Section42 ある一点に

 ひとつの部分をずっと見続けた。


 その一点だけに集中するように、ずっと、ずっと。


 そうしているといつの間にか、いつか見えていた他の場所には何も見えなくなってしまう。


 僕は今、その一点以外の物事の判別が付けられずに、その一点だけが僕の頭に訴えかけてくる。


 そこはただ一つの、本当になんでもない一点。


 その一点に溶け込むようにして、ただ、静かな眼差しのままで、そこにある物事の全てを一身に背負う。


 「どうしたの?」


 ミズキの声で、僕はハッと我に返って、顔を上げた。


 ミズキの顔はただ疑問のまま、僕の顔を見続ける。


 きっとその一点は、今僕自身であるのだろう。


■古びた町の本屋さん

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