Section50 贈り物の靴下
「お包みですか?」
友達に靴下を買った。一目見て気に入った靴下だ。
30歳になる友達にするプレゼントにしては少し簡素な気もしたけれど、でもそれは歴史ある有名ブランドのロゴがカバーしてくれるに違いない。
「お願いします」
僕が店員にそう伝えると、彼女は慣れた手付きですぐに包みを終えてしまった。買ったばかりの二足の靴下は、重厚な紙箱に入れられて、生まれたばかりの双子を扱うように綺麗な様を見せていた。
僕はそれを受け取り、30歳になる友人の元へ向かう。
彼に会うのは高校を卒業して以来だから、12年振りになる。
彼がどのように変わっているのか察しは付かないけれど、きっとうまくここまで生きてきたんじゃないかと思う。
僕はそうしてきたのだから。
せめて、
義足の僕には履けない靴下を、彼には履いてもらいたいと思う。
「なあ、義足ってどんな感じだ?歩きやすいのか?」
高校生の時そう言った彼の顔は、今でもしっかりと覚えている。
そしてその言葉が、僕たちを繋げるきっかけにもなった。
僕は着慣れない喪服に身を包み、彼の最後をしっかりと見届けようと思う。
■古びた町の本屋さん
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