Section48 その枝

 木の枝を拾って、ただ宙に投げてみた。


 それは少し風に揺られながらも、すぐにその場へ落ちてしまって、


 今はただ儚く、湿った土の上に転がったままだった。


 とても無防備なその枝を、僕はただじっと眺めたままで、なんの手を加えることもなく見つめていた。


 別に何の思い入れもなかったその枝なのに、今では少し気がかりで、この枝をここに放置していくことに少しためらうくらいだった。


 夜が明ける。


 たとえそうなろうとも、きっとこの枝はずっとこのままで、この姿勢で、ここにいるのだろう。


 僕はベンチから腰を上げ、その枝を置いたまま家路を急いだ。


■古びた町の本屋さん

http://furumachi.link

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る