第3話

 

 少女は、ポリゴンのような謎の非物質によって精製された身体の、バラバラと崩れゆく姿を見ながらふと考えた。


「本物」は、一体どんな風なのだろうか、と。

 このような仮想体なら今まで何体と壊し砕いてきたが、にも関わらず、本物の人の体を壊すどころかろくに死体を見る事すら未だ出来ずにいる。


 少女は、「死」に飢えていた。

 少女は退屈そうな顔で仮想体が解除され元の身体に戻った名前も憶えていない教師の男を見下ろす。その周りでは、少女の強さに驚きを隠すつもりもなくひたすらに賞賛と驚嘆の声を上げる観客達。


「……うるさいなあ」


 いっそ、このまま周りの奴ら全員を相手にしてやろうか。などと考えていた少女だったが、ふと、それは厳しいことに気がついた。


「………………」


 少女がパーカーのフード越しに見つめる先。昴は、いつも通り少女を




 ――――――――――――――――――――



 昴が学校に行っている頃、ルシアは、自分を含めた二宮家の召使い数人で、自宅地下にある研究室にいた。


「調子はどうですか、千鶴姉様」


 ルシアが声をかけたのは、メイド服姿で左手には実験結果をまとめた研究書類。とまあ、実に違和感を感じさせる組み合わせをした綺麗な女性。ルシアの密かな憧れでもある桜木 千鶴は、ルシアを見るなり優しく微笑んだ。


「順調……とまではいかないけど、今までに比べたら、確実に進歩しているわね。これもひとえに、昴様達が協力してくださるおかげね」


 千鶴が、うっとりとした顔で虚空を見上げる。その瞳に映っているのは恐らく昴の顔だろう、とルシアは密かに考えた。

 千鶴は、ルシアにとっての憧れではあるが、同時にライバルでもあるのだ。


(いくら千鶴姉様にだって、昴様はやらないんですから……!)


「ですが、それですとやはり……」


 密かな対抗心を燃やしつつそれを悟られぬようポーカーフェイスでルシアは話しを続けた。


「量産型の開発は、まだまだ遠いわね」


 今現在、一宮本家と分家達が合同で進めているのが、血流式の量産型または汎用型の開発だ。

 ある程度はグレードが落ちても、その分数で押し切ればいい。というのが本家の考え方らしい。

 やはり、兵の数が少ないという部分には、上に立つ者として皆思う所があるのだろう。


「それにしても、量産型開発なんていかにも数で攻めようなんて考え方が見えてきて、私はどうにも賛同出来ないと言いますか……」

「それは私も同感ねえ。確かに、神器に対抗できる勢力は多い方がいいかもしれないけど……それで結局、『なんとか量産型が完成したけど質を下げすぎてこれじゃあ神器使いに勝つのは難しい』なんて事になったら本末転倒だもの」


 ルシアと千鶴は、二人とも顎に手をあて難しい表情で言った。

 すると、気難しい表情をした二人の前に二十代後半の白衣を着た男が、こちらは対照的に明るい表情でやってきた。


「千鶴さん、朗報ですよ!」

「どうしましたか、田宮さん」


 田宮と呼ばれる男は、まるで誕生日プレゼントを貰って喜ぶ無邪気な少年のような顔をして言った。


「開いたんですよ、《あの箱》が!」


 それを聞いた千鶴は、みるみるうちに顔を驚愕と歓喜が混ざったような顔をした。


「なんですって!?」


 だが、それを見ていたルシアは、《あの箱》が一体なんなのか皆目検討も付いていなかった。


「千鶴さん、その箱って……」

「あ、ああそういえばルシアには伝えていなかったわね。ごめんなさい」

「い、いや、それはいいんですが」


 ルシアは言外に、「箱の正体を教えて欲しい」というのを匂わせると、千鶴はそれを察し説明を始めた。


「その箱っていうのは、半年前にうちの調査チームがで見つけた物なんだけど、そのとある場所っていうのが……」


 そして、千鶴の発した言葉により、ルシアは箱の正体を半分ほど理解した。


嘉能かのう博士の研究室地下よ」

「まさか、そんな……嘉能博士の研究室は数年前にはもうとっくにもぬけの殻では!?」


 嘉能博士。そう呼ばれているのは、反政府組織エゴイスタのメンバーであり、血流式の創造者でもある一人の天才であった。

 そんな彼の研究室地下から出てきた物となると、もはや血流式が彼の手によって開発されて以来、今現在に至るまで誰も知り得る事のできていない血流式の……いや、《スカーレッドコア》の正体に近づく事ができるかもしれないのだ。

 だが、ルシアの言う通り嘉能博士の研究室は、(もちろん地下どころか彼の自室に至るまで)入念に捜索済みで、今となってはただの空き部屋と化しているはずなのだ。


「そう、表では、そういうことになっているわね……」

「そんな、表ではって……まさか、本家にはまだ!?」

「報告していないわ。それにいまさら、こんな重要度のメーターがぶっ飛んだ物を見せたらにいるおじいさま達はきっと泡吹いて倒れちゃうかもしれないし……っとそれよりも、今は一刻も早く中身を確認しないと」

「……ですね」


 そうして早足で歩いていると、田宮は、ルシアにその箱についての詳細がわかりやすくまとめられた資料を渡した。

 ルシアはまず、表紙に載った、恐らく箱の写真であろう物を見た。そして、ソレを見てまず思った事。それは、「これは箱なのか……?」という純粋な疑問だった。

 資料の表紙にあった写真に載っていたのは、ただの真っ黒な四角。それ以上でも以下でもなく、ただそれ以外に表現のしようがないものであった。

 資料に記載されている詳細によると、大きさは

 一辺わずか一センチ程の正方形で、厚みはなんと〇・〇〇〇一ミリとほとんどなく、人の肌くらいなら抵抗無く裂いてしまいそうなほどに薄い。


「ああ、だからか」


 これ程小さくて、それに黒いから暗闇にも隠せるのだ。どこか見つかりにくい影になる所にでも貼り付けておけば、そうそう見つかる事は無い。

 それに気づいたルシアは、自然と呟いていた。


「お気づきの事だとは思いますが、一応説明を。先程から言っていた《箱》とは比喩的な表情であって、実際にあの内側の空間に物が入っていることはありません。まあ、実際の所は調べてみないとわからないのですが……」


 田宮は、苦笑と共にそう言った。


「そして、これが箱と呼ばれる所以ゆえん、それはこの薄い板とも呼べる物には、数々の情報が詰まっていたからです」

「情報の箱……ですか。まさか、期待して開けてみたら、中身がなんとパンドラの箱でした……なんて事にはなりませんよね」

「それは大丈夫だと思うよ。なにせ、《箱》を見つけた時、側にはとあるメモ……というか、まるでこれを見つけた誰かに向けたような一言が書いてあったんだ」


 すると田宮はルシアの持っていた資料を何枚かめくり、とあるページに載った写真を見せた。

 そこには、壁に貼り付けられたままの《箱》と、その横に、何やら文章が彫られていた。


「『これは私の希望だ 使うならば是非 我らが創るべき世界のために有効活用して欲しい』」


 田宮が、写真に映っていた文章をそのまま読んだ。


「今は亡き嘉能博士が、名も知らぬ僕達に託してくれた大事な願いだからね。出来るならば是非、叶えてさしあげたいものだよ」


 それからは、三人共に無言で《箱》の格納室横の《箱》専用研究室を目指した。




 ――――――――――――――――――――




「…………なんか、めっちゃ見られてる」


 俺は、先程模擬戦を終え、暇を潰しにこうして隣の闘技会場へと来たのだが。


「じーーーーーー」


 約二十メートルは離れていてもはっきりと分かるほどに、俺はアイツから熱い視線(?)を受けていた。


 そしてたっぷり十秒程その視線を俺に浴びせると、あの女は不意に出口へと向かっていってしまった。


「なんだったんだ……一体……」


 俺は謎の視線に目を逸らさず耐えきった自分を褒めてやりたくなった。


「……さて、あっさりと試合も終わっちまったし、何をしようか……と」


 独り呟きながら再び歩き始めると、その先には……ってあれ!?


「ちょ……エリカ!お前、何やってるんだこんな所で?」


 そこには、いつものメイド服姿ではなく、何故かこの学校の制服を着たエリカがいた。

 しかも、その周りには複数の生徒(全員男)。

 すると、その中のいかにも威勢だけは良さそうな金髪の男が一人俺につっかかってきた。


「なんだテメーは!エリカ様にお近づきになろうなんざ百年はえーんだよボケが」

「お近づきどころか一緒に住んでるんですが……」

「ああ?なに馬鹿なコト言ってんだ、コイツは?イカレちまってんのか、なあ!」


 そして男は周りの仲間と共に下品な笑い声を上げると、突如真顔になり俺の胸ぐらを掴み上げた。


「昴……!」


 心配して声をかけたエリカに「大丈夫だ」と俺は手で抑制すると、男に睨み返した。


「文句があんなら聞くけど……ここだと面倒臭い事になる。場所を変えようぜ」

「ンなこと知るか。俺は教師なんかにビビったりはしねえよ」


 しかし、俺の提案も受け入れず男は依然として傲慢な態度を崩さない。

 ……仕方ないか。


「だからさ……」

「ぐっ……うおっ!?」


 俺は、自分の胸ぐらを掴んでいる男の胸ぐらを掴んだ。そしてそのまま男の足が届かなくなる高さにまで上げた。

 男は普段かは鍛えているのか制服の上からでも少し目を凝らせば分かるくらいに筋肉が隆起していて、対して俺といえば細い腕や脚が目立つばかりで力強さはあまり感じられない。

 普通、俺のようないかにもか弱そうな男が力比べで勝てようはずもない相手だろう。

 だが、周りの野次馬達の反応が見る限り、この場において、そのような常識が通じない事は分かって貰えたようだ。

 そして俺は、なおも強がり表情を固めている男に、最高ににこやかな顔で、言ってやった。


「ここだとテメェらをぶっ飛ばせねえから、場所を変えようぜ?」


 わざと子供に言い聞かせるように一音をはっきりさせた口調で言うと、男はいかにも気にくわない、といった表情であったが、


「……チッ、分かったよ」

「分かれば良し」


 しぶしぶといった様子で俺の提案を承諾した男を降ろすと、俺は、後ろを親指で指しながら言った。


「じゃあ、行こっか。

「……え」


 完全に予想外だったのか、男が不意に声を漏らした。


「なんだよ、お前らだって俺をぶっ飛ばしたいんだろ?だったら、闘技場ほど適した場所はないだろ」

「そ、そりゃあそうだが……普通はこう、校舎裏だとか……近くの空き地だとか……色々あるだろ?」

「あんたは昭和のヤンキーか」


 そんな風習はとっくに滅びたよ。

 今となっては人の目がなくともそこらに設置されたカメラによって俺達の行動は常に監視されている。

 校舎裏に行こうとも、空き地に行こうとも。その行動は全てカメラ越しに見られているのだ。

 ……まあ、確かに死角が無いと言ったら嘘になるが。

 ともかく俺は、強引に手っ取り早く白黒付けるため、闘技場にある試合会場のうち、生徒が自分達で自由に使えるスペースがいくつか設置されているのでそれを使う事にした。(もっとも、こんな衆目に晒されるような所で試合などする者などほとんどいないが)

 そして俺は、所定の位置に着くと、既に準備を済ませていた相手に言った。


「それじゃあ、始めるか」


 すると、相手の男がなおも何か言いたそうに食ってかかってきた。


「おい、待てよ」

「なんだ、今更怖気づいてるのか?」

「いや、その台詞はさすがに悪役感ありすぎだろ……いや、そうじゃなくて」

「あ〜もう早くしろよなあ……」

「いや、だから────この状況はおかしくねえか?」


 金髪男の後ろで待ち構えた三人がうんうんと頷く。


「……何が?」


 この状況……と言っても、試合会場は一般的な模擬戦闘用訓練場を使っているし、対して俺に有利なハンデがあるわけでもない。


「おかしいだろ。どう見たっての方が有利だ。何か隠してんじゃねえだろうな」

「凡人相手なら四人だろうが百人だろうが楽勝だよ」


 そして、俺が「始めていいぞ」と言うと、先程の俺の安い挑発にわかりやすく怒りを表にだした四人の男の内、先刻からやたらと喧嘩腰な金髪男が、仲間を置いてまず前に出た。

 使用しているデバイスは、片手用直剣型デバイス。「The Lion(レオ)」獅子座だ。このように、片手用直剣型デバイスは、十二星座の名前を付けられている。

 その中でも、この「The Lion(レオ)」は、特に使用者が少ない。理由は、「The Lion(レオ)」の特徴によるものが大きいだろう。

 それは、見ればわかる。

 その、凹凸の激しいギザギザとした刀身は、まるでのこぎりのようで、実際、この「The Lion(レオ)」型の剣は、相手の肉を裂き骨を削り断つ事をイメージして作られた物でもある。他にも、その刀身に物を引っ掛けたり、物によっては、敵の武器破壊を狙う類いのもある。

 その残虐性や偏った性能から、「The Lion(レオ)」はあまり多数派には好まれない物となっていた。


「おらあっ!」


 俺は、自分に向けて振り下ろされた剣の軌道を目で追っていた。

 俺の使う「文月」の特性、そして俺の魔力量があれば、このような汎用型の剣など切り落とすなと言う方が難しいくらいだ。

 いくら相手が金属だろうと容易く切断出来てしまうのが、この武器の強みである。

 だが、一つ、問題が生じた。というか、この武器を使うにおいてのでもある。

 これは、少しばかり俗っぽい話になってしまうのだが、こうして生徒達全員に支給されているデバイスは、俺達の体と違って試合中でも仮想体にはならない。つまり、俺がこの文月で相手の「The Lion(レオ)」を切り落とす、つまりは壊してしまうと、学内の備品を壊した事と同等とまではいかなくとも、弁償させられてしまうのである。

 しかも、この《デバイス》というものは、例え汎用型といえど結構値が張る。

 そのため、あまり家計に負担を掛けたくはない俺としてはなんとかまともに斬り合う事は避けたいのだ。

 どうにか峰打ちで済ませようと考えた俺は、しかし、ここで文月のもう一つの弱点を思い出す。

 それは、切れ味を求めたあまり他のデバイスに比べ著しく低下したとある性能。

 耐久性能である。

 デバイスという物には、それぞれ機能を数値化した所謂いわゆるステイタスがあり、そのうち魔力により性能を上げる事が出来るのは一つのみだ。(文月で言えば切れ味)

 そして、つまりは他の性能はどう足掻いても強化できないわけだが、そういった中での文月の耐久性の低さは甚大だ。

 具体的な例を上げると、それは平均的な成人男性が市販の金槌で文月の腹を全力で叩くと容易く折れてしまう程度。といった感じだ。

 もし、峰打ち狙いで振り下ろした文月を、そのデバイスの特徴として武器破壊という項目を持つ《レオ》なんかで止められでもしたら、まともな斬り合いどころか一撃でほぼ確実に壊れるであろう。

 だから俺は、こいつとの勝負では確実な「王手」の時以外で武器を使う事ができない、という事だ。

 そこまで考えた俺は、金髪男の振り下ろした剣を紙一重で避けるとひとまず後ろに大きく跳んだ。


「逃げんな!ビビってんのか」


 すると、背後から大型のバトルアックスが横一文字に振り払われた。


「休んでる暇なんて与えねえよ!」


 俺はそれをかがみ避けると、追撃を避けるため低姿勢のまま左に飛んだ。しかし今度は完全に待ち伏せられたもう一人の槍による刺突。

 咄嗟とっさに下に向けた文月の峰で軌道をずらし、かわす事には成功したが、このままではらちが明かない。

 再び金髪男による上段から縦に大振りの攻撃。


「ふうっ……」


 軽く深呼吸した俺は、再び後ろに退りはしなかった。そのかわり、半身の体勢から一歩前に出る。そして、右手を持ち上げると、低めの姿勢でそのまま固定した。

 その間にも金髪男の「The Lion(レオ)」は振り下ろされ、そして、俺の脳天に直撃────する前に止まった。

 俺が、腕で剣を防いだのだ。

 通常はそんな事で振り下ろされた剣の威力を殺し切ることなどそうそう出来るものではないのだが、俺にはそれを可能にする方法があった。


 突然だが、人間の身体には、多かれ少なかれ《魔力》が秘められている。

 それらは普段、自分達の体中を血液のように循環しているのだが、鍛練を積むと、その循環する魔力の流れをある程度操る事ができるようになる。

 そしてそれによって、何ができるかというと……


「こんなことも出来る」

「なっ!」


 俺がフッと鼻で笑ってやると、とどめとなるはずだった一撃を素手で押さえられた男はあからさまに驚愕した。


「魔力ってのは、本来、こうやって使う物なんだよ。まあ、現実の体でこんな戦い方は出来るわけねえけどな」


 説明させてもらうと、現実の体でもこのように魔力の応用で身体の硬化は可能だが、これは防弾チョッキと同じで、斬られる事はないが、衝撃は十分に伝わってくる。つまり、たとえ受け止めても衝撃による骨折やそれに伴う痛みなどは免れないだろう。

 だが、今俺の体は神器と魔力によって構成され、痛覚も存在しない(だが、その他感覚は健在だ)。そのため、魔力にはこのような使い方もできる。


「こんの餓鬼ガキが……!」


 男が忌々しげに言う。

 何を言ってるんだ。強さに歳なんか関係ないだろうに。

 俺は手に持った相手の剣を即座に右足で蹴り飛ばすと、停滞していた戦いが再び開始された。


「魔力の応用がなんだってんだ!こっちはそんなもんなくても数で押し切れンだよ!」


 そう言って一人の剃りこみ頭の男が乱暴にハルバードを振り回す。

 俺がそれを難なく避けると、その切っ先が斜め前方にいた金髪男に向かった。

 金髪男が咄嗟に剣でガードすると、


「やべっ!」


 勢いを殺し切れずに斧ごと二人はもつれ倒れ込んだ。

 まったく、唯一にして最大の数の利を活かすどころか、足枷あしかせにしてどうすんだよ。


「仲間の立ち位置も把握出来ないような奴に負ける気は────おっと!」


 俺が上体をわずかに逸らした直後、目の前を白い光の矢が通り過ぎた。

 その矢は魔力によって精製された。恐らくは敵の中の誰かの弓矢を使った攻撃だ。


「避けられたっ!?」

「見えてたよ」


 弓矢の使い手がいるのは最初の時点で分かっていた。敵全員の立ち回りにもきちんと意識を向けていた。敵全体の行動、位置を把握するのは、戦闘中においてかなり重要度の高い事だ。

 最初から、伏兵となるであろう弓使いの姿はずっと視界の端に留めていた。


「なんでもお見通しってか。笑わせんな!」


 台詞とは裏腹に必死な表情で金髪男が三度みたび特攻して来る。


「いい加減しつこい!」


 それに、お前の行動はだいたい理解できた。


「これならどうだ!」


 先程から続けざまに行っていた大振りをせず、金髪男は剣先での突きの構えを取った。


「……だから、言っただろ?」


 だが、金髪男の突きが当たる事は無かった。


「な……なんでだ……?」


 その攻撃を……否、その場面を見ていた者の大半は、そろって首を傾げた。

 その数瞬後。

 金髪男の体が胴体から二つに分かれ、隙間から緑にも似た色の魔力が噴射された。


「《理解した》って」








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