過去編

第49話 今はもうない過去 プロローグ

 強い風。

 夏が終わろうとしている。

 稲穂はほとんど刈り取られ、若いススキが風に揺れる。


 台風シーズンはいつも思い出す。

 水野君のことを……私の待ち人を。


 思い出はもう遠く、約束もたぶん果たされることはない。

 いのりが出てきて、契約は破綻して。

 私にとって、今年がホントに最後の高校2年になるはずだ。


 ああ、強い風に揺られると昔のことを思い出す。


 きっかけは、小学生の時。

 水野君とは幼馴染で、小学生の時から一緒だった。私たちの関係は、丁度アイちゃんと翔太君に似ている気もする。

 だから、アイちゃんが翔太君と付き合いだして嬉しかった。


 ……いや、どうかな? うーん、アイちゃんはずっと翔太君のことが好きと言っていたけど。

 私の場合は違うな。

 最初は大嫌いだった水野君。


 それが変わる時期が、この台風が来る夏の終わりの時期だった。



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