人間の壊変

オドラデク

第1話 生まれてきたことに気づかない

生まれてきたことに気づかない


世界には起源があり

物語には始まりがあり

人生には出会いがあるにもかかわらず

生まれてきたことに気づかない


言葉が届かない、声が聞こえない、見ている風景が共有できない

そして生まれてきたことに気づかない


名づけられることに対するそれ相応の憎悪があり

逃げられない生に対する嫌悪があり

そして何よりも生まれてきたことに気づかない


愛することができるのならそれはもう終わっていて

死ぬことができるのならそれはもう実践していて

幽霊のように透き通った身体にも退屈し

それでいてなお生まれてきたことに気づかない


生まれてきたことに気づくために物語を始めると思うのなら

それはひとつの誤解だろう

生まれてきたことに気づかないために物語はあるのだから


だからこの物語のような文章も

他の無数に多くの作品と同じように

生まれてきたことに気づかないために叫ばれ続けるのだ


そう

だから

生まれてきたことに気づかない

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