第14話

 これは記憶の話だ。


 覚えているはずのない記憶だ。


 暗闇の中で、卵子と精子がぶつかる。


 それは核分裂を繰り返し、成長し、人ではないものから、人らしきものへ。そして、人となる。


 人となった受精卵は、暗闇がはち切れそうになるまで成長し、光を求めて手足を動かす。


 水の中で、息をすることもなく、声をあげることもなく、悲鳴をあげる。


 助けてほしい。助けてほしい。


 僕はもがいて、もがいて、力尽きそうになる。



 そして、光を手に入れた。



 光を手に入れた僕は、空気を求めて泣いた。


 落ち着くと、僕は腹が空いた。暗闇のものとは違う水を飲み、喉を潤し、腹を満たす。


 僕は光と空気と食べ物を与えられた。


 しかし、まだ足りなかった。


 そう、アレが足りなかった


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