第13話

「どうしたのですかお二人とも?」


 道化はあくまで淡々と僕らに問う。


「人ならざるものを処理だと?」


「はい。それが、私があなた達の前に姿を見せた目的です」


「ふざけるな!」


 僕は声を荒らげた。


「それではこの少女が助からないと言っているのと同じではないか!」


「はい。その通りです。その子は助かりません」


 道化が仮面の下にあるであろう瞳を少女に向ける。少女は明らかに怯え、僕の背後に隠れる。


「ついでに、あなたも助かりません」


「何だと……?」


「あなたも人ならざるものなり、処理される運命にあります」


 道化は僕に一歩近づき、下から顔を覗き込んだ。


「お前が人ならざるものを食う存在だとしても、僕とこの少女は絶対に人ならざるものにならない」


「…………」


「ここからーー深海電車から出てみせる。答えを見つけて。必ず」


 道化は黙ったままだった。


 しばらく沈黙が続く。少女が耐えかねたように、僕の背中から顔を出すと道化は呆れたようなため息をついた。


「答えが見つかると思っているのですか?」


「あぁ。問いは見つけた。答えも必ず見つかる」


「あなたは何も知らないようですね」


 道化は身を翻し、僕の視界から消える。そして、少し離れた場所に現れると、両手を広げてこう言った。


「答えを見つけようともこの電車からは出られない。なぜなら、この電車はーー」


 その続きを僕は聞くことはなかった。


 僕の意識はいつかの記憶の深層へ堕ちていった。


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