第22話 ピエロ


いつもそうだった。

みんなに。みんなに。

合わせて合わせて。

それが私のモットーだった。


だから。


「俺」ではなく「私」


「短い髪」を「長い髪」


「写真」ではなく「くだらない」


いろんな事を否定された。それが当たり前だと思った。そうあのときまで。



「うん!わかった~!じゃあ、またね!」


くだらない。さっさと寝かせろよ。

失恋したとか愚痴愚痴うるさいよ

ハァッ、今日も何か撮ろうか。


唯一、親から許可もらってるカメラを持った。この時間は真っ暗でも稀に何か撮れる。酔っ払って喧嘩してる男女、キスしてるカップル、星空

自然とタイマーで撮った写真だ。


けど、ひとつだけ自らボタンを押した写真がある。それは、凛と立って朝日を見上げている黒い女性だ。

まっすぐした瞳をもって綺麗だった

すぐにこちらに気づいて、どっかに行ってしまった。美しいと思った。

誰にも左右されずにまっすぐまっすぐ己の意思を貫く人。





あぁ。つまらない。




なんでいけないの?

『俺なんて男みたい~』

『え~、こっちの方が可愛いよ!』

『なんでって…。だって』



女の子でしょう?


あぁ、女だから。

ショートにしすぎちゃダメなのか。

可愛いくないといけないのか。

言葉を綺麗じゃないといけないのか。


縛られていく。


いつからだろうか。


この鎖をもう。

足掻いて外すのを諦めたのは。










「じゃあバイバーイ」

「また明日~!」

疲れた。本音なんか閉まって。

愛想笑いでなんでも聞いたから疲れた家帰ったら、化粧落として、Twitterやって、


めんどくさい。


群れないといけないなんて間違ってる。なんで?嘘を塗り偽らないといけないの?

最近そんなこと思ってなかったのに。やっぱり病んでるからかな?

それとも、あの女の



ん?目の錯覚か?


今、あの女の人と黒い男の人がいる。用があるのかな。うちの回りをうろうろしてる。うちに?盗撮がばれたとか。いや、それはない。

ちゃんと気づかれないようにしてたから。けど、最後は目があった。



大丈夫。

大丈夫だ。

怒られない。


気づかれないように後ろを通れば大丈夫だ。


気づかれないように。





「ちょっとすみません。」


ギクッ。


「はい?」


平常心。平常心。


「そんな、恐がらなくていいですよ。貴方に用があるのは正しいでしすけど、怒りませんから安心してください。」


そういって、笑う彼女は。



まるで、仮面を被ったピエロ。


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