第2話 fleecy clouds like a snow

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×××××、×××××。


…ん……なんですの…?


嗚呼、おはようございます×××。


もうお別れなのですわね。


大丈夫、また御逢いできましてよ。


なんでそんなに悲しいお顔をなさるの?


私は至って元気ですわ。


全く寂しくありませんとも。……全くと言うのは言い過ぎましたわ。


ごきげんよう、私の×××。


また…



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あぁ~っと欠伸をして、空を見上げて。

今日も良い天気。

きっと素敵な一日になるわ。

私はそう思って笑顔を浮かべます。

水色の空には少しだけ雲が漂っていて、まるで手で掴めそうにふんわりとしていて。

美味しそうな雲。

意味はないと分かってはいるけれど、どうしてもそれに近づきたくって、バルコニーの手すりから身を乗り出して見上げていると。

下の方から何やら五月蝿い声が。


「おーーーーいっ、イリシェン!」

「あらお兄様方」

「そんなに身を乗り出したら危ないじゃないか」これはアラミスお兄様。

「兄さんに抱き止めてほしいのかい?」これはオリアス。

「まあお馬鹿さん、抱き止めてほしいのはお兄様にじゃなくて、白馬に乗った王子さまに、ですわ」

「いずれにしろそんなに身を乗り出したら危ないよ」

アラミス兄さまがそう言うので私は少しだけ身を引いてあげました。

本当は落ちてしまっても構わないの。

だけどやっぱりお兄様が悲しむ事はいけないとイリシェンは思います。

「さてイリシェン、こーんなに朝早く」

「お兄様たちが」

「やって来たのは」

「「何故でしょう!」」「なにか良いことがあったの?」

「その通り」

「我らが宿に美人がやって来たんだ」

「それも、とびきりのね」

「まあ!」

「驚いたかい、僕らにも春が来たよ」

「祝福してくれ」

神妙な顔でオリアスが言うので信じてしまいそう。

「春って…、でも、それは可笑しいわ」クスリ、と笑って

イリシェンはよく聞こえるようにわざと大きな声で叫ぶ。

「私達のような乙女がお兄様方のむさくるしい森小屋になんか行くものですかー!」

「いや…そう、正確には違うんだけどね」

「ではどういうこと?」仕方がないわ。

話したそうにしているので聞いてあげます。

これも兄さま孝行ね。

「ちょっと待てよアラミス」

「だから誤解を解かないと」

「私、気は長くないのでしてよ」

「いやいやいやそれが面白いんだって」

「でも」

「そのまま連れてくんだ」

二人でこそこそと盛り上がっていらっしゃって!そんなの私は全く面白くありませんわ。

「もう!何だか分かりませんがお兄様達で盛り上がっていらっしゃれば」

踵を返して部屋へ戻ってしまおうとすると。

「違うんだ、イリシェンきっと君も気に入る」

あわててアラミスお兄様が言い繕います。

「ではそこのお猿さんを黙らせて、お早く話して頂戴?」

「待ってくれ」

「うっアラミス苦しい」

「黙れ、イリが怒ってるだろ」

「…でもこんなひどい」「どの口が言うんだ」

またもごもごとお喋りしてらっしゃいますが、いいでしょう。許してあげます。

「それで良いですわ」

「全部は話せないんだけど、君に会わせたいんだ」

「その美人さんと会うのね」

「あぁ」

「絶世の」「お前は黙ってろ」

「そうね…行きますわ!」

「じゃあイリシェン、待っているから身支度をしたら下へ降りて来てごらん。素敵な友人に会わせてあげるよ」

「分かりましたわ」部屋に戻り、バルコニーの扉を閉めてから私はくすくすと笑います。

「お兄様ったら本当に面白いわ」独り言を言いながらクローゼットの扉を開けてお洋服を選びます。

「毎朝会っても飽きなくてよ」

今日は赤いリボンと黄色のブラウス、青いスカートに決めました。

お兄様をあまり長くお待たせしないよう、いそいそと着替えます。

学校へ向かう前ですからのんびりはしていられませんけど、部屋を出る前に忘れ物の確認をして、それから今日もこれから起こる沢山のことが楽しみで、私は鏡に向かってにっこり笑いかけました。

おはようイリシェン、いってらっしゃい。

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