第3話
僕が再び歩きだすと、暗闇から一匹の小魚が泳いできた。
「なぜ?」
僕は疑問に思った。電車は海の中にいるといっても電車の中は空気があり、海の中に沈んだりはしていない。要するに小魚は宙を泳いでいるのだ。
そんなことを考えていると、また一匹、もう一匹と小魚がこちらに近づいてきた。
「どこからだ?」
僕はまた疑問に思い小魚とは逆の方向に足を向けた。小魚の軌跡を辿り、電車を奥へ、奥へと歩いていく。
そして、僕は見つけた。
「これは……」
そこにあったのは魚の群れだ。先ほど見かけた小魚が大群で円を描いている。そしてその中心にはーーおそらく女性ものだろう。服が落ちていた。
その光景に僕は戦慄した。これが人でなくなるということの本当の意味ではないのか。そしてこの小魚達はもとは人で、答えを見つけられなかったからこのような姿になってしまったのではないか。
小魚の群れが煌きを残し、散り散りになって泳いでいく。それを僕は呆然と見送ることしかできなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます