乾パン
姫宮未調
乾パンこそ至高
あ、皆様おはようございます、こんにちは、若しくはこんばんは!
ありのままのボクを知って頂きたく、書き記しておこうと思います。
タイトルを見て、おまえも荒らすのかとお考えになられるかもしれません。
一緒にしないで頂きたい。
ボクは本気で、好きな食べ物第一位が乾パンなのです。
いいですか?あの缶々の小さい一口サイズのお話はしていません。
あれは、別物なのです!
ボクが好きなのは、ボクが小学生の頃まで頻繁に配られていた非常食用の乾パンです。
あれは素晴らしい。
水分を持って行かれるレベルの乾燥。
優しい香り。しかし同じお菓子でもあの控えめで、奥ゆかしい、エレガントな香りは醸せまい。
あの五センチくらいと三センチくらいの、四角い、角の丸い優しいフォルム。
まるで、食べやすくしているかようにかのように、均等に空いた、控えめな穴。
大々的に語りましたが、質素です。限りなく質素です。だが、それがいい。
真空パックを開けた瞬間の喜びを分かち合いたい。
五枚ほどがキレイに纏められ、無駄な装飾などない。
飾らない見た目、美味しさ。
ボクは乾パンが大好きだ。小学生の頃から愛してやまない。
だがしかし、それは時代の流れと共に食せる機会が減る。
そう、配られなくなる。だって、売ってないから手元においておけない!
その哀しみを胸に、永遠の愛を誓い、食べられないことを我慢する。
希望をくれたのは父だった。
きっとあの人は、『乾パンが何故か好きなうちの娘』くらいにしか考えていないと思う。
小学生の先生を、大学卒業から、還暦間近の今まで続けている人である。
変なところで淡白で、変なところで面白い。
小学生の頃までは、『パパカッコいいね!』と羨ましがられたが、中学生になる頃には誰も言わなくなった。
今は……、好きなアニメを一気に纏め見する、映画作品まで只見る、そんなおじさん。
因みに仲間だと思って語ろうとしてはいけない。ただ好きなだけで、感想が『見たよ』レベルである。
そんな父が、ある日、『段ボールいっぱいに入った乾パン』を持ち帰ってきた。まだ、中学生くらいの頃だったか。学校で余ったものをもらってきてくれたらしい。
「娘が好きなんでもらっていっていいですか」
恥ずかしげもなく、真顔で言ったに違いない。
だって、ボクのパパンだもの。
ボクには、最高のサプライズプレゼントだ。
有り難く頂き、部屋にこもり、ご飯もそこそこに、貪り続けた。
因みに高校生くらいのとき、これを聞いたイラスト担当のあの友人は爆笑した。
彼女は、小さい頃から、ボクが乾パンへの愛を語っているのを知っている。
まぁ、段ボール一箱くらい、1ヶ月どころか、二週間も保たなかったよね……。
因みに父はとろろが大好きなのだ。
いきなりなんの話かと言うと、単におまえも食べてみろと食べさせられ、内側からくる痒みに転げ回った記憶がある。
ダメなのかーと、娘を心配もせず、爆笑していたような父である。
そのときの気分屋なので、間違っても『娘のために』とは考えていないことを理解頂きたい。
それからボクは、更なる乾パンに焦がれる日々をあれから、最近までしていた。
長い、本当に長い…………。
次の救世主は、端から爆笑していた友人だった。
「近所のサミットに売ってたから、買ってきたよ」
少し柔らかいが、あのちっぽけな缶々のすかすか乾パンとは違い。表面が少し柔らかく加工された一級品。
「賞味期限気を付けてね」
『10%』の値引きセール品。
大丈夫、1日でナクナルカラ。
「君って本当に乾パン好きだよね」
自他共に認める、変なお姉さんです。
◇◆◇◆◇◆◇
乾パンを愛して、そろそろ30年。
非常食メーカー様、お菓子メーカー様、是非ともボクという愛好者のためにも、売り物で構いません。
あの『真空パックの乾パン』の再現を、何卒お願い致します。
ふざけていると思われている方、ボクは本気です。
なので、ボクに乾パンをください。
缶々のはいりません。
サミットさんでは、たまに販売しているようなので、手土産には是非、乾パンを。
皆様も乾パンを宜しくお願い致します。
完
◇◆◇◆◇◆◇
検索したらあった模様。
……普通にお店に並べてください。
全国ネットでー!
乾パン 姫宮未調 @idumi34
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