第7話 「これって……」
つ、疲れたー……。ようやく、休みの日になったよ。
この仕事は週2日、『木の日』と『光の日』は休みに設定されてる。
前の休みの時は、働き始めで疲れすぎちゃって部屋で寝続けちゃったけど。
今日こそは、図書館で本を読もうっと。
水の日は休館日だけど、今日は木の日だから空いてるはず。
さっそく行ってみなきゃ。時間は限られてるんだから。
◇◇◇
相変わらずの蔵書数……。
王宮図書には、以前と同様に人気はない。
あの時は、セオドールさんと会ったんだよね。
今日も会えるといいけど……。
「……でも、きっと無理、だよね」
あんな別れ方をしちゃったから。
たぶんもうここには、彼は現れないんじゃないのかな。……そんな気がするよ。
暗い気分に沈みそうになるけど、振り切らなきゃ。私には、やらなきゃいけないことがあるんだから。
気を取り直して、文献をあさろう。まずは、前に途中まで読んだ本の続きから。
◇
「…………っふ」
最後の一ページまでめくり終わった私は、本を閉じた。パタンと
……うん。これである程度はだけど、この国の基本的なことがわかったかも。
「次は……」
何を読もうか迷って、棚にウロウロと視線を
うー……ん……。
たくさんありすぎて、何が何だか……。とりあえず、一番上の棚の左側から読んでいく?
…………え?
ふと目に
「これって……」
視界にあったのは、ここには似つかわしくない物。この本棚のゾーンは、歴史とかのしかないはずなのに。
「どうして、ここに絵本が?」
手を伸ばしても届かないから、脚立に上ってそれを取る。腕に本を抱えながら、
地面に戻ってから、その絵本の表紙を見た。
「『おてんば姫と王子さま』?」
表紙には、一人の少女と少年がイラストで描かれていた。フリフリのドレスを着たお姫様が笑い、その隣に剣を腰に下げた王子様が並び立ってる。
「……」
何故か心が
読み込まれて色あせた表装が、手に
◇
読み終わった私は、フッと張りつめていた息を出した。
タイトル通り、お姫様はおてんばな少女。よくお城を飛び出して、街で平民に
そんな子が好奇心に誘われるまま、ある日街をも出て森に行こうとする。初めての世界に、ワクワクする彼女。
だけど、彼女は恐ろしい魔物に襲われてしまう。『あわや食べられる!』ってところを、
ピンチを助けてくれた彼に、一瞬で恋に落ちた彼女。
お城に戻っても、彼のことばかり思い返してしまう。
その後、婚約者の隣国の王子様として現れた彼と結ばれてハッピーエンド。
てっきり、ラブロマンス系の内容かと思ったら、ハラハラドキドキの冒険物も
予想外だったけど、面白かった。
きっと、この本を読んだ幼い女の子とかは、最後に登場する王子様に
元の世界で例えると、シンデレラみたいな感じ? ただし、主人公は最初からお姫様だけど。
起承転結もしっかりしてて、面白いお話だった。
なんとなく読み始めたものだけど、気に入っちゃった。イラストもとってもポップで可愛かったから。
……今度、他の童話の本も読んでみようかな。
「……神様に関するものとかってないのかな?」
たしか、ファロード神だっけ?
その神様って、私を異世界に連れてきた、あの金髪碧眼の外国人風の神様と同一人物(同一神?)なのかな?
だとしたら……ちょっと興味があるかも。
あとは、過去に異世界に連れてこられた人がいるとしたら、もしかしたらその人の人生が童話になったりしないかな?
元の世界でも、たしか昔話の「金太郎」って実話だったよね?
それと同じように、実在した人の自伝みたいな形で何か元の世界に通じる
「……よし」
探してみようかな。
あ、でも。この歴史のコーナーと両立して読み進めようかな?
こっちにも、そのヒントがないとは限らないし……それに、一般的な知識を得るためにも読んでおいた方がいいよね。
「何冊あるのかわからないけど……」
膨大な数があるけど、仕方ないよね。
少しずつ読んでいこうかな。
前はセオドールさんとの件で動揺して気が回らなかったけど。もしも貸し出しサービスとかあるんだったら、利用して仕事がある日でも部屋で読んどこう。
「頑張っていこう」
目指せ、完読!
手始めに、今日中に二冊は読み終わらせようっと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます