Section49 寒空の下


 寒い……。


 「今日は今季一番の冷え込みなんだって」


 どこからともなくそんな言葉が聞こえてくるけど、最近は毎日「今日が今季一番の寒さ」だなんて言っているような気がする。


 その言葉に嘘はないのかもしれないけれど、毎日毎日そうやって繰り返される情事は、なんだか茶番のようにも思えて、私は少し呆れた。


 1日、1日と、下降していく日々。


 それはまるで今の私みたいだ。


 最近の私は悪いこと続きでツイてない。


 これも今私が感じている寒空のように、いずれは抜けでて、暖かな日々が来るのだろうか。


 そんな風に考えたって、別に報われなんてしなかった。


 そこにいるのは、鏡に映った、滑稽な私でしかなかったのだ。


 私はマフラーをぐるぐるに巻いて、身支度を整える。そして外に出る。ずっとずっと寒い、その寒空の下。


■古びた町の本屋さん

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