結び

高校2年になり、大分学校という小さな枠の形がわかり、愛想笑いと乾いた笑いで何事もなく過ごすマンネリ化した日々を億劫に感じながらも執拗に何かを求める訳でもない生活を送っていた。


僕---浦辺達弥(うらべたつや)は一つ大きな欠伸をすると顔を半分腕の間に埋めて、机に突っ伏した。


「随分と大きな欠伸だね」


そう僕を指すような言葉が聞こえ声がする方を向いた。


梶谷結衣(かしやゆい)。黒髪のショートヘアが良く似合う明るい女の子だ。


「おはよう浦辺君」


「あ、ああ。おはよう」


彼女が笑顔で挨拶をしてきたのに急な対応が出来ず上手く口が回らなかった。


少し恥ずかしさを誤魔化すために髪をいじるふりをしてちらりと彼女の方を見る。


他の登校してきた生徒達皆に挨拶を交わしている姿を見て羞恥心が湧き出したが少し頭を振って自分への事実の理解をさせる。


彼女は誰にでも明るく、優しく、その眩しい笑顔を振舞っているのである。


彼女は僕の視線に気付いてこちらを向くと少し悪戯な笑みを浮かべ


「私が騒々しいから目覚めたかな?」


と聞いてくるので、僕はその言葉に少し頬を緩ませて「ああ」と返事を返した。


意味のないその会話に気を緩ませているということに僕は気付き心の中で自分を叱ったが、どこかやはり気の緩みが出てしまうことに「これはどうしようもない、恋なのだな」と自分に再確認させるのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る