第10話 真実の告白、奏の思い
学校からの帰り道。煌太と奏は星屑高校名物の『クロスロード』を歩いていた。十八時を過ぎ、辺りは沈み途中の夕日が二人を照らし続けていた。太陽の光が目に入り、煌太は手で光を遮る。そんな煌太を横目に奏が話を切り出した。
「黒瀬さん、退学にならなくてよかった」
「そうだな」
奏の真っ直ぐな言葉が胸に染みこんでくる。生徒会室での一件で忘れかけていた、言いたいことが煌太の喉まで上がってきた。
玲愛のように、まっすぐで意志を伝えられるようにならないと。今まで逃げてきた分、本当の事を言わなければ。
「吉野君もサーチ部に入ってくれるみたいだし、今後どうなるのかな。そういえば、沢渡先輩はすでに引退してるから私達一年生だけの部活だね」
「そうだな」
奏の問いに単純な反応しかできない。生徒会室に行く前に言おうと思っていた一言をもう一度頭の中で整理する。奏に素直に向き合うために言うべきことがある。今この場で言わなきゃ絶対に後悔すること。
―記憶喪失について奏に伝える―
歩きながら深く深呼吸をして言葉にするタイミングを測る。
奏の顔を一瞥する。奏は俯きながら歩いていた。夕焼けのせいか頬がほんのり茜色に染まっている。
今まで逃げ腰だった自分に別れを告げ、気合を入れた煌太はゆっくりと話し始めた。
「あのさ、奏。話があるんだ」
「何?」
屈託のない笑顔を隣でふりまく奏を見ると緊張が増してきた。
「中庭で話そうと思った事なんだけど……今この場で聞いてくれるかな?」
「うん……」
自分の言葉が震えているのがわかる。先程まで緊張していなかったのに、胸の鼓動は高鳴るばかりだ。これから真実を伝える。今まで自分の為に動いてくれた人達が煌太の頭をよぎった。
山本先生は唯一、記憶喪失について知っている人で度重なる頭痛の際にアドバイスをくれた。そして何よりサーチ部という煌太にとってかけがえのない場所を提供してくれた。
放課後の教室で出会った玲愛は、記憶を失って以降初めて共感を覚えた人だった。玲愛のいつも真っ直ぐで、自分を曲げることなく最後まで貫き通す意志の強さは、自分にはないことだった。そんな意志の強さに導かれて今の自分があると言っても過言ではない。
吉野は自らのサッカー選手としてのプライドを傷つけてまで玲愛の処罰の説得に応じてくれた。そんな吉野と話した昨日の夜、初めて自分が変われた気がした。
たった二ヶ月半という短い期間だが多くの人から学んだことがある。
もう一度、奏を見ようと横を向く。奏はそれに応えるように力強い眼差しを煌太に注いでいる。何でも受け入れてくれそうな表情をしているように思えた。
思えば、今までいつも隣にいたのは幼馴染の奏だった。小さい頃の出来事は覚えていないけど、高校に入学した時からいつもサポートをしてくれていた。もちろん、交通事故に遭った自分を助けてくれているだけなのかもしれない。でも、奏はそんな憐れむような眼差しを向けるような人では決してないと煌太は信じている。こうして今も隣で真剣な表情で自分の発する言葉を待ち続けていてくれるのだから。
今だから言えることがある。
もう迷わずに前に進もう。
煌太は歩く速度を徐々に落としていき、ピタリと止まった。
―実は俺、記憶喪失なんだ―
煌太は奏に真実を伝える。自らの殻を破り、伝えなければいけなかった言葉を紡ぎ出すことが出来た。下を向きながら叫んだ言葉が奏の心に響くように、届くように伝えた。顔を見て言えなかったのは自分の弱さが、まだあるからなのかもしれない。でも、言葉にして言うことが出来た。
煌太は顔を上げずに奏が話しだすのを待つ。暫くの沈黙。クロスロードを突き抜ける風が煌太の髪をゆする。暫くしても返事が返ってこなかった。流石におかしいと思った煌太は恐る恐る顔を上げる。
次の瞬間、目の前に広がる光景に煌太は言葉を失った。目の前で立ち尽くす奏の双眸から大粒の涙が溢れていた。
また奏を泣かせてしまった。一番見たくなかった泣き顔を目の前の幼馴染は流している。やはり伝えるべきではなかったのかもしれない。
一度決めたことに煌太は後悔を覚えた。煌太の中に一つの疑念が再度蘇る。思いを伝えることはできた。だけど目の前に立っている大切な人を泣かせてしまっている。自分自身が望まない展開に煌太は戸惑う。
「や、やっぱり今のは―」
自らの発言を撤回しようするも、煌太の口から続きの言葉は紡ぎだされなかった。
自分は弱い人間だった。記憶喪失という病気を武器に、自らを守り続けていたんだ。でも、今はそれが違うって言える。たくさんの人達との出会い、そして何よりいつも隣にいてくれた奏や玲愛の存在。いつも隣で支え続けてくれた奏がいたからこそ今の自分がある。自分の意志を決して変えない、まっすぐな姿勢を見せ続けてくれた玲愛がいたからこそ今の自分がある。
タイプは違うけど沢山の刺激をくれた二人がいたからこそ、煌太はこの場にいることが、奏と向き合えることができる。一回言った発言を撤回するなんてありえない。
煌太は思いとどまり、胸に秘めていた蟠りを完全に捨てて、奏の顔を窺う。
目の前にたたずむ奏の頬には涙が流れた跡がくっきりと残っていた。この顔を何度見たことだろう。煌太は今までの出来事を思い出す。しかし、以前とは明らかに違うところがあった。
奏の頬には今でも涙がつたっているが、笑顔だった。
今まで涙にばかり気を取られていて気づかなかったが、確かに笑顔の奏が目の前に立っていた。奏は煌太と目が合うと、ゆっくりと話し始めた。
「そうだったんだね……今まで気づけなくてごめん……ね……」
奏は言い終えると、指で丁寧に涙を拭き取る。そして、また笑顔を煌太に見せる。煌太は思わず言い返さずにはいられなかった。
「どうして……どうして謝るんだよ。俺は奏を騙してた。嘘はつかないって約束したのに嘘をついてた。……俺って最低だ」
「そんなことない!」
人一倍大きな声で奏が反論する。クロスロードに奏の声が響き渡る。
「こうちゃんが嘘をついてたのって、私のためだったんでしょ? 必死になって、迷惑をかけたくないという気持ちがこうちゃんから十分伝わってきた。言われなくても私はわかる」
奏の透き通った声が風に乗って速度を増し、少し離れた距離に立つ煌太の耳へと届く。
「ははは。なんでもお見通しだな、奏は」
「だって私達、幼馴染でしょ」
そう、幼馴染。奏とは小さいころからの知り合いで家族同然に育ってきた。でも、今の煌太には当時の記憶が全くない。それなのに奏は真っ直ぐ向き合って接してくれる。事実を知った今でも。煌太は目頭が熱くなるのを感じる。
「俺は……俺は、今まで怖かったんだ。記憶喪失になったことでどれだけの人を悲しませたのか。家族と会う時だって最初は躊躇った。目の前にいる人が親だと理解できなかったし、中学生の頃の友達についても何も思い出せなかった。俺は何もない人間になったんだ。病院で行きかう人に慰めの言葉をかけられ、医院長先生と両親が話をしているときに泣いている両親を見たり……俺はいるだけで邪魔者扱いされるだけで誰にも喜びを与える事なんてできないんだと思った」
内に秘めていた思いが堰を切って溢れ出す。病院で過ごした期間は煌太にとって苦痛でしかなかった。毎朝検診に来てくれる看護師さんに名前を呼ばれるのが苦痛だった。毎日自分の身の回りの事をしてくれる見知らぬ人が親だと知らされたとき、とても苦しかった。この苦痛から抜けだすために血眼なってリハビリをして、十分な休息を取って、本来の入院期間の半分の期間で退院することができた。全ては病院から抜けるため。
しかし、いくら懸命にリハビリをしても治らない病気があった。逆行性健志。世間一般に言われる記憶喪失。これに関して煌太は、自らの病状を身内以外には打ち明けないで生きることを決めた。でも、言わなければ前に進まなかった。言った結果、目の前にいる幼馴染は受け入れてくれた。たとえどんな自分になろうとも。
「大丈夫だよ。こうちゃんなら」
力強い眼差しを煌太に向けながら奏は続ける。
「こうちゃんは自分を見失ってなかったよ。ここぞという時に自分の意見を貫き通したり、決して諦めないで最後までやり抜く姿。全部、昔のこうちゃんそのものだったよ」
言葉の包容力に包まれる気がする。奏の口から放たれる言葉は煌太を守るのには十分だった。
「奏がそう思ってくれるなら、俺は、もう少し頑張れるかもしれない……ありがとう」
「私だってこうちゃんが抱えていた問題に気付けなかった。言ってくれてありがとう……本当に、ごめんね」
お互い満面の笑みを晒す。先程まで吹いていた風は二人の平穏を示すかのように静かにやみはじめていた。
「小さい時からずっと一緒だったのに、私達はまだわかりあえてなかったんだね」
奏の透き通る声が煌太の胸に染みわたる。声に導かれるように煌太は奏の元へと歩を進めていた。
「そういえば、奏も言いたいことがあるって言ってたよな。聞くよ」
奏の伝えたかったことを真摯に受け止める準備は既に煌太はできていた。
「うん、それなんだけど……」
俯き、考える素振りを見せた奏は決意に満ちた表情をみせると煌太の顔を見る。
「やっぱ何でもない。特に大したことはないから」
奏は真剣な表情で煌太を見つめ続ける。煌太は奏が無理をしているように見えた。
「でも、俺の話を聞いてくれたのに奏の話を聞かないのは違う気が……」
「こうちゃんの話とは重みが違うもん。私の話は、本当に大したこと……ないから」
俯きながら何かを振り切るかのように小声で呟いた奏は、煌太に笑顔を見せるとそのまま駅へと歩き出した。
目の前を行く奏の姿はとても綺麗だった。記憶を失くす前は奏をどんな目で見ていたのだろうか。今と同じような目で奏を見ていたのだろうか。考えてみるが煌太の頭には何一つ思いつくことはなかった。
煌太の心に眠っている奏は、記憶喪失後の奏しかいない。以前の自分なら、必死になって記憶を取り戻すことに夢中になっていたのかもしれない。でも、今は目の前に見えているものを信じる事も悪くはないと思っている自分がいる。今日は臆せず自らの気持ちを奏に伝えることが出来た。これは一歩前に進むことが出来たといってもいいと思う。
前を歩いていた奏が、速度を落として煌太の真横に来る。
「明日、黒瀬さん戻ってくるね」
「ああ、戻ってくる」
「サーチ部のメンバー久しぶりに揃うね」
「うん」
ふと空を見上げると綺麗に輝きだした一番星が目に入る。あの星のように、これからもずっと輝いていけるのだろうか。ふと、過去の自分を思い出そうと試みるが、当然のように何も思い出せない。過去の自分は輝いていたのだろうか。これから先の見えない未来はいったいどうなるのだろうか。
「こうちゃん、早く帰ろう」
目の前で笑顔を輝かせる奏のような人を、自分は守りたいのかもしれない。奏の笑顔に何度救われたんだろう。人の笑顔は傷ついた心を癒す力がある。そんな当たり前のことに気づくことができたと同時に、笑顔をほとんどみせない玲愛のことを考えている自分がいた。
*
煌太と別れて家に帰った奏は、荷物を置くと直ぐに家を後にした。
母親には学校で使うノートを買いに行くと言ったけど、外出するための口実に過ぎない。
家から少し歩くと、人気がほとんどない公園が見えてくる。自分にとって、特別で忘れることが出来ない場所。ここに来るのは煌太が記憶を失くした日以来だった。
足が自然と動き出し公園内へと入っていく。奏の目の前には一つだけ設えてあるベンチが見える。その佇まいに感動したわけでは決してなかったと思う。だけど、目からは自然と溢れ出した涙が頬を伝っていた。
「あれ、どうして―」
止まらない涙に奏は取り乱す。どうして自分が泣いているのか理解できなかった。理解できないよりは、考えたくない方が近いのかもしれない。
あの時、こうちゃんの気持ちに応えていたらこのような未来は訪れなかったのかもしれない。あの時の、自らの決断がこうちゃんを苦しめてしまったのかもしれない。
後悔の二文字が重く奏を虫食んでいく。あの事故以来、決して近づくことがなかった公園に今、立っている。静けさが漂う公園内は、まるで奏を包み込むように闇へと葬り去ろうとする。深く沈んだ気持ちに奏は身を預けたくなった。
それでも、この気持ちはとりあえず忘れないといけない。そうしないと、こうちゃんと対等でいられない。数年……いや、数ヶ月しか見ていない今のこうちゃんを受け止めて向き合わなくては。
「あれ、奏ちゃん!?」
突然名前を呼ばれ奏は振り返る。そこには息を切らした神林が立っていた。
かけられた声に応えようとするも、涙のせいで目の前が曇っている。急いで手の甲で涙を拭うと、ありったけ笑顔をふりまいた。
「こんばんは、神林君」
「……奏ちゃん、何かあった?」
鋭く奏の心を突く一言。神林は奏の気持ちを悟るように聞き返してきた。
「何でもないの……ただ、ちょっと自分が情けなくて……」
「煌太のことか?」
「えっ」
奏の心を盗み見ているような的を射た発言が神林から放たれる。奏の反応を見るなり神林はニヤッと笑みを見せた。
「やっぱりそうか。煌太の野郎、奏ちゃんを不安にさせるようなことしやがって」
気遣ってくれる神林の優しさに奏の気持ちが揺れ動く。神林は続ける。
「俺でよかったら話を聞くからさ……話して欲しいな。その……俺だって一応、煌太や奏ちゃんとは中学も一緒だし、それなりにアドバイスできるかもしれないしさ」
「ありがとう……神林君は優しいね」
「そんなことないよ。それに、俺にしかわからないこともあるかもしれないしさ」
いつも気さくな神林は奏にとっても親しみやすかった。しんみりした気持ちを前向きにさせてくれる神林の人柄は周りの人を笑顔にしてくれる。
「でも、本当にこうちゃんのことじゃないよ……なんて言えばいいのか……」
神林に嘘をつくことはしたくなかったが、煌太の秘密を知られるよりはましだと思った。
「そうかぁ……でも、何か悩んでることがあるんだよね?」
神林の力強い眼差しに自分の思いが少しずつ動かされている気がする。
「それじゃ、少しだけ頼っちゃおうかな」
笑顔で神林に微笑むとゆっくりと話し始める。
「私の友達の話なんだけど、ある女の子が男の子に告白されました。女の子は告白されたけど泣いてしまいました。そして、答えをすぐに言わずにその場をそそくさと去ってしまいました。この時の男の子の気持ちってどうなのかな?」
「そりゃ、男の子は嫌われたと思うんじゃないかな。もし、俺がその男の子だとして目の前で泣かれたら、相当嫌われているって考えちゃうよ」
奏の思っていた通りの答えが神林の口から放たれた。なんとなく返ってくる答えはわかっていたけれど、異性に言葉にして言われるとかなり身に染みる。
「そうだよね……もう一つだけ変な質問していい?」
神林は頷いてくれた。
「次に会ったときに返事を返そうと女の子は思っていました。でも、その男の子は自らが告白したことを覚えていませんでした。それには訳がありました。男の子は記憶喪失だったのです。女の子はどうすれば良いと思う?」
奏は一通り話し終えた後に、言ったことを後悔した。こうちゃんの記憶喪失を他人にばらしてしまった。たとえ名前を出していなくても神林に感づかれるかもしれない。
神林は話を聞き終えると、逡巡しつつも答えてくれた。
「俺は女の子の気持ちはわからないけど、その女の子って結局男の子のことが好きってことでいいんだよね?」
「うん」
「それだったら、女の子は素直に好きだという気持ちを伝えればいいんじゃないかな」
神林は言い終えるとベンチから腰を上げ数歩前へと歩くと振り向きざまに言った。
「だって、たとえ相手が記憶を失っていたとしても自分の気持ちが消えるわけじゃないし、後悔しないように好きの気持ちを伝えるほうが良いと俺は思うよ」
神林はどこかこうちゃんと似ている。男の子は皆まっすぐで好きなことに全力を注ぐことができるのかもしれない。自分とは本当に違うんだ。奏の中に封印しようと思った気持ちがゆっくりとほどかれる。
「神林君って意外と真面目なところあるんだね」
「えっ、それってどういうこと?」
「いつもふざけているイメージしかなかったから。少し見直したかも」
女の子を見かけると誰にでも声をかけていた神林のイメージが少しだけ変わった気がする。次第に感謝の気持ちが湧いてきた。
「なら、もう大丈夫かな」
奏の目の前に差し出される手。とてもがっしりとした男の子の手。部活動でついたのか手のあちこちに痛々しい豆ができている。今まで意識していなかったからかもしれないが、神林が異性だと強く意識させられた。
「あ、ありがとう」
熱を帯びた頬を隠すように俯きながら神林の手を取りベンチから立ち上がる。目の前で神林は笑っていた。
「友達もいろいろ苦しいのかもしれないけど、奏ちゃんが悲しんでると、その友達ももっと悲しくなっちゃうと思う。だから、笑顔でいなきゃ。いつも見せてる笑顔、とても可愛いんだから」
恥ずかしさも見せずに言葉を放つ神林を見ていると、自分が恥ずかしくなってきた。
奏は火照り始めた頬を抑えつつ神林の方に顔を向ける。
「神林君って、女の子の扱い上手いよね」
「だって俺、女の子好きだもん。特に可愛い子」
平気で言えるところが神林の胆の強さなのかもしれない。これだけまっすぐな人の言うことはとても説得力があると思う。
「それじゃ、俺ロードワークに戻るよ。野球部、そろそろ大会近いし」
「あ、本当にごめんね。私なんかのために時間費やしてくれて」
「いいって、別に。その分、マネージャーとして支えてくれれば俺たちは助かるし」
神林はそれじゃ、と告げると公園を後にした。奏は見えなくなるまで神林に手を振り続けた。
神林が見えなくなってから、奏はふと空を見上げた。目先に広がる無数の星屑が見てほしいといわんばかりに光輝いている。まるで、ここにいる事、存在していることを伝えるように。今まで悩み悶えていた自分を、星々が応援してくれているような気がした。
神林と話せた事により、気づかされることがあった。やっぱりこうちゃんが大好きなんだと。こうちゃんの前だと顔を見ることですら恥ずかしかった。必要以上に異性だということを強く意識している自分がいた。神林の時とは違う特別な気持ちが自分の中に芽生えているのがわかる。自分の気持ちがこうちゃんに向かっているのだと再度自覚できた。
でも、今のこうちゃんは自分の知っている過去のこうちゃんの一部を持っているだけなのかもしれない。それは、自分が好きだったこうちゃんではないのかもしれない。
自分とこうちゃんが対等な関係になるにはどうしたら良いのだろう。
今の自分には判らない。判らないけど、行動しなければ前に進まないことだけはわかった。過去の自分はこの思い出のベンチと共に置いていこう。もう、迷うことはない。こうちゃんには今の私、岩田奏を好きになってもらいたい。
見えている希望を掴むために、奏は気持ちを新たに公園から一歩を踏み出した。そんな奏の気持ちに応えるように頭上では無数の星屑がより一層、煌めき始めていた。
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