第66話 夜歩き

 私は夜歩く。

 それが浅上夜子の日課だ。


 今日はアイちゃんはいない。

 最近アイちゃんは何か悩んでいる様子だから、そっとしておくことにした。


 自宅周辺の田舎道。まっくろな道を、一人でゆっくり、ゆっくりと歩く。


 田舎道の夜は、暗い。街灯も少なく、走る車もない。店もない。

 お月様が出ていないので、本当に真っ暗。

 自分の足音だけが暗闇に響いて、まるで昼間とは別の世界に行っているよう。

 肌に湿り気のある空気が纏わりつく。気温はそれほど低くない。明日は、いやもしかしてもうすぐ雨が降るのかも。

 

 そんな道を歩く。

 ゆっくりと。

 今日も趣味のために。

 

 心が落ち着く。

 ……いや、本当はどうなんだろう。

 私は、なんで歩いているのかな。

 私の趣味は死体観察。

 うん、それは間違いない。

 でもいつからそんな趣味だったのか?


 小さい頃は違った気がする。

 いたって普通の女の子だった。

 自分のことを、ぼんやり考えてみる。


 私は高校2年生を繰り返している。

 そのはずだ……でも、実感はない。


 だって、私は、私にとっては何回繰り返そうが、最初で最後の高校2年生の生活だ。

 いのりが教えてくれたから、繰り返していることが分かる。

 でも、と。ゾクリとする考えが浮かんだ。


 本当に、そうなのかな?

 私が繰り返しているのは、本当なのか?

 もし本当だとしても、えーと今回が本当に13回目?


 いのりが嘘をついていたら、私にはわからない。

 

 本当は、もうずっとそれこそ百年くらい経っていて、私だけ気づいていないなんてこともあるかもしれない。

 ずっと叶わない約束を、待ち続けて。

 

 だから、私は死体を探している。

 そして観察するのです。

 いろいろと、好きなことを考える。


 そして考えるのです、そこで死んでいる貴方は……水野君じゃあありませんかって。


 私は歩く。

 ゆっくりと歩く。


 そのうち、死体を見つけるだろう。




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