スターライトイケメンストレート


 修行の場である豪邸の敷地には、筋肉ナンチャラとかナントカ番付とかで目にするようなものもあった。


 SA●●KE的なのもあった。


 難易度が高いため、星河をもってしても水の中へ。落ちる姿までもがイケメンだったが、落水すれば、まさしく水も滴るイケメンである。


 これがメインの修行となり、数日が過ぎた。



 修行の成果か、星河は新たな投球フォームを自分の物とし、球速と球威もアップ。

 老師の指示で、ユウは防具を着用するようになった。彼女も文句はなかった。


「修行も、そろそろ最終段階じゃな」

 投球練習の汗をタオルで拭く星河(まるでCMの1シーン)に、老師が言った。


 思えば、星河に残された時間は多くはない。


「教えてくれ、老師。僕は何をすればいい?」

「この老いぼれを信頼してくれるか」

「当たり前じゃあないか」

 信頼の証に、星河がイケメンなポーズをした。

 彼の信頼は、こちらもイケメンな老師に伝わったようだ。

「それでは、若者よ。修行の最終段階に臨んで貰おうか」


 そう言って老師が差し出したのは、何の変哲もない野球のボール。


「一球入魂。お主の魂を、ボールに乗せるのじゃ」

「僕の魂を?」

「それが出来た時、お主の望むピッチングが出来るじゃろう。じゃが、そう容易くは行くまい。このボールを──」

「投げればいいのかい?」

 老師は「肌身離さず持ち続けるのじゃ」と言おうとしたのだが、その前に、ボールは星河の手の中に。


「僕の魂を乗せる……。こうかな?」

 星河が、自身の魂からイケメンオーラを溢れさせた。見えないから多分だけど。


 そのオーラがボールに宿ったのか、老師が「何と……!」と驚いていた。

 オーラが宿った証なのか、ただのボールだったはずなのに、どことなく光り輝いているような気がしないでもないんじゃないかな。



「ユウちゃん、受けてくれないか」

「別にいいけど」

 マスクを被り、ユウがしゃがむ。ミットを構えた。

 それを見て、星河が投球動作に入る。振りかぶり、ボールをリリース。


 150キロ近い速球が、何となくキラキラしたエフェクトを発しているような感じで、ミットに収まった。


「……末恐ろしい男じゃ」と、老師が拍手をする。

 星河自身、今の1球に手応えを感じていた。

「今のは、只のストレートではない。お主だけのストレートじゃ。名は何と言う?」

「名前? 名前……か」

 くるりとターンをしてイケメンなポーズをした後、星河が言う。


「スターライトイケメンストレート、かな」


「スターライトイケメンストレートか。良い名じゃ」

「なあ、お兄さん。このボールにサインしてくれよ。スターライトイケメンストレート誕生の記念にさ」

「記念球というやつだね」

 イケメンなポーズでサインをする星河。当然ではあるのだが、サインそのものもイケメンである。



 スターライトイケメンストレートに磨きをかけ、星河はマウンドに上がる日を待つのだった──。

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