小説の読み方から発展した夫婦喧嘩もの。
正直私には、小説を後ろから読む行為に一定の理解がある。というのも、終わりが見えているからこそ安心して物語に集中できるという利点がある。作品によっては後味の悪いものもあり、そういうのが苦手な人にとっては事前に回避できる手段と言っていいでしょう。ある種、映像作品の原作小説を読む感覚に近い。前から気になっていたけど読む機会がなかったから、お試しで映像作品を見て、気に入ったから原作小説も読もう、という具合に。そう、結局はお試しであり、それがわかりやすいのが結末であるというだけ。
そしてそういう後ろから小説を読む人は、総じてなんだかんだで作品を楽しんでしまうのである。
作中の夫はそういう読み方でも面白い作品を書けないか悩んでいたが、それは杞憂である。面白い作品はどういう読み方をしても面白いのだ。
作中でも触れている通り、人が人と関わるにはどうしても小競り合いが生じてしまう。そしてそれは自分にとって理解しがたいものを看過できないからこそ生じるのである。とりわけ夫婦であればなおさらだ。
この作品はそんな夫婦の擦れ違いを巧みに表現しています。読めば共感できるところがありますので、まだの人は是非とも読んでみてください。