのよ」

月視は面白いオモチャを見つけた子供のような顔でそう言った。


 言われた瞬間、断矢は自身の防衛本能にしたがって有無も言わさぬ速さでその場から逃げ出した。


 断矢は校舎に向けて走り出した。

マズイマズイマズイマズイ!

 何でこうなった…思案しながらも足を速める。

 校舎に入る。全速力で階段を駆け上がり3回の渡り廊下を通って別館へさらに階段を上がり図書室と書かれた部屋に入った。


 図書室に入るなり映像視聴用の個室に飛び込む。


 ど、どうしてこうなった……。

俺、露郷になにかしたか?いや何もしてない。と言うより面識がないはずだ。

なら何故……


 思考を巡らせている最中に個室の扉を叩く音が聞こえた。


「もうすぐ授業が始まるので出てもらって良いですか?」


 どうやら思考を巡らせている間に授業10分前になってしまったようだ。


「あ、はい。今出ます」


 図書委員に促され個室の扉を開ける。


そこには腰に手を当て偉そうにする露郷の姿があった……


俺はげんなりしながら言った。

「こんな所にまで来やがって……」


月視は勝ち誇ったように

「ふふ、私から逃れることはできないよ!」


「……」


「あ、ちなみにさっき言ってたことは戯言だから気にしないでね」

 露郷は笑ってそう言った。


そして

「覚えておきなさい!私の名前は露郷月視!能力は《可視》!」


 ここでさっきまでの淑女のようだった露郷月視のイメージは完全に砕かれた。

「うん……知ってる」


「ええー、締まらないじゃん……」


「そんな事より、今授業10分前だろ?」


「え?あ、そうだった……まあいいや、これからよろしくね断也!」


「いきなり呼び捨てか……一方的な気がするけどよろしく、ツユサトサン」


「なんでカタコト!?というか苗字じゃなくて名前にしてよ!苗字で呼ばれるのはキライって言ったよね!」


「早く授業行きなよツユサトサン」

 疲れきった俺はヒラヒラと露郷に手を振る


「あーもう!覚えてなさい!」

 露郷は踵を返して出ていった。


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 時間となり授業終了のベルがなる。


「今日の授業はここまで」

 先生の声が響く。


 一泊置いて学級委員長が挨拶をする。


「気をつけー礼ー」

「「ありがとうございました」」

 

 挨拶が終わるのとほぼ同時に突然ドアが開く。


「断矢ー!遊びに来たよ!」

 そこにいたのは昼休み一方的な鬼ごっこをした露郷月視が立っていた。


 クラス中がざわつく。


「え?何でまた月視さんが?」

「断矢って誰?」

「知らなーい」


 俺は溜息をつきそうになるのを堪えながら露郷の方に向かう。




「お前……何でここに来るんだよ……」

 俺は半目でそう言った。


「ん?言ったよね?遊びに来たって」

 露郷は何故問われたか分からないといった顔をしていた。


頭痛がする……。

「ちょっと待ってくれ……とりあえず、今から終礼だよな?それ終わるまで待っててくれないか?」

 俺は頭を抑えながら言う。


「分かった。図書室で待ってるね」

 意外にも聞き分けよく待っててくれるようだ。ただ、露郷の顔が残念そうになったのが気になった。


 とりあえず露郷は図書室で待っててくれるようなので教室の中に戻り席に着く。すると……


「なぁお前……」

 ガタイのいい男子に声をかけられた。

 周りを見ると俺の席を中心に人だかりができていた。


「ん?なんだ?」

 質問があるようなら答えようと思う。


「お前…月視さんとどう言う関係だよ?」

 ふむ……色恋沙汰ですか……俺には関係ない話だな。


「露郷?あぁ、今日知り合ったばかりの友達だが?」

 ぶっきらぼうにそう答える。


「おいおい、それにしては親しそうに話してたじゃぁないか?それに月視さんはお前に待ってるよう言われてさも残念そうな顔してたけどなぁ?」ニヤつきながら男子は言う。


 周りから嫌な視線を感じる。

 好奇の視線である。


「あーそりゃあ、あいつのコミュニケイション能力が高いだけじゃないのか?」別に露郷とは今日知り合ったばかりなのは事実だ。それに俺にはやましい気持ちは何も無い。


「ほーそうかいそうかい。ま、お前みたいな根暗で影の薄いやつが月視さんのおメガネにかかるとは思えないしな」


 ガタイのいい男子がそう言うと


「ま、そうだよなー」

「“あの”月視さんがこんなやつを気に入るとは思えないしな」


 取り囲んでいた奴らは思いこ思いの事を言いながら席に帰っていった。


 はぁ…。何で俺がこんな目に遭うんだ……。


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 終礼も終わり、約束通り図書室を訪れる。


 そこには椅子に座り本を読む露郷の姿があった。


「来たぞ?」とりあえず露郷に声をかける。


露郷は本を読むの止めこちらを見て


「遅かったねー何かあった?」露郷はニヤニヤしながら問うてきた。


「あぁ、お前の所為でな……」

 忌々しげに呟く。


「そう…私の所為…ね…」

 露郷はまだニヤニヤしている。


「まぁ、いいわ。とりあえず一緒に帰りましょう」満面の笑みである…


「え?何でそうなるんだよ?」


「放課後の用事何て一緒に帰るくらいしかないでしょう?」むしろなぜ問うているのかわからないといった顔をしていた。


「いいから、行くよ!」

 無理やり手を惹かれて昇降口まで降りる。


「分かった!分かったから手を離せ!」

 断矢は手をブンブン振るが、抵抗虚しく校門を出るまで露郷は断矢の手を離さなかった。

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「露郷……お前俺に何かさせたいのか?」

 断矢はグッタリしていた。

 月視と手を繋いでいた事で周りの人に凄い目で見られたからだ。露郷に触れていると断矢は他人に認識されるようだ。


 そして道路に出た今も手は繋ぎっぱなしである。


「え〜べっつに〜」露郷は相変わらずニヤニヤしている。


「なら何で手を繋ぎっぱなしなんだよ⁉︎離せよ!」断矢は必死に抗議する。


「どうしよっかなぁ〜」露郷は愉しそうである。


 そんな露郷の顔を見て断矢は抵抗するのを辞めた。


「ん?どうしたの?抵抗しないの?」抵抗を辞めたことで露郷はニヤニヤしながらも問を投げかけた。


「もう抵抗しても無駄なのはよぉーく分かったからな……もう任せるよ……」断矢は半ば露郷に引っ張られるように付いていく。


「家に帰るのは良いが、露郷お前俺の家分かるのか?」


「心配ご無用。ちゃんと調べは付いているからね」露郷は得意げだ。


「そうですか……」


そうこうしているうちに断矢の住むマンションにたどり着いた。すると露郷は手を離した。


「じゃ私はこれで〜」露郷は手を振りながら走っていった。


 露郷が走り去った後ポツーンとひとり残された。


「一体あいつ何がしたいんだよ…」独りごちる。


 そして断矢は自分の住むマンションに入っていった。


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「ただいまー」


「「おかえりー」」


 声が重なる。

そしてダイニングの方からパタパタと少女が駆けてくる。


「おかえりなさい兄さん!」


 元気な声とともに歳が1つ離れた薄い桜色の髪の妹-緋野静華-が出迎えてくれた。


「あぁ、ただいま」妹の頭を撫でてやると嬉しそうな顔をした。


 毎度毎度思うが尻尾あったら凄い振ってんだろうなぁ……。


 撫でるのをやめると寂しそうな顔をしながらも「荷物持ちますね」と荷物を持とうとするが「いや、いいよ」と遠慮しておく。


「そうですか、私はお母さんの手伝いしてきますね」そのまま台所に行こうとする妹が「あっ」と声を上げ振り返る。


「兄さんにも春が来たんですね」ふふふと微笑みながらダイニングを通って台所に戻っていった。


「…?」兄はと言うと頭の上に疑問符を多数浮かべていた。


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 数分後、親父が帰ってきた。

 

 親父は玄関に入るやいなや

「む、今日はナポリタンか」


 何で分かるんだよ……


親父は何時もこうである…玄関に入るやいなや今日の夕食をピタリと当ててみせる。俺は何時もそれが不思議てならなかった。


 制服から私服に着替えて夕食の席に着く。


 俺の隣に妹の静華。目の前に親父、その横に母さんそんな並びで母お手製のナポリタンを食べ始めた。


「断矢、高校はどうだ?慣れたか?」

 突然親父に近況を聞かれナポリタを食べる手を止める。


「ま、ぼちぼちだよ」

 露郷については聞かれたら答えようと思う。


「あ、そうそう」静華が声を上げた。


「兄さんにも春が来たみたいですよ」

 そんな静華の言葉に


 食事の場が凍った。


「ほー」親父は感心したように

「あらあら」母は頬に手を当て


 俺はと言うと…


「はぁ……」溜息をつきげんなりしていた。


「てか、静華…何でそんな事言うんだ?俺は一言もそんな事言ってないと思うんだが…」俺は右手で頭を掻いた。


「だって兄さんの体から女の人の匂いがするんですもの」静華は悪びれずにそう言った。


 少し間を開け……


「静華…お前は犬か⁉︎」ツッコムしかないだろ……なんなんだよ…何で匂いとか分かるんだよ……。


「兄さんだって私の“能力”は知っているでしょう?」


「あ、そうか…てかお前の“索敵”には匂いも引っかかるのか?」


「ええ、もちろんですよ!兄さんの女(テキ)を認識するのが私の能力ですからね!」静華は誇らしげにふくよかな胸を張っている。


 そんな事を静華と話していると

「で、断矢実際どうなんだ?」親父ですらニヤニヤしている…。


 今日は厄日か…俺なんかしたかなぁ……。


「いや、別にそんなことは無かったんだけどさ…」とりあえず露郷について少し話す事にした。


「今日さ、俺の事認識出来るヤツに会ったんだよ…」


 俺の言葉と共にまたも食事の場が凍った。


「断矢、それホントか?お前、ただでさえ影薄いのにさらに“能力”のせいで認識されてないのに出来るヤツなんているのか?」


「そいつ露郷って言うんだけど、能力が“見えないものが見える”って能力だから認識できるらしいんだ…」


 親父がピクッと眉を動かす。

「ほーそんな能力を持った人も居るのか」

 

「で、お前はその人とどう関わって行くつもりなんだい?」


 親父の反応が少し気になる。

「どうって言われても……当分は様子見って所かな……」


 親父は少し間を開けて


「ならそうしなさい。お前もこんな事は初めてなんだろ?なら、ゆっくり自分のペースでやりなさい」


「あぁ、そうするよ」


 親父の一言でこの話は終わり、俺達は夕ご飯を食べることを再開した。


 そしてご飯を食べ終えた俺は、風呂に入り直ぐに布団の中で眠りに落ちた。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


 リリリリ……リリ…リリリリリリ……

 昨夜セットしていた目覚まし時計がなり、俺は目を覚ます。


「ん、んー」布団から這い出て伸びをする。


「よし」一言と共に自室からリビングに出る。


「おはよー」眠い目をこすりながら挨拶をする。


「おはようございます。兄さん」俺より早く起きていた静華が朝ごはんの調理の手を止め挨拶を返してくれる。


 「おはようー断矢ー」

 

 「あぁ、おはよう露郷……え?」

 そこで俺は居る筈の無い奴を見た……


「おい、露郷…何でお前が居て違和感なく食卓に座ってるんだよ…」


 そんな俺の問に対して帰ってきた答えは

「断矢ぁ、私昨日言ったよね?苗字で呼ばれるの嫌だって」ジト目でである。


「…月視さん、何でうちに居るんですか…」

 何で朝からこんな目に…


「んーさん付けもいただけないなぁ」

 露郷…何でお前はそんなに愉しそうなんだよ…


「わかったよ……で、月視お前は何で家に居るんだよ?」


「うん?断矢の家の前で断矢が出てくるの待ってたら断矢のお母さんに上がりなさいなと言われてねー」

 母さん!何で家に上げちゃうの⁈


「だから、お言葉に甘えて上がっちゃった♪」


 何で朝からこんな気持ちにならなきゃいけないんだ……


「て、その母さんと親父は何処だよ。何時もなら朝は全員で食べるはずだろ?」


「それならお母さんもお父さんも昔の知人に呼ばれたーとか言って月視さんと入れ替わりで出ていかれましたよ」


 静華が台所から朝ごはんを持って出てきた。


「そうか」


「兄さん?昨日言ってた人って月視さんのこと?」


「あ、あぁ、そうだよ」


「断矢、妹さん?」


「まぁ、そうだな」


「はい、兄さんの妹の静華と言います、以後お見知りおきを」静華が綺麗に礼をする。


「露郷月視よ、気軽に月視って呼んでね」


どうやら自己紹介をしてなかったようだ。


「では、兄さん、月視さん、朝ごはんも出来ましたので熱いうちに食べませんか?」


「そうだな、冷めたら勿体無いし食べようか」


 その時だった。


 ドーン!……バーン!!………


 複数の爆発音が重なる。


「「「え?」」」


 3人の声が重なった。

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