第2話 壊された声
地区。地区。地区。地区。わからない
攻略されたデータベースの検索。
汚染は魂を重力から解放し人間を人類では分類不可能な種に壊変する。
無知な輩には上位存在の命令権として映るだろうその無意味さが残酷なまでの真実として顕現する。他者を切り裂いてのみ原理が実現されるという真実、すなわち最悪のカタルシスが。
物語が荒唐無稽になるほど洗練が極まっていくなどと誰が信じるのか。作者の都合が読者の意向に左右されるという伝説に加えられた戦慄の意識。好きの追及、キスの血縁関係。
体験が要約されている人名の圧制が亡霊のように付きまとっている。放射能に親近感が湧かないか?死んでほしいのは作者だということ。始めからない世界を創り上げるという達成の意味する惨状。
正義、他者を排除する物語。人間の正当化。当たり前のように解決される因果応報。誰よりも正義を信じているのが私でありそして許されない窮状が確固とした現在に基づく犠牲として記述されているということ。
愛が人間を捕らえて離さない。夢を語るのに相応しい殲滅を伴い明日の後悔を歌で嘔吐する。忘れられた一度もなかった夢幻の地獄を共有され、気付かない内に寒々とした光景が幾多の光に包まれて城壁を包囲する良心となる。
否定の記号と記号の否定。優しいのはどっち?
無詩貝栞(むしかいしおり)は生まれてきたことに気づかない。
それは決定的なことではなかったけど、なんだか少しおかしいのではないかと思う程度には変換していた。人間はただの記号ではなく集合として銘記されることを拒絶する不在であると。名前を読者に共有されるために便宜的に用いるべき実存として志向性を欲望すべきなのだ。
「つまり商品を購入する意識からしても存在は性的な規定を魅力として持たなくてはならない。虚無にならないよう頑張らないと」
「死ねぇぇぇぇ!虫けらぁぁあ!」
と叫ぶような真似をするのははしたないことだし、狂人だと思われるのがオチなので無言のざわめきを黙劇にして人間を壊していた。そもそも人間は虫じゃないし露悪的なのはよくない。
「面白いという意識は自閉だ。それでは言葉が足りない」
他者の内面性に対する開きを常に身構えるための警戒を社会秩序という抽象名詞では捉えずにより深く考えようと決めた。
そんないつものある日、それが笑顔でやってきたのだ。
「良い人生を送りたくないか?」などとふざけたことをぬかして。
何でも異世界転生が多少の付加価値を能力として分配することで潜在的に可能であるらしい。ただそれが何であるのかはよくわからない。
「君は少し生きるということを考えたほうがいいのでないかな?」
「うんそうだね。いつもよく考えている」
フェアなルールに基づいて理不尽な結末を回避すること。覚えた。
なら渡された能力を自由として行使することが救済なのか。
「おい、そのナイフをしまえ!人のいうことを聞いてなかったのか?」
「人の話は黙って聞きなさいとあなたから教わったので」
平和な日常に凶器を持ち込むための口実ではなかったのか?
それとも狂気は偽りだとでもいうのか?
救済を拒絶することが世界に親近感をもたらすという仮説。
「殺してはだめだということは教わらなかったのか?」
「もちろん教わったよ。大切なことだからね。でも人の言葉をそのまま繰り返すのはおかしいから。」
「…………」
鏡像の断片に細心の注意を払った分かりやすさが心臓に突き刺さる感触を反抗と呼ぶのだろうか。確かにそれは学生にとって下らない選択肢だろう。しかし。
「現実と夢の区別がわからないなどというんじゃないだろうな。それはお子さまというものだ」
「量子変換された現象の二重性がわからないんじゃない。命という分かりやすさに対して対話を時間の延長としてもたらすはずの神経がわからない」
多分、スマートフォンが鳴らなかったら充分な変換ができたのだ。
それは誤解の意識が足りないということではないだろう。
日常言語という概念を破壊して他人の尊厳を配慮しようとした結果にすぎない。
『オメデトウゴザイマス、
アナタハブレイクカード≪ギザギザジャスティス≫ヲニュウシュシマシタ」
「なにこれ……。でも面白そうだといったら失礼だよね。意味を考えてこんなゲームは間違っているということにしないと」
初めての異世界転生が戸惑うことばかりなのは偶然ではないとしてもサバイバルゲームの恐怖は執拗に存続する。願い持って強く生きよう。ただコミュニケーションの先取りはよくないことだ。
「人間を頼まれてもいないのに自分の意志で変えよう。そうすればみんなが笑顔になると信じられるようになるはず。頑張らないと。えっとこの感情はどこからきたんだっけ?」
間違っていることに基準がないのだから口癖があるのだ。
頑張らないと。頑張らないと。頑張らないと。
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