第二話

いつもこんなことを考えていると、列はどんどん進み、気づかない内にプレートを手に取ってしまっている。

そうしている内に、そのプレートの上には、次々と食事が乗せられる事になる。

「あらっ、しょうくんじゃないの!」

週に一回は、こういうのがいるんだ。ちょっとした、遊び心のあるローテーション、と僕自身は楽しんでいる。

僕は、軽く会釈をした。

まずは、飲料からだ。いつもの7:3の抹茶ラテが注がれていく。

「どうも、お久しぶりです。」

給食をいれているのは何なのかと疑問を感じた場合は、というのが、一番分かりやすい答えだと思う。

確か正式な名称があったと思うけど、憶えていないのは意味が伝わりづらい名称だったんだろうな。

僕の抹茶ラテは、零れることの無いように、しっかりと熱で瞬間密封された容器でプレートの上に乗った。

その次は、主食だ。前にいる人のプレートを覗く限り、今日の主食は、玄米の入りの米のようだ。

しょうくんったら、いつもマスクと眼鏡を付けていると、整った顔立ちが見えなくて、とても勿体無いわよ!」

人間そっくりの音声、人間そっくりの体。

でも、人間では無い。その証拠に、よく耳を澄ませば僅かな音が聞こえる。

の向こう側では、小松菜のお浸し、少し大きめの納豆、激辛のキムチ、大人気の胡瓜きゅうりと白菜の浅漬けなどの小物類が豊富に並んでいる。並べているのは、キッチンスタッフ用に作られた、ロボットだ。ロボットからロボットへ小物類が渡っていく。勿論、こういうシステムは見えないように細工が施されている。だが、学校で隠してしまうと、子供達が本当のことを知らずに成長してしまう。その為、学校では普段、子供達の為に隠さないようにしている。小物類が僕のすぐ近くまで渡ってきた。僕には食物アレルギーが無いため、ランダムに選ばれた三品が乗せられた。

「そんなこと無いですよ。」

このは、たまに

人間そっくりの身のこなしで、僕に給食を配ってくれる。

「小学校の小さい時から、私のお気に入りなんだから!」

は、給食を入れる合間に、そう言いながら、一度手を振って見せた。

その前後の動作にも、機械ならではの正確さがあった。

「私が、ここに居る時くらいは、きちんとその綺麗な顔を見せて頂戴!」

最後には、太陽に負けないくらいの明るい表情で、デザートを乗せてくれた。



席は自由で、外に出て中庭の様なところのベンチに座り食べるのも良し、この食堂内のベンチテーブルで食べるのも良し。


僕はプレートを置き、いつもの席に座った。


この給食は、個人個人の味の好みや、体質、様々な体調の条件等を計算して作られている。

だから、

残す事などあり得ないし、残飯なんて今ではもう、その言葉もあまり知られていない。


そうやって、僕はサッと食べ終わり、食器洗浄ロボへと運ばれるであろう、返却棚へプレートにのっていた物を返した。あっ、と。抹茶ラテはまだ残っていたな。返却棚の自動ドアが、閉まる前に、僕は抹茶ラテを取り返した。


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