第一話

「惑星・衛星・小惑星と、あと色々、それぞれの違い。小テストするからな〜」

授業終了の機械音チャイムが鳴り、号令が終わるやいなや、全員が、まるで合図があったかの様に片付け始める。

僕は、授業からの解放感を感じながら、机に上に並べてあるだけの物を、気怠気けだるげにまとめた。

立ち上がった僕が、向かう先は、友達同士で固まりつつ、出口に向かっていく集団。

「教科書、プリント、黒板にまとめたやつ、しっかりチェックしろよ〜」

先生の声に軽く耳を傾けながら、可能な限り、誰にも接触や衝突しないように混ざった。

『ねぇねぇ、今日のとこの. . . 』

『あっ、そういえば、今日は行けないって伝えてくれるかな. . . 』

『給食って、何だっけ. . . 』

皆が集まって混雑している扉の前では、誰かと誰かの他愛のない話が、僕の目の前を、あちこちに駆けていく。

だらだらとしか進まない、毎度毎度のこの風景に苛立ちを感じ始めた時、

しょう!」

と、後ろから名前を呼ばれた。呼ばれた方向に振り向くと、りゅうがいた。

先生に何か質問をしていたらしく、ノートや教科書を粗雑に扱いながら、僕の所にやってきた。

「今日、空いてるか?」

「竜!まだか?」

「ちょっと、待てって!」

竜が僕越しに、誰かと会話している僅かな間。

僕は、脳内スケジュールを素早く確認した。

「うん。空いてる。」

返事をすると、竜は、僕を真っ直ぐに見つめて、

「じゃあ、放課後に。じゃな」

「分かった。」

僕に、嬉しそうに軽く手を上げた後、竜は呼ばれた方向に向かっていった。

竜とのやりとりの後、僕は、いつの間にか少なくなった集団に続いて、理科第三教室を後にした。




プラスチック同士の乾いた音

金属特有の耳障りな摩擦音

束縛の無い時間で無駄な情報を、

時に嬉しそうに、時に深刻そうに伝え合う、

様々な人々の音

給食時間は、一番たくさんの音が聞こえる時間だ。


僕は、こんな時間の中でいつも思うことがある。何故、教室から出る時は遅いのに、給食時間となると、こんなにも行動が速くなるのか、こんなにも列がスムーズに進むのか。

僕が、ずっと考えていることは、

僕の考え①

僕が気付いていないだけで、

もしかしたら、

先に給食を取る。後に給食を取る。

この行動が、給食の量に多少の違いが出ていて,

先に取った方が、量が多く。

後に取った方が、量が少ないのかもしれない。

僕の考え②

また、僕が気付いていないだけで、

今日の給食には、何か事件が起こり、

もしかしたら、

給食が足りなくなってしまっていて、売り切れ御免状態になるかもしれないと解っての事かもしれない。

僕の考え③

もしかしたら、

何度も一番乗りで給食を取った者には、

学校側が秘密裏に、何か賞品を与えてくれる。

そんな給食コンテストなるものが、開催されている事を知っていて、皆は、その賞品のため、日々動きが速くなるのかもしれない。


そんなこんなと考えている内に、僕にプラスチックのプレートが渡された。

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