Section44 静かで、暖かな夜に。

 夜は更けた。


 こんな時間まで会社にいることも、いつの間にか習慣のようになってしまっている。


 だけど東京にいる分には、いくら夜が更けようが、それはかりそめの夜のようで、あまりにも深い夜を感じられずにいるのが正直有り難かった。


 きっと、今僕がいるこの周辺には、僕のようにまだ仕事をしている人が山のようにいる。そう思えて、変な連帯感みたいなものを勝手に感じていたりする。


 東京の夜は、静かなのに、暖かかった。


 僕がいた田舎とは違う。あそこは夜になってしまえば、静寂と冷たさだけを纏って僕を襲ってきた。


 ここは違う。


 そう思いながら、僕はいたすらにコンピューターにコードを打ち込んでいた。


 東京の夜、そこに僕はいる。


■古びた町の本屋さん

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