第3話

 僕が再び歩きだすと、暗闇から一匹の小魚が泳いできた。


「なぜ?」


 僕は疑問に思った。電車は海の中にいるといっても電車の中は空気があり、海の中に沈んだりはしていない。要するに小魚は宙を泳いでいるのだ。


 そんなことを考えていると、また一匹、もう一匹と小魚がこちらに近づいてきた。


「どこからだ?」


 僕はまた疑問に思い小魚とは逆の方向に足を向けた。小魚の軌跡を辿り、電車を奥へ、奥へと歩いていく。


 そして、僕は見つけた。


「これは……」


 そこにあったのは魚の群れだ。先ほど見かけた小魚が大群で円を描いている。そしてその中心にはーーおそらく女性ものだろう。服が落ちていた。


 その光景に僕は戦慄した。これが人でなくなるということの本当の意味ではないのか。そしてこの小魚達はもとは人で、答えを見つけられなかったからこのような姿になってしまったのではないか。


 小魚の群れが煌きを残し、散り散りになって泳いでいく。それを僕は呆然と見送ることしかできなかった。


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