老師


 ここは山の中。


 相変わらずイケメンな星河は、イケメンだからこそ似合う仕草でスマホを取り出した。

 やはりイケメンなポーズで操作し、地図情報を画面に表示する。

「ここだね」

 目的地に着いた事を確認した彼は、何段あるのかも予想出来ない階段を見上げた。

 この階段を上った先に、星河の力になってくれる男がいるはずだ。



「さあて、行こうか」

 スマホをしまい、歩き出す星河。

 もちろん、しまう動作にもイケメンさが滲み出ており、歩く姿はイケメンをイケメンたらしめるイケメンぶりである。

 イケメンイケメン言ってたら、イケメンが何だかわかんなくなってくるな……。

 ……イケメンって何だっけ……?

 ラーメンの仲間?



 とりあえず、星河はイケメンなのだ。


 しばらく歩いていると、イケメンな老人が立っていた。

「何用かな、若いの」

「僕は、この先にいると言われる老師に会いに来たんだ」

「それなら、儂の事じゃろう」

 星河の力になってくれる男がいたのは、階段を上った先ではなく、階段の途中だったようだ。


「僕は星河と言う者だ」

「ふむ。お主の顔、テレビで見た事があるな」

「老師。僕に、あなたの力を貸してはもらえないだろうか。僕には、ファンの前で無様なピッチングをする事なんて出来ない。最高のボールを投げるために、あなたの力を貸していただきたい」

「……ふむ」

 鋭い視線が、星河の全身を射抜く。「うっ……」と声を上げかけた星河だったが、彼のイケメンとしてのプライドが、情けない声を出させなかった。


 老師が「ははは」と笑う。


「お主、只のハンサムではないようじゃな。その内に、熱き魂が火花を散らしておるではないか」

「それでは、老師……」

「うむ。この儂が、お主を鍛えてくれよう」

「ありがとう、老師」

「じゃがな、若いの。手加減はせんぞ。お主に耐えられるかな」

「もちろんだとも」

「よろしい」

 そして、星河の修行の日々が始まる──。

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