第48話 今そこにある危機、的な
ピンチです。
非情に、ピンチ。危機的状況ともいう。
一体全体どうしてこんなことになってしまったのか?
「あああ~」
私は頭を抱えた。
夏休みは、今日を入れてあと6日しかない。
「夜子ちゃん、どうしたの?」
自宅の机でうな垂れていると、アイちゃんが声を掛けてくる。
「アイちゃん! お願いがあるんだけど……」
「宿題なら手伝わないわよ?」
「えええ!」
アイちゃんはベットで寝転びながら漫画を読んでいる。そして、宿題はすでに終わらせている。昼間はアイちゃん暇だろうし、手伝ってくれると思ったのに……。
でも私は諦めない。
「な、なんで? 手伝ってよー?」
「イヤ。ていうか、そもそも宿題する気あったんだ? 夜子ちゃん今日まで全然やらなかったから、宿題提出するつもりはないんだって思ってたわ」
「そんな訳ないでしょ? 提出する気は満々だよ! 先生に怒られるの嫌だし」
「じゃあ、スタートするの遅すぎ。ウチの学校課題とか宿題、腐るほど出るでしょうが。もう、諦めたら?」
「うーん、確かに私一人じゃあ間に合わないかもだけど……」
そう言いながら、私はアイちゃんの方にチラチラを視線を送ってみる。アイちゃんはこっちを見ないで漫画ばかり見ている。私の計画は失敗した。
でも諦めない。
「困ったなー。あー、こんな時に手伝ってくれる友達がいたらなー。宿題終わってて暇そうな人がいたら良いのになー」
私は独り言を呟いてみた。
「……そういえば私、だいぶ前から友達に言ってた気がするわ。早め早めに宿題したらって。でもソイツは昼間はブラブラ散歩したり、ポケモ○したり、海に遊びに行ったりで全然私の言うこと聞かなかったわねー。まあ、いい気味じゃん」
ぐう。中々いいパンチが帰ってきた。
「な、夏休みは遊ぶのが学生の本分であって。ずっと勉強ばかりしてられないよねー。ほら、夏に休むから、夏休みだし~。健全な学生として私は休みを満喫していたの」
「……それを言うなら学生の本分は勉強でしょ。ばーか」
「あ! そうだ、そうだ。私ってほら優しーから、この前知り合った中学生の子たちに勉強を教えてあげたりしてたんだよね。その代り、なかなか自分の宿題をする時間が取れなかったんだ~、失敗失敗、あははははは」
「……ああ。この前来た喧しい奴らのこと? アイツらに教えてたのは、春川と佐藤でしょうが。アンタは私とゲームしてなかったかしら?」
ぐうう。アイちゃんよく覚えているな。
「いやいやいや、ほら私ってあの子たちに頼まれて遊びに行ったりしてたし。えーと、千代ちゃと早苗ちゃんはこっち詳しくないからいろいろ教えてあげようと思って。あー、頼まれて、だよ? 私は頼まれて、仕方なく肝試しに連れて行ってあげたんだー。イイコトしたなー私」
「……アイツらプルプル震えながら、ホテルの肝試しはトラウマって言ってたわよ? いや、マジで怯えてたけど、一体何したの?」
ぐううう。手強い。アイちゃんが手強い。
でもでも、諦めない。
「ごめん! アイちゃん、私さぼってました! 反省してるから手伝って!」
アイちゃんの側に行って頭を下げる。土下座です。
……ふと、思ったんだけど今日、この日。宿題を手伝ってもらうために同級生に土下座している女子高生って全国で私くらいじゃないかしら?
「……全く、しょうがないわね」
やったー。アイちゃんがベットから起き上がった。長い闘いだった。全国オンリーワン女子高生になった甲斐がありました。
「そもそも夜子ちゃんね? 私が宿題してる時に一緒にすれば良かったのよ。それを、散歩やら川遊びやら、海に行ったり、ポケモ○したり。どっかの中学生とも友達になって来るし。遊び過ぎ。もうちょっと、考えて計画を立てて……」
うーあー。アイちゃんのお説教が始まりました。
完璧な正論だから言い返せない。
私は、アイちゃんのありがたいお話で精神を削られながら宿題を頑張った。
期限まで、あと6日。
……ああ、間に合うでしょうか。
私は、諦めない。
「……場合によっては、狂歌ちゃんとアザミちゃん。いや、中学生ーズにもお願いしようかな?」
「中学生に泣きつくのは、マジで止めろ」
私の独り言にアイちゃんのツッコミが入った。
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