白雪姫の最後のはなし

刈染野

第1話 once upon a time

これは白雪姫の物語。

未だに終わりを迎えない彼女の運命は、今も廻って繰り返される。


彼女はかつてイモージェンだった。

彼女はかつてディアドラだった。

また、あるときはブランカ。

そして今は、×××××。

彼女は不死の魂で幾度も蘇ったが

今まで一度も、ほんとうに愛する人と結ばれた事はなかった。

可哀想な×××××。


運命は変わるものだろうか。

誰もそれを知らないが、恋する二人を止めるものは何もない。


物語の舞台は舞踏学園。

そこは嘘が禁忌とされる神聖な学舎。

偽りのない清らかな乙女だけが学び、踊る事を許される、秘密の花園。


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雪のように白い肌、血のように赤い唇をもつあなたへ。

私の愛しい×××××。

一度の嘘と、それからあなたの赤い血が流れて、夜に小鳥が鳴く。

そうして3つの封印が解かれたとき、私はあなたの元へ帰るだろう。


それまでどうか、待っていて欲しい。


何度私たちは引き裂かれるだろう。


だが、どんな悲劇がこの身に降りかかろうとも私はあなたを離さない。


私は甦ろう。

幾度でも、幾度でも。


差出人不明


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「そうして二人は、いつまでも、いつまでも幸せに暮らしましたとさ」

「おしまいかしら?」

「ええ」

「これが白雪姫の話?つまらないわ」

「そうかしら、私は面白かったけど…だってガラスの棺なんて素敵じゃない?」

「私はそんな棺には入りたくなくってよ」「薔薇が散りばめられているに違いないわ」「そうよ、それでも嫌?」「ええ嫌よ」「きっと白雪姫はお人形のように綺麗なまま眠ったんだわ」

「それでも?」「私は白雪ではなくてよ」「もう、屁理屈ばっかり」「でもあなたも雪のような肌に赤い唇があるじゃないの」「でも黒檀のように黒い髪ではないし、何よりお化粧も出来ないのよ!」「もう、おませなんだから」「私たちまだお化粧なんてしていないじゃない」「ガラスの棺の中から、王子さまに私達のお化粧もしていない、ナマケモノのようにまぬけな顔を見せるおつもり?嫌よ!」

「まあ、そこまで言うことないわ」「そうよ、素敵な王子さまなんだから、きっと可愛いとお思いになるに違いないわ」

「私は嫌なの。あと櫛の下りは少し疑問が残ったし、年頃の娘が知らない小人達と暮らすのもどうかと思うわ」

「まあ、あなたって案外石頭なのね」

「櫛には呪いがかかっていたんじゃなくて?刺さっている間は目覚めないだとか、時が止まってしまうだとか」

「そうね、だって二度と目覚めないとは言っているけど、死んでしまうとは言っていないわ」「毒とは書いてあってよ?」「毒にも色々あるわ」「きっと年も取らない毒があるのかもしれないわ」「そうですわね…そう考えると、なんだか面白いような気もしてきましたわ」

「でしょう?もっといろいろ考えられるわ」

「王妃の復讐は、白雪姫の時が永遠に止まってしまって誰にも会えないことだったら酷いことでなくて?」「「まあ!」」「「酷いわ!」」

「あら」「ふふふ」「私たちすごいことを思い付いてしまったわね!」「当然でしてよ」

「私白雪姫の他のお話も読みたいわ」「いいわ!今度探しましょう」

「ほらほら次のクラスですよ!」

「はーい」

「失礼いたしました」

「分かりましたわ」

ついに、いつまでも話し込む3人組に痺れを切らした寮母が大きな声をあげて3人を部屋から追い立てたが、3人ともクスクスと笑いながら次の教室へと続く廊下を歩くあいだも想像の翼を広げるのだった。「小人達は可愛らしい妖精かもしれないわ」「それで、一緒に小鳥達ともお話しするの!」「あら、それなら寂しくなんてないわね」

「ねえヒルデ、でもね、目覚めたときに目の前に素敵な王子さまがいらっしゃったらどんな気持ちでしょうね」「それはきっと、悪くない気持ちでしょうね」

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