第8話

 僕と名もなき少女は、歩き続けた。しばらくの間は誰にも会うことはなく、また魚やサンゴを見つけることもなかった。


「終わり……でしょうか?」


「そうだな……」


 歩き続けた僕らは、深海を走るこの電車の先頭にたどり着いたらしい。前に操縦席がある車両が、その事実を告げていた。


「車掌様どころか、他の乗客の方も見当たりません」


「あぁ……」


 先頭車両についた僕らは途方にくれた。答えを――問いを見つける希望を奪われた気さえした。


「戻ろうか?」


「いえ、少し待っていただけますか?」


「なぜた? ここには何もないぞ」


「運転手に話を聞けるかもしれません」


 少女は僕の手を繋いでいない方の手で、運転席、つまり操縦席がある方を指した。


「そうか」


 僕は納得した。先頭車両は操縦席に繋がる扉がある。開いてこそいないだろうが、叩いたりして僕らがここにいることを知らせることができたなら、少しは真実がわかるかもしれない。


「行こうか。操縦席にいる運転手に会えればヒントくらいは得られりかもしれない」


「はい」


 僕らは操縦席に繋がる扉に近づき、操縦席に向かって声を掛けながら、扉を叩いた。


「すいません!」


 しかし、反応はない。


「すいません!」


 強く扉を叩くが、相変わらず反応はなかった。


「誰もいないのでしょうか?」


「そんなはずはない。誰もいないなら、どうして電車は動いている?」


「それは――」


 僕は扉を叩き続けた。しかし、反応はなかった。


「諦めましょう」


 少女が諦観を滲ませた声音で言う。


「しかし――!」


「あの紙には車掌様に会えと書かれていました。それなら、一番後ろの車両にいるかもしれません」


「……そうだな。運転手は諦めて、車掌に会いにいこうか」


「はい」


 少女が微笑み、僕の手を引いて来た道を引き返し始めた。


 深海電車からは、まだまだ出られそうになかった


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