第7話 弐の3 ウルトラウマ
…………………………え、もう始まってる? マジ?
ど、どーもスミマセン、作者です。
アホの主人公が思い出したように「生首がぁ〜」って青い顔して、トイレでゲロッてたもんで、ちょっとからかってました。
あの様子だと、またしばらく出番無理そうなので、代わりに演武出演者の話しをします。
あのローカル名刀のその後です。
{岡山県山中}
「SAGA佐賀♪、SAGA佐賀♫」
「………………いや、いつまで唄ってる?」
例の二人は東京に向かう途中であった。
すると、例によって別の刀の化身が現れ、
「失礼いたす。さぞ名のある名刀と見受けるが?」
「む、いかにも」
「是非、お手合わせを願いたい」
「よかろう」
「ところで、さっき唄っておられた『さが』とはいったい?」
「おまえもかっ、おまえもなのかーっ!」
有無を言わさず、初代は挑戦者を一撃で退けた。三代はため息をつきつぶやく。
「国を出てから今ので何度目だ?」
広島あたりまでは数えていたが、それ以降は面倒で数えていなかった。
「現代の地図には、佐賀は載っていないのではあるまいな?」
徐々に不安になりつつも、両者は東京を目指すしかなかった。
肥前忠吉は、この業界では超有名なのだが、え〜と、佐賀でしたっけ、福岡の隣の県。
なぜか県の魅力度ランキングでいつも下の方と、気の毒な所です。
県が有名だったら、今回彼らもこんな思いをせずに済んだかも知れませんね。
SAGA佐賀♪って、ディスる歌が数年前にヒットしたりとか、地元をけなして楽しんでるあたり、まるで最近、某マンガでウケてる埼○県のようです。
そうそう、それはそうと両者が今いる岡山は備前刀で知られ、そりゃもう名刀の宝庫です。
個人的にはかの赤穂浪士、大石内蔵助の愛刀「備前清光」は究極の芸術品と確信してます。
切っ先から
ああ、思い出したら岡山まで行きたく………、ぐわっ!!
「か、勝手に進めるなーっ!」
復活早々、作者様に飛び蹴りとは、生意気な主人公だな?
「ええーい、うるさい! ここは私のコーナーなんだから、勝手にしゃしゃり出ないでくださいっ!」
ちぇ、わーったよ。 また後で来るからな。
「二度と来るなー! 塩撒いといてやる!」
作者はナメクジじゃないぞ。
「そーゆー意味じゃないっ!! 分かって言ってるだろ? ホント疲れる作者だなぁ」
さて、うるさい作者を追っ払ったところで、話しの続きをします。
翌日の朝、やはり昨日見た事、そして伊勢さんの事は全部、夢なのではと思いつつも、机の上の赤福の空箱が、それを否定していました。
テレビでは先日の辻斬り事件のニュースでもちきりです。
しかも大勢の目撃者がいたとなれば、三面記事で済むわけもありません。
私もその目撃者の中の一人なのです。
あの後、警察からいろいろと聞かれましたが、やはり刀のお化けの仕業だ、なんて言っても信じてもらえるわけはありません。
結局は、よく分からないと言って、ごまかすしかありませんでした。
今回、学校の近くでこんな事件があったので、学校側から今日は休校になるとの連絡があったのは、夜遅くになってからでした。
だからといって、事件の真相を知り、目の前で人が斬り殺された場面を目撃した私は、休みをそんなに喜んでもいられません。
目の前に生首が飛んできたのです。当分、お肉料理は喉を通らないでしょう。
それどころか、今回のことがトラウマになってしまって、一生、治らないかもしれません。
それほど衝撃的シーンだったのです。もう、ハンパないトラウマ確実です。
超トラウマ、ウルトラウマです。
サラブレッドなんてブッチです。
でも3分間しか走れません。
……………………あれ? 何か違うな?
まあいっか。
昨夜もいくつかのテレビ番組で、辻斬り事件の特集をやっていました。
事件の原因を、出演者の各方面の専門家達があれこれ言っています。
ですが、真相を知る私からすれば、どれも的外れの戯言にしか聞こえません。
特に自称「超常現象研究家」を名乗る連中の意見は、聞いてて思わず笑ってしまいそうになったほどです。
何とかという妖怪の仕業だとか、何とか星人の仕業だなどと、いい歳をした大人が、その自信はいったいどこからくるのか、ど天然の私でさえ開いた口が塞がらないような妄想を、みんな真顔で言っているのです。
ああ、こういうのも中2病って言うのかな、と思って見ていると、惜しい意見を言っている人もいました。
名前は忘れましたが、霊能力者だと名乗るその人が霊視したところによると、幕末の人斬りの霊の仕業だと言うのです。
残念。人斬りではなく最上大業物です。
この人、インチキ霊能者確定です。
まったく、彼らの頭の中の方が、よっぽど超常現象に思えてなりません。
まあ、私以上のおバカさんはさておいて、そんなことより、伊勢さんは無事でしょうか?
私の大事なプリンを食べた小狐丸は、どーでもいいのです。
同じ刀でも、友達になれそうだった伊勢さんのコトが気になって仕方ありません。
ですが私には彼女の無事を祈ることしか出来そうにないのです。
しかし相手はあの最上大業物、ソボロ………………えと、何だっけ?
と、とにかく相手は最強クラスの名刀。
はたしていじめられっ子っぽい伊勢さんに勝ち目はあるのでしょうか?
そのことをあれこれ思い考え事していると、母が台所からやって来て、
「敦子、夕飯のおつかい行ってきてくれる?」
と、無理難題を言ってきました。
当然のことながら、『友情・努力・勝利』よりも『怠惰・横着・惰眠』を信条とする私は、
「何言ってるのよぉ。辻斬り事件があったんだよ。切り裂き魔だよ。ジャック・ザ・リッパーだよ。自分の娘の身が心配じゃないの?」
と言って断ります。しかし母はケタケタ笑い、
「な~に言ってるんだい。テレビで言ってたろ。犯人は何とかって妖怪だって。お化けが昼間っから出るもんか」
あんた、あの戯言信じてたのかよ?
ってか、昨日事件があったの、昼間なんだけど?
間違いありません。私の天然はこの人の遺伝です。
しかもここまでの大ボケっぷりは、もはや特別天然記念物級でしょう。
イリオモテヤマネコと一緒に国が保護すべきではないでしょうか?
「もぉ~、母さん。お化けなんているわけないじゃない。とにかく、おつかいなんて………………………」
言いかけると母は、私の頭をむんずと掴み上げて、
「そりゃそうと敦子、昨日お客さん用に買ってあったカステラが無くなってたんだけど、あんた知らないかい?」
言う母のアイアンクローが、ミシミシ音をたてながら、私のこめかみに喰い込みます。
身体が宙に浮いて、必死につま先立ちの私は、
「な、何なりとお申し付け下さいませ、お母様!」
泣いて詫びました。
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