招かれざる訪問者達

 自慢ではないが告白された経験は数多い。紙にでも書き出さないと全員分の名前と顔をすぐには思いだせないほどだ。だが過去にこんなふうに肉体派な迫り方をした女子はいなかったし、どんな持って回ったやり方だろうと野郎は一人もいなかった。

 これは全体どういう冗談だ。

 フリーズ一歩手前の頭を捻り、恋愛関係こそなくても自分に最も近しい異性を見遣る。だが原に肩を抱かれた穂月は、開いた口から魂がはみ出しそうに愕然とした面持ちだった。状況把握の助けには到底なりそうにない。

 前に立ちはだかる原の目は獲物を前にした猛禽の如く炯々とした光を湛えている。流一はあけみより自分の尻を守るべきかと本気で迷った。

「だ……だめぇー!!」

 あけみが舌っ足らずな悲鳴を上げた。か細い両腕を精一杯に広げて、流一を背後に庇うように原との間に割って入る。

「先輩が男の人と、それもあなたみたいなマッチョっぽい人とエッチするなんて、ちょっとだけ見てみたい気もするけど、でもやっぱり絶対駄目! 女の人でもやだけど、百歩譲って穂月先輩ならしょうがないかもしれないけど、男の人に先を越されるのは絶対に嫌! 許さない!」

 あけみが全身全霊で乙女の主張を繰り広げる。しかしまるで異言語で話し掛けられでもしたみたいに、原は太い眉をひそめた。

「何のことだか分らんが……俺はただ織名とやりたいと織名に言ってるだけだ。オナニーってるじゃないぞ、織名に言ってるだ。お前には関係ない」

「関係あるもん! だってあたしは流一先輩の彼女なんだから! 自分の彼氏が男の人とやるだなんて許せるわけないじゃない!」

「男とやる、だと? つまり織名はホモだということか。それは別に構わんが、俺がやりたいのは織名だけだ。相手を求められても困る」

「ホモはあなたの方じゃない! とにかくこれ以上先輩に近付かないで。ちょっとでも変なことしたら訴えてやるんだから」

「いい加減にしなさい」

 ほとほとうんざりといった風情で穂月は言った。鋭角に曲げられた肘が原の脇腹に突き刺さり、日焼けした顔がたちまち苦しげに白くなる。

「あけちゃん、こいつがさっきからやりたいって騒いでるのはたぶんあたしのことだから。流一じゃなくて」

「……穂月先輩?」

 あけみは初めて穂月がいることに気付いたふうだった。穂月は疲れ切ったような息を吐く。

「全部原くんが悪いんだけどね。あんな紛らわしい言い方したら誤解するに決まってるじゃない。ったく、さっきまで穂月さんだったくせに、どうしてわざわざ流一の前で織名にするかな」

「オナニーするかな?」

 穂月は原の向う脛を蹴りつけた。

「悪かった、ちゃんと言い直す」

 原はぴょんぴょんと片足で跳ねながら己の過ちを認めた。

「では改めて。穂月さん、俺は君を抱きたい。俺のものになってくれ」

「嫌、お断り」

「え?」

「だからそこで不思議そうにしない。どーしてあたしが君とそんなことしなきゃいけないのよ」

「俺が穂月さんのことを好きだからに決まっているだろう。心からやりたいと望んでいるんだ」

 始末に負えないというふうに穂月は首を振った。その頬が赤らんでいるのが単に怒っているせいなのか、それとも他の気持ちも混じっているのかは流一にも定かでなかった。

「いいなあ、穂月先輩。もしあたしが流一先輩にあんなこと言われたら絶対断らないのに」

 あけみが呟いた。流一の耳にもしっかりと届いたが、とりあえずこの場は表立った反応はせず記憶の方にだけしっかりと留めておくことにする。

「もう疲れちゃった。どこかでお茶でも飲まない?」

「それならうちがすぐ近所だ。お茶も出すし、のんびりしたければ風呂もベッドも使っていい」

「あけちゃん、とりあえず駅の方に戻ろう」

「あ、はい、えっと」

 穂月は原をガン無視して、誘われたあけみは問うように流一を見た。流一は頷いた。今さら二人きりに戻ってデートを再開する流れでもないだろう。穂月も本当に疲れてそうだし。

 公園を出て最初に目に付いたカフェへと入る。注文役に回った流一は、全員分の飲み物をトレイに載せてテーブル席まで運んだ。席順は壁際の奥にあけみ、その対面に穂月、穂月の隣に原だ。流一は空いているあけみの隣に腰を下ろした。あけみのアイスミルクティーは流一持ちだが、あとの二人からはきっちりと代金を徴収する。

「順調にいってるみたいね」

 穂月が言った。流一とあけみは図らず互いの顔を見合わせた。原の出現が余りに強インパクトだったせいで頭から飛んでいたが、そういえばキスしているところを目撃されたばかりだ。

 穂月の方は問題ない。卒業式の日に続いて二度目だし、変に騒ぎ立てたりしないのは分っている。

 しかしこの原という奴はどうなのか。流一に後ろ暗いところなどないが、中学生相手に公園でどうこうしていた、みたいに学校で噂になるのはかなりうざい。

「安心していいぞ、織名弟」

 流一の視線を受けて原が口を開く。

「弟は余計だ」

「穂月さんなら俺が必ず満足させてみせる。独りで先走ったりはしない。いざとなれば認知もする。万事俺に任せておけ」

「……避妊はちゃんとしろよ」

「なんであたしを見るの」

「そうなって困るのはお前だろう」

「そうならない。だって原くんとなんかやらないから、って、何を言わせるのよ」

 穂月はむくれてそっぽを向いた。

「あの、原さんは二人の」

「同じクラスだ。原タツノリ……じゃなくて」

「康徳だ。穂月さんの夫」

「ぜっったい、違うから。ただ席が隣なだけよ。それ以下ではあっても、それ以上はあり得ないわ」

「そっか、三人ともクラスメイトなんですね。じゃあさっきの清真さんっていう人のことも知ってるんだ」

 あけみは何気なさそうに言った。ここでその名前を出すな、と流一が今さら思ったところでどうにもならない。

「清真さん?」

 すかさず穂月が食いついた。あっというようにあけみが大仰に口を押えて、さらに穂月の疑惑を招く。

「清真さんがどうかしたの、流一?」

「別に、全然大したことじゃない。さっき昼飯にマンバー入ったら清真がバイトしてたってだけだ」

「バイトってあの人が?」

 穂月は疑わしげだったが、あけみが余計な情報も含めて補足する。

「そうなんです。すっごく綺麗な女の店員さんが先輩のこと流一って呼んだから、あたしびっくりしちゃって。どういう関係なんだろうって」

「中学の時は女子でも俺のことそう呼んでる奴いただろう」

「だけどうちの中学にあんな綺麗な女の人いなかったし」

「織名弟と清真は仲がいいんだ。昼飯もいつも二人一緒に食ってる」

「え……そうなんですか」

「いつもじゃねーよ。二回だけだ」

 流一は原を睨みつけながら訂正した。原はびくりと震えたが、流一の剣幕に恐れをなしたわけではなかった。テーブルの下で穂月に何かされた模様である。

「あんなお嬢様がバイトっていうのは意外よね。高校入学を期に新しいことに挑戦しようみたいなノリなのかな」

「やっぱりいい家の人なんですね。そういう感じしました。見た目だけじゃなくて、雰囲気もなんか偉そ……素敵でしたし」

「実はあたしもよく知らないんだけどさ。そうなんでしょ?」

「俺だって知らない」

 にべもなく答える。何かと浮世離れした印象を受けるのは確かだが、具体的な氏や育ちなどについては一切聞いていない。

「清真な。あいつは」

「何か知ってるの、原くん?」

「巨マラ好きだ」

 流一と穂月は同時に吹いた。原はもっともらしい顔で頷く。

「自分からきょまら子を名乗るぐらいだ。間違いない」

「それってどういう意味なんですか、先輩?」

 あけみが無垢な子供みたいに首を傾げる。

「後で穂月に訊け」

「あけちゃんは知らなくていいから」

 流一は氷が溶けて薄まったアイスコーヒーの残りを飲み干すと穂月に言った。

「なあ穂月、お前初めてつき合う男がこんなんで本当にいいのか? もし彼氏が欲しいんだったらせめて榊あたりにしたらどうだ。あいつも彼女欲しがってるし、お前が相手ならたぶんOKするだろ」

「やめて。今日はちょっと魔が差しただけなの。今は反省してる」

「その榊って野郎がどれほどのタマなのかは知らないが」

 原が意気込んだ様子で割り込んだ。

「穂月さんだってモノはでかい方がいいだろう? ちなみに俺はかなり自信がある」

「やかましい。あけちゃん、もう飲み終わったね。出ようか」

「はい」

 あけみに続いて流一も席を立った。しかし原はこれでやっと二人きりになれるといわんばかりにどっしりと腰を据えたままだ。

「原くん、邪魔」

 穂月は一言で切って捨てた。

 原とはカフェで別れ、残りの三人は西来島駅から電車に乗った。あけみは一人先に連城台で降り、何度もこちらを振り返りつつ改札に向かう姿を見送って、流一と穂月は各駅停車に乗り換えた。

「家まで送ってってやればいいのに」

 空いているのをいいことに、穂月は座席の真ん中で大きく股を広げている。下にハーフデニムを重ね穿きしているとはいえ、ミニスカワンピの女子高生がその格好はどうなんだと思わなくもない。

「まだ明るいし必要ないだろ」

 吊り革に緩く手を引っ掛け、車窓の外を眺めながら流一は答えた。

「ってことは暗くなってからならちゃんと送っていくわけね」

「そうだな」

 揚げ足を取ったつもりらしい穂月にあっさりと頷く。穂月はつまらなそうに横を向いた。

「ま、彼氏なら当然よね」

「そういうお前はよかったのか?」

「何がよ」

「原ともっと一緒にいなくてもさ。向こうはかなりやる気出してたんだし、家までついていったら案外楽しくやれたかもしれないだろ」

「冗談でしょ」

 穂月はひどく酸っぱい物を口にしてしまったような顔をした。

「あんただってさっきは……」

 言い掛けた途中で尖った調子がふいに変わる。

「流一」

「ん?」

「あたしが他の男の子とつき合ったりするのって、やっぱ気になる?」

「別に。そんなのお前の好きにすればいい。誰と何したって自由だ。いちいち俺に断る必要なんかない」

「あたしは、流一が誰かとナニしてたら気になるけど。相手が可愛い後輩だったり、彼女以外の超美人のクラスメイトだったりしたらなおさらね」

「はっきり言っとくけど、清真とは本当になんにもないからな。だいたい、もし何かあったら新宮と一緒の時にわざわざあいつのバイトしてる店なんか入るかよ。俺があいつと関係あるのは教室の中だけだ。変な勘繰りすんな」

「はいはい、信じるわよ、今のところはね」

 先はどうだか知らないけど、と穂月は意味深っぽく付け加えた。実際、清真にもっと関わることになるなどこの時の流一は夢にも思っていなかった。


     #


「……今日も清真さんは来ていないのですね」

 永野教諭の声は暗かった。まるで思い切ってデートに誘った相手を五時間待ってる中学生みたいに、心細く意気消沈した風情である。

「誰か連絡を受けている人はいませんか?」

 永野の問いに、流一はクラス内の視線が自分に集まるのを感じた。だが何見てんだよ、などと睨み返すようなことはせず、せいぜい無関心な様子を貫いておく。

「それではもし途中から登校するようなことがあったら、私のところまで来るように伝えて下さい。よろしくお願いします」

 今週に入ってから清真はまだ一度も登校していなかった。

 しかし取り立てて騒ぐほどのことではないはずだ。例えばインフルエンザに罹れば一週間ぐらいは休むのだし、二日学校に来ないぐらいは日常の範疇だろう。それが三日めに入ったところで大した違いはない。左に空席があったところで流一の時間は滞ることなく過ぎて行く。

 永野が教室を出て行くと、流一は生欠伸をして机の上に突っ伏した。ゆうべ遅くまでだらだらとネットをしていたせいで些か眠い。だが幸せに微睡む時間は与えられなかった。

「流一」

 目下このクラスで流一を下の名で呼び捨てるのは二人だけだ。そのうち片方がいないのだから、相手は自ずと決まっていた。

「あんた日曜に清真さんと会ったんでしょ。何か聞いてないの?」

 腕を枕にしたまま流一は顔だけ横に向けた。清真の席に座って足を組んだ穂月が、試験官みたいな目付きで見下ろしている。流一はわざわざ記憶を探るまでもなく否定した。

「何も。客と店員以上の会話なんかしてないからな」

「じゃあ体調悪そうだったりとかは」

「少なくとも俺は気付かなかった。むしろかなりちゃんと働いてる感じだったと思うけど」

 バイトとはいえ中学生は普通雇わないだろうから、清真が働き始めたのはごく最近のことであるはずだ。だがそれにしてはずいぶんと物慣れた様子だった。性状に色々問題はあるにせよ、基本的なスペックは高いのだろう。

「どうしたんだろうね。流一、電話してみなよ。とりあえずメールとかでもいいけど」

「自分でしろよ」

「メアド教えて」

「知らん」

「電話番号」

「だから知らねえって。そもそもあいつ携帯とか持ってるのかな」

 使っている場面を一度も見た憶えがない。単に規則を守って校内では控えているだけなのかもしれないが、そもそも清真には似合わない道具という気がした。

「あんた使えな過ぎ。それじゃあしょうがないね。流一が知らないんならクラスの誰も知らないだろうし」

 素直には頷けない見解だ。しかし実際清真と三言以上の会話を交わしたことのある人間を流一も自分の外には知らない。まったくいてもいなくても面倒な奴である。

「あとは西来にしくるのマンバー行ってみるぐらいか。まさかバイトには来てないだろうけど、事情話せば連絡先教えてもらえるかもしれないよ。あんたどうせ暇でしょ」

「だからどうした。だいたいお前、今まで俺と清真のことでさんざん言い掛かり付けてただろうが」

「それとこれとは話が別でしょ。あんた清真さんのことが心配じゃないわけ?」

 瞬間言葉に詰まる。先週の金曜の朝の後、一日無視するような態度を取ったことが不登校の原因という可能性はあるか。

 いやない。流一は自答した。もしそうならマンバーでもっとよそよそしい態度を取っただろうし、それ以前に清真があの程度で心に傷を負うような繊細な神経の持ち主のはずがない。

「とにかく、俺がどうこうする理由はない。お前が行くっていうなら止めないけどな」

 だが事はそれで終わらなかった。

 結局清真はその日登校することなく、放課前のショートホームルームで永野が告げた。

「清真さんに連絡が付きません。自宅までお伺いするべきかと思いますが、もし個人的な悩みが原因だとしたら、教師の私が訪問するとかえって畏縮させてしまうかもしれません。ですのでまずは仲の良い友人のお見舞いという形を取りたいと思います。どなたかお願いできませんか」

 依頼には筋が通っていた。だが如何せん実態に則してはいなかった。

 清真と「仲の良い友人」などこのクラスにいはしない。

 ──なのになぜ皆俺の方を見る。

 露骨に指を差されこそしないものの、流一への期待(というか圧力)をひしひしと感じた。単なる自意識過剰では絶対にない。その証拠に、流一の前の席の女子までが周りからの視線の煽りを受けて居心地悪そうに首を竦めているほどだ。

「誰もいないようであれば仕方ありませんね、ここは私が」

 永野は微妙に嬉しそうだった。まるで好きな子の家へ行く大義名分を手に入れた小学生みたいに淡い期待が滲み出ている。

「あの、だったら私が! 一応は委員長ですし……その、すいません」

 だが果敢にも手を挙げた生徒がいた。

 頑張って立候補したまではよかったが、途中からどんどんトーンが下がっていき、最後はなぜか謝っていた。おそらくもともと積極的な質ではないのだろう。

 出席番号一番、秋津麻衣子である。初回の日直を割り当てられた流れで暫定的にクラス委員長を引き受けさせられ、そのままずるずると今に至っている。

 仮に内心で失望を感じていたとしても、永野は面には表さなかった。ベテラン教師らしい落ち着いた態度で委員長からの申し出に応じる。

「そうですか、ありがとうございます。では秋津さん、後ほど教員室まで来てください。住所等をお教えします」

 秋津はしゃっちょこばって頷いた。

 終礼が終わり、流一がデイパックを掴んで席を離れようとした時だ。

「織名くん、私と一緒に行ってくれませんか!」

「……どこへ?」

 前の席から勢いよく振り向いた女子に、流一の反応は鈍かった。相手は悲しそうな顔をしたが、わざと素っ惚けたつもりはない。それは秋津にも伝わったようだった。

「清真さんの家です。私、清真さんとお話したことないですし、一人だと不安なので」

 改めて説明される。それなら初めから引き受けなければいいだろう、という当り前の感想は眼鏡の奥の縋るような瞳に出会って止まる。

 冷たくして泣かれても困る。さすがに本当に泣きはしないとしても、押し付けられた委員長なのに頑張って責任を果たそうとしているのだと考えれば助けてやりたくなるのは人情だ。それでもこの件でのピンポイントの指名は素直に受け入れにくかった。

「行ったげなさいよ」

 流一に絡まる屈託を背後からぶった切りにきたのはもちろん穂月である。

「このクラスの清真さん担当は誰が見たって流一なんだから。秋津さん、あたしも一緒に行っていい?」

 もしお邪魔じゃなければだけど、と穂月は意味ありげな視線を向けた。秋津はすぐに承知した。

「もちろんです。織名さんも来てくれるなら嬉しいです」

「オッケー、決まりね。あとあたしは穂月ね。流一も、流一の方がいいでしょ」

「ああ」

「分りました、穂月さん。りゅ……流一くん。つき合ってくれてありがとうございます。よろしくお願いします」

 俺はまだ行くとは言ってないんだが。

 しかし今さら拒否しても始まらないことは分っていた。



 昇降口の外に立って腕組みをした穂月は、決して短くはない沈黙の後、我慢し切れなくなったように口を開いた。

「……どうして君までいるの」

「穂月さんのいる所に俺はいる。風呂だろうとベッドの中だろうといつも傍で見守っている」

「流一、警察に電話して。ここに覗き魔のストーカー野郎がいますって。ああ、やっぱり保健所の方がいいか。きちんと駆除しとかないとまたすぐに湧いて出そうだし」

 だが流一は素知らぬ振りをした。清真の担当が流一だというなら、原の担当は間違いなく穂月である。流一が頼りにならないと覚り、穂月は忌々しげに舌打ちした。

「さっさと練習行きなよ。試合でいきなり四番任されるような期待の大型新人なんでしょ」

 露骨な邪魔者扱いにも原は微塵も揺るがない。

「今日は休みだ。グラウンドが空いてないからな」

「今まさに野球部が準備を始めてるように見えるんだけど」

「だから、日曜の昼みたいに俺達だけで独占するわけにもいかないだろう。二人きりになるにはどこかに移動しないとな」

 穂月の機嫌が急速に低下していく。本格的な雷雨到来も間近と思われたが、教員室に行っていた秋津が昇降口から姿を見せた。

「すいません、お待たせしました。清真さんの家は来島にあるみたいです。駅から歩いて……あれ」

 流一と穂月の他にもう一人でかい図体をした男がいるのに気付いて目を瞠る。

「原くんも一緒に行ってくれるんですか?」

「彼氏として当然の義務だからな。穂月さんは俺が守る」

「はあ」

「秋津、そいつのことはほっといていいから。どうしても邪魔になるようなら穂月が責任持って処理する」

 穂月は流一を睨んだが、文句は言わなかった。

「ごめんね秋津さん、変なのが増えちゃって」

「いえそんな、人数が多い方が清真さんも嬉しいでしょうし」

 原でもか? 甚だ疑問だったが反論するのはやめておく。もしかしたら変人同士で案外気が合ったりするかもしれないし。

 長いこと近くに住んでいたのに来島駅で降りるのは流一は今日が初めてだった。付近の住民には悪いが、西来島のおまけというぐらいの認識しか持っていない。だが地名からするとこちらの方が先なのだろう。

「私この辺りに来たのって初めてです。こんなに大きい家が沢山あるなんて知りませんでした」

 秋津はなかなかの感銘を受けたらしかった。実際にそれだけのことはあり、さらに付け加えるとただ大きいだけではなく古い。まるで寺社や武家屋敷のような邸宅が普通の家並に混じって点在している。

 半ば観光地を散策するような気分で、緩やかに傾斜した道を北へと上り、晩春のぬるい空気にやがて汗が滲み始める頃、四人は坂の終わりの高台へと至った。

「……ここ、みたいですね」

 手にした紙と目の前にそそり立つ門とを秋津が何回も見較べる。

「かなり凄いね。お嬢様っぽいとは思ってたけど、想像以上」

 穂月は半分呆れたように息をついた。

 黒ずんだ分厚そうな木の扉は今はぴたりと閉ざされていた。左右には延々と白壁が続いていて、裏口のような場所があるのかどうかはここからは定かでない。

「入ってもいいんでしょうか」

 秋津ははっきりと気後れしていた。確かに平凡な高校生が通り抜けるにはこの門はいかにも敷居が高い。

 どうするのよというように穂月が顔を向けたが流一だって分らない。

「どれ」

 原が徐に動き出した。軽自動車ぐらいなら跳ね返せそうな扉に両手を付いて、腰を落として足を踏ん張る。

「ふんっ」

 気合一発、鍛えられた筋肉が制服の下でめきめきと盛り上がり、その強暴な力に抗し切れずにさしも頑丈な扉が軋み始める──わけもない。端で眺めていても原が顔を赤くするばかりでわずかの隙間も出来はしない。

「原、その辺にしとけ」

 効果があるとも思えなかったし、まかり間違って本当に開いてしまったらそちらの方がまずいだろう。器物損壊や不法侵入に問われるのはご免だ。それにまさかいきなり銃撃されたりなんてことはなくても、おっかない制服のガードマンや侵入者に襲いかかるように訓練されたドーベルマンぐらいならいるかもしれない。

 原は正門から手を離した。

「やはり無理か。ならこっちで」

 脇に設えられた小扉に向き直り、横のインターホンに指を伸ばす。

 もちろん呼び鈴は押すためにあるものだ。悪いことはないはずだが、しかしここは本当に同級生の住まいで合っているのか。実は裏社会の大物の屋敷だったりしないのか。流一の緊張は無駄に高まる。

「む……」

 不本意そうに原が唸った。スピーカーは沈黙したままだ。チャイムが鳴っているのかさえ判然としない。余りの反応のなさに、そもそも線が繋がっていないのではという気さえしてくる。

 原は仮借のないボタン連打を繰り出し、穂月が慌て気味に後ろ頭をひっぱたいてやめさせた時には、既に軽く三十回は押されていただろう。住人が在宅ならとっくにぶち切れていておかしくない。

「誰もいない、みたいですね」

 あきらめたというより秋津はむしろほっとしたようだった。

「しょうがないですね。待っていてもいつ帰って来るか分りませんし、今日はもう引き上げましょう。もし明日も留守だったら改めてどうするか考えないといけないですけど」

「明日って俺もまた来るのか?」

「それは無理にとは言いませんけど。もう場所も分かりましたし、私一人でも平気かなって」

 秋津はボールを取り上げられた仔犬みたいにうつむいた。ぐっと喉が詰まる。断るのはプロボクサーの左ジャブを躱すぐらいに難しかった。

「お、こっちは開いてるな」

 だがすぐに明日のことを心配している場合ではなくなった。通用口を押し開けた原が、無造作に中に踏み込む。

「馬鹿待てっ」

 制止したところで聞きはしない。

 このまま一人で行かせるのはいかにもまずい。敷地に入るのは正直かなり気が引けたが、あれを野放しにしてもっとのっぴきならない事態を招くよりはましだ。穂月も同じことを考えたらしく、目を見交わすだけで意思が通じる。

「秋津、お前は待っ……」

「はい、行きましょう」

「って……ああ」

 委員長は意外とアグレッシブだった。

 通用口から敷かれた飛び石を伝って原を追う。庭は入園料を取れそうなほどに宏壮だったが、植木の枝が伸び過ぎていたり雑草が生えていたりと余り手入れされていない印象だ。

 やがて大きな平屋建てに行き着く。かなり年季の入った外観だが、その分風格に満ちていて、中世の貴族の館といった趣がある。もっとも、さすがに寝殿造のように幾つもの屋が連なっていたりはしない。

「頼もうっ」

 道場破りさながらに原が呼ばわったが依然応える者はない。

「やっぱり誰もいないみたい」

 秋津が心細そうに呟く。穂月は周りを見渡しながら首を捻った。

「なんか変な感じよね。妙にひっそりしてるっていうか、空き家になって荒れちゃったみたいな」

「頼もぅーっ!」

 原がごつい手で格子戸を叩く。もし安普請だったら打ち壊しかねない乱暴さだが、なおも猫の仔一匹出て来る気配が──いや。

「原、ちょっと静かにしろ」

 叱りつけるようにしてやめさせると、流一は穂月に顔を向けた。

「穂月、今の聞いたか?」

「え、なに。どんな音?」

「いや音っていうか声が……」

 今度はもっとはっきり聞こえた。物が崩れ落ちるような響きがしたのに続いて、小さな悲鳴が伝わってくる。

 流一は即座に原の巨体を押し退けて格子戸に手を掛けた。

 鍵は開いていた。勢い余って扉が全速で敷居を滑り、柱にぶち当たって銃声みたいな音が鳴る。流一が身を竦めたのは一瞬だ。すぐさま足腰に芯を通して玄関の中に飛び込んだ。

「清真っ!」

 さっきの悲鳴は絶対あいつだった。何があった!?

「はーい、少々お待ち下さい。ただ今参りますので」

 奥に駆け出そうとしていた流一の足がその場で止まる。程なく薄暗い廊下を曲がって現れたのは、紛れもない清真蘭子その人だ。

 立ち尽くす流一と、そして後ろの三人に対して清真は一礼した。

「流一、いらっしゃいませ。それに皆様もようこそ。何のお構いもできませんが、どうぞお上がりになってください」

 突然の訪問にも戸惑いや迷惑そうな様子はない。清真は流一に微笑を向けた。

「恐縮ですが、靴は脱いでいただけますか?」

「……悪い」

 自分が土足で屋内に上がり込んでいたことに、流一はやっと気付いた。



 流一達が通されたのは広めの座敷だった。襖で仕切られた十二畳の空間はひどく物が少なくて、調度は部屋の真ん中に座卓が据えられているきりだ。長辺に四人が並んで座ってもまだ余裕があるようなずいぶんと立派な代物である。

「お茶もお出しせず誠に申し訳ございません。昨日からガスも水道も止まっておりますもので」

 清真は客達と向かい合う形で正座した。服はなぜか学校のジャージである。正直余り似合っていない。本物のダイヤモンドをプラスチックの台座に填め込んだみたいなちぐはぐさ。部屋着代わりに使っているのだとしたら余り褒められないが、頭に三角巾まで被っているところからして、何か服が汚れるような作業でもしていたようだ。

「あら、失礼しました」

 流一の視線に気付き、清真が三角巾を取り除ける。途端、美しい黒髪が光の粒を散らしながら流れ落ちる、ということはなかった。飴色のバレッタでざっくりと上に纏められている。それに心なしか髪自体いつもに比べて艶がないような気がする。

「この部屋、ちょっと暗くないか」

 単に光線の加減で翳って見えるだけかもしれない。

「重ね重ねの不調法申し訳ありません。実は電気も止められてしまっているのです。もしご面倒でなければ、後ろの障子を開けていただければ今少し明るくなるかと思います」

 流一の反対端に座っていた原が身を捻り、障子に手を掛けて開け放つ。板敷の廊下を挟んで、ガラス戸越しに夕刻前の緩やかな陽が差し込んだ。

 四人の客に均等に視線を配りながら清真は尋ねた。

「さて、本日はどういったご用向きでしょうか」

 色々と訊きたいことはあった。電気やガスが云々というのはいったいどういう冗談なのかとか。

 だが本来の役目を果たすべく、まずは秋津が話を切り出した。

「急に来てしまってごめんなさい。特に用事があるっていうんじゃなくて、清真さんが三日も学校をお休みして、先生にも連絡がないみたいだからどうしたんだろうって。だけど急病とかじゃなかったみたいですね。安心しました」

 やや緊張気味ながら秋津が感じ良く微笑みかける。清真は丁寧に礼を返した。

「ご心配をおかけしてしまいまして申し訳ありません。ご覧の通り、わたくしの身は息災です。秋津様、皆様、まことにありがとうございます」

「いえ、お礼を言われるようなことじゃないですから! 私一応委員長だし、先生に頼まれたから来ただけで……不純な動機もあったし」

「不純な、と言われますと」

 問われた秋津は目に見えてうろたえた。

「ち、違うんですなんでもないです忘れてください!」

 相手がインコでも通用しなさそうなひどいごまかしっぷりだったが、清真は追求しない。

「そうですか。もしわたくしでお役に立てるようなことがあれば遠慮なく仰ってくださいね」

「えっと……はい、ありがとうございます」

 秋津はおずおずと頭を下げた。身動ぎした拍子に隣の流一と肩が触れ、だがすぐに磁力が反発するみたいに遠ざかる。

「ご、ごめんなさいっ」

「いや別に」

 謝られるほどのことではない。

「で、結局どういう理由で休んでたわけ?」

 穂月がやや強引に本題に入った。清真は淡々と応じる。

「実はここのところ家の中が少しごたごたしておりまして、片付けなどしておりました」

「だからそんな格好してるのか。さっきも何かでかい音がしてたみたいだけど」

「流一を慌てさせてしまったようですね。一所懸命に助けに来てくれようとしたこと、嬉しかったです」

「なっ、何言ってんだ、俺はただ……」

 反射的に否定しようとしたが、この場の全員が目撃していることだ。微妙に白けた空気が流れるのを感じ、取り繕うのはあきらめる。

「まあ怪我とかなくてよかったよ。力仕事でもあるなら、ちょうどいいのも来てるし手伝うけど」

「もうあらかた終わっているので大丈夫ですよ。今は一部残っている父の蔵書の整理をしておりました。数は多いのですが、一冊一冊は軽いものですし、お手を煩わせるには及びません」

「本か。じゃあ分ってない奴が半端に手を出さない方がいいかもな。かえって邪魔になりそうだ」

 流一は助力の申し出を引っ込めた。蔵書の内容になんとなく察しがついてしまった。清真が教室で読んでいたエロ小説は、実は父親のコレクションからの一品だったりするのではないか。しかしこの際そんな穿鑿はどうでもいい。

「大体片付いたってことは、明日からはもう学校来られるのか?」

 質問は単純だった。しかし清真が答えるまでには間があった。いつもながらの雅な笑みが移ろい、薄墨色の陰が差す。

「流一が是非にと仰るのならば参りましょう。短い日々だったとはいえ、ひとたび学恩を蒙った以上、いずれ礼は尽くさねばなりませんから」

「……なんで過去形なんだよ。それじゃまるで」

 流一の言葉を先取りして清真は頷く。

「お察しの通りです。わたくしは連城高校を退学致します」

 学校をやめる? 清真がもう来なくなる。だがそれがどうした。俺に何の関係がある。困りはしない。逆に悩みの種が一つ消えるぐらいのものだろう。

「なんでだよ」

 なのにひどく苛立っていた。

「舐めてんのか? 入ってすぐやめるぐらいなら初めから連城なんか来るなよ。貞女ていじょでもルチアでも、他にもっとお嬢様っぽいとこあるだろうが。庶民の生活に触れるためのお試し企画だったのか? それでもう飽きたからおしまいにするってわけか。それで次はどこに行くんだ。みやこ女子か?それとも海外留学でもするのかよ」

「流一、やめな」

 冷水をかけられたみたいに、流一は背中を固くした。穂月と流一の間に挟まれた秋津が、身の置き所に困ったように縮こまる。

「……ごめん。俺がお前のすることにケチ付ける筋合はないよな」

「いいえ、どうかお気になさらず」

 清真は仄かに笑みを浮かべた。慎ましやかで優美な佇まいは、野暮ったいジャージ姿でいてさえちゃんと名家のお嬢様に見えた。

「ですが一つだけ訂正をさせてください。流一は誤解していますよ。わたくしは退学と言ったのです。転校ではありません」

 流一は咄嗟に言葉が出なかった。代わりに穂月が意味を尋ねる。

「それってさ、つまり」

「はい。わたくしはもうどこの学校にも参りません。家の事情がありますので」

 ──ふざけんな。なんだよそれ。

 危うく吐き捨ててしまうところだった。他人のすることにケチを付けるべきではないと言った舌の根も乾かぬうちに、納得できない思いが沸き上がる。

 こんな歴史的建造物みたいな家に住んでいるぐらいだ。流一のような庶民の想像の埒外にあるようなしきたりやしがらみがあって不思議はない。だがそれは娘を高校にも通わせてやれないほど大層なことなのか。

 まさか嫁にでも出そうっていうんじゃないだろうな。

 くだらない冗談のつもりだったのに、すぐに実際にあり得るかもしれないと思ってしまう。親の同意があるなら女は確か十六歳で結婚できる。

 家の事情ってなんだよ。確かめたい欲求が喉元で引っ掛かる。

「破産か?」

 原が馬鹿なことを言った。穂月がすぐさま咎める。

「原くん、少しは時と場所を弁えて」

「お恥ずかしながら」

「……え?」

 穂月は絶句した。

「当家にはもはや資産がございません。この邸も抵当に入っているのですが、負債の返済期日は既に過ぎました。即ち今のわたくしは他人様の所有地に不当に宿り暮らしているも同然です。本来直ちに立ち退くべきところとはいえ、なにぶん落ち着き先も決まっておらず、先立つものもない状態ですので」

 いくらなんでも悪ノリが過ぎる、と流一は思った。人が心配して、いや自分は秋津につき合わされただけだが、とにかくわざわざ家にまで来てやったというのに、原なんかの戯言につき合ってどうするんだ。

 だが清真には微塵もふざけた様子はなかった。

 確かに筋は通る。

 荒れかけた庭。通じないインターホン。電気が点かない暗い家。マウンテン・バーガーでアルバイトをするお嬢様。

「本当なのか」

 清真は静かに流一を見返し、そしてふいに背後を振り向いた。

「──なんだお前ら。ここで何してる」

 急に引き開けられた襖の向こうに、知らない男が立っていた。短めの髪を剣山みたいに尖らせ、切れ長の眼から発する険しい視線と相俟って、かなりの迫力を醸し出している。これで服装がもっと派手だったり、貴金属のアクセサリーをじゃらつかせていれば、まるっきりどこぞの組織の構成員だが、落ち着いた風合のダークブラウンのスーツだけは案外に品が良い。

 何者だろう。流一達よりだいぶ年上なのは間違いない。しかし中年というにはだいぶ間がある。たぶん二十代、まだその半ばぐらいかもしれない。年齢だけなら清真の兄でもおかしくはない。

 しかし流一には全くそうは見えなかった。顔の造作以上に、纏っている雰囲気がペルシャ猫とシェパード犬ほども違う。

 流一は答えを求めて清真を見た。清真は男に向かって口を開いた。

「失礼ですが、どちら様でしょうか?」

 何だと? その展開はさすがに予想外だ。

 だが驚いている場合ではない。清真が知らないなら、男はこの家の人間ではあり得ない。つまり勝手に上がり込んだ不審者ということになる。

 秋津が半ば無意識のように流一の制服の袖を摘んだ。その一つ隣で穂月が緊張しているのも伝わってくる。原が何を考えているのかまでは不明だが、いざという時の戦力には数えてもいいはずだ。流一達で女子三人を守ることはできる。

 男は不本意そうに鼻を鳴らした。

「確かに失礼な言い種だな。今は俺がこの家の主だ。お前は誰だってのはこっちの台詞だと思うが」

 流一には意味不明だったが、清真には心当りがあったらしい。

「では、白石様のところの方ですか」

 男は座敷に足を踏み入れた。応じて流一が腰を浮かせると、男はちらりと顔を向け、だがすぐに関心をなくして清真の方に視線を戻した。

「あんたが蘭子さんだな。白石エンタープライズの白石善嗣よしつぐだ。ここの管理を任されてる」

 清真は男に正対すると、威儀を改め畳に両手を付いて伏した。

「お初にお目に掛かります。清真家当主清真公親きみちかが長子、蘭子と申します。どうぞ宜しくお見知り置きの程を願います」

 慇懃な口上がさらに続く。

「この度はわざわざのお運び、大変恐縮に存じます。ご迷惑をお掛けしているのは重々承知しておりますが、誓って邸は近日中に引き払います。どうか今暫らくのご猶予を賜りますようお頼み申し上げます」

 白石は暫し清真を見下ろした。

「とりあえず出て行く必要はない」

「なぜでございましょう?」

 面を上げて清真が尋ねる。白石の返答は短かった。

「あんたが俺の婚約者だからだ」

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