弐 演武始まる
第5話 弐の1 謎の巫女 伊勢さん
ああーっ! い、いつの間に一話分進んでるーっ!? 何か弐章に突入しちゃってるーっ!! ちょっとオヤツ休憩とってただけなのに?
す、すみません。私がいない間に、作者のヤツが私の悪口とか言ってませんでした? ………って、読者サイドから話せないの、忘れてたぁぁぁっ!
くっ、や、やってくれたな作者め! どーせ私のいないところで、あれこれとバカにしてたに決まってます。
3日連続寝坊して学校遅刻したとか、テストの成績悪くってお母さんに怒られたとか、学校の帰りに犬の糞を踏んじゃったとか………。
ああ、そんな哀れむような目で見ないでください。 マジで悲しくなってきますから(シクシクシク)。
仕方ありません。気を取り直して、話しの続きをしますね。 でもって帰ってから枕を濡らす事とします。 ついでに作者も殴っときます。
小狐丸と出会った翌日、私は未だにあの出来事が夢だったのではないかと、その後何度もほっぺをつねって確認しました。
おかげで朝からほっぺが真っ赤です。冬の東北の子供みたいです。
鏡で赤いほっぺを見ていると、何故か急にリンゴが食べたくなったけど、そう都合良く冷蔵庫に入っていません。
今日の学校帰りは、コンビニ経由決定です。
ジ○ンプ休刊日に行くのは不本意ですが、私の中の食欲という本能が、「行け」と告げているのです。仕方ないじゃないですか!
もちろんのことですが、昨夜の出来事を家族や学校の友人に話すわけにはいきません。
言っても信じてもらえないだろうし、下手をすれば秘密をばらしたとして、小狐丸やあのゴスロリにバッサリ斬られかねません。
ああ、かわいそうな私。
「お、どうした山城、いつにも増して陰気な顔して? 宿題でも忘れた…………ゴフッ!」
学校での短い休憩時間。わずかな憩いのひととき。
昨日からあれこれあって、気が滅入って机に突っ伏している私を、面白がるようにからかうクラスメートの男子、荒川の腹に怒りの鉄拳をお見舞いです。
モロに決まったようで、彼は苦悶の表情で床に膝をついています。
いい気味です(心の中で笑)。
心配しなくても、宿題はいつものようにやっていません。大きなお世話です。
彼、荒川は小2の頃からの腐れ縁で、よく同じクラスになるコトも多く、何か幼なじみのような間柄です。
週に一度は私のスカートをめくりに来る物好きの変態です。
きっと私に気があるのです。
それだけに私の異変に気付いたのでしょうが、私の悩みを彼にどうすることもできっこありません。
ちなみに、彼にも背後霊が憑いています。数代前のご先祖らしいお婆さんです。
「や、山城、ひでぇ……………」
「おだまりっ! 私は今、マジで困っているんだから。これ以上怒らすようなマネしたらキスするぞっ! それもディープなヤツ!」
「ひぃぃぃぃっ、か、勘弁して下さいっ!」
「それはそれで気分悪いな(怒)」
(ったく)と、ため息をつく私。
そんな私を見て彼は、今度は心配そうに、
「おいおい、いや、ホントどうした? いつものおまえらしくないぞ?」
と、聞いてきます。
ですが、さっきも言ったように、これまでの経緯を話すわけにいかないのです。
言ったら言ったで、また天然大ボケ扱い必至です。
ますますおバカさん扱いされるの、目に見えてます。
それでもって後でどこかの刀に斬られるかもしれないのです。
「いいからホント、何ともないから」
そう言って何とかごまかすと、
「おまえ、もしかして…………………」
(な、何よっ?)
「また男にふられ…………ぐわっ!」
アホが言い終わるより早く、私の怒りのキックが、彼の股間を蹴り上げていました。
そう言えば昨日、小狐丸は私に道案内をさせるようなことを言っていましたが、学校からの帰宅時間となった今でも姿を見せていません。
まあ、来られても困るのですが、できればこのまま…………………、
「あ……………………いた」
見ると校門の柱の上に、いかにも、といった人影が見えました。
でも、小狐丸ではありません。いつも見えてる幽霊でもありません。
今の私には、もう幽霊と刀が変化した者を見分ける事ができるのです。
アレは小狐丸と同じ、刀のお化けです。
見た感じは十七歳ほどでしょうか、短い黒髪に白い着物と紅い袴の巫女さん姿の女性です。
一部の男子が見たら「萌え~」とか言って、大喜びしそうです。
ただ、当人はホントは幽霊なのでは、と思えるくらい顔がやつれ、目の下に隈があり、まるで病人のようでした。
警察の人にも見えたら、薬物中毒で職質されそうです。
(うあ~、何かイヤな予感~。あ、でも小狐丸じゃないのなら、私に関係ないよね!)
少しホッとして、胸を撫で下ろし、
(よし。私とは関係ない関係ない。気付かないフリをして通り過ぎよう)
と、思いっきり明後日の方を見て通り過ぎようとすると、巫女さん姿の刀が、
「あんた、山城敦子さん?」
「いっ?」
何と、彼女は私の名前を知っていました。
でもどうして?
「ど、どうして私の名前を?」
「いや、通り過ぎる人、みんなにそう聞いていったんだけど。当人なら返事をするかもって。でもまさかホントに返事してくれるとは思ってなかった」
(うあーっ、やっちまったーっ!)
「小狐丸君から聞いたんだ~。ここに私達が見えて事情知ってる、かなりイタい天然の娘がいるって~」
「あ、あのヤローッ!(怒)」
「彼、急にどっかの名刀に演武を挑まれたから、来れなくなったんで、私が代わりに道案内してもらえって言われて来たんだけどぉ」
「何を勝手なぁぁぁっ! あ、ち、ちょっと待って」
私は急いで携帯電話を出し、電源切ったままで、誰かと話すそぶりをしました。
「なに?」
「いや、こうでもしないと、他の人が変に思うでしょ。だって他の人からはあなた達が見えないんだから、そこに向かって話しをしてたら私、バカみたいじゃない」
昨夜、思いついた対処法です。我ながらグッドアイデアです。
彼女も感心したように「おーっ」と言い、親指を立てました。
「いいね」
「何でそこだけ今風なのぉっ?」
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