した


「だしてー! ここからだしてくれー! 僕は悪い奴じゃないよアズヲルトンだよー!!」


 それじゃなんの証明にもなりませんよアズヲルトン君。看守さんもあきれてるじゃないですかアズヲルトン君。そんなに喚いても仕方ないのですよアズヲルトンクン。


「なんか、語りが雑になってねぇか?」

―いや、【うえ】を語り終えたらなんか疲れちゃってねぇ。お風呂入ってきたらスイ

 ッチが切れちゃったのよ。

「あーあるよねそういうこと。俺も昔は」

―そーいう話の引っ張り方はやめた方がいいですよアズヲルトン君。大抵そういうの

 はしょうもない先輩の自慢話だって相場が決まってるんですよ?

「そういうもんなのか?」

―さぁさぁアズヲルトン君。一刻も早くここから出てお妃様のところで出向いてくだ

 さい。このままだとこの国のお話が終わらないのです。

「最初からメタ話かよ。ますで聳え立つ糞のようだ」

―何かいいましたよね?

「なんで断定口調なんだ」

―はやくでてー

「看守がこっちみてるのになんでどうやってここから出ればいいんだ。最近流行りなのか流行りじゃないのか作るのに手頃なだけなのか、皆が所望してるのか、実況に向いてるのか、やるのに時間がかからないからいいのか、みたいな脱出ゲームを俺にここで小説を通してやれってことだよな?」

―そうだを。看守の前で実況脱出ゲームだを

「鍵は看守の腰にある。で、俺の前に鉄格子。身体は勿論すり抜けられない」

―あたり前だよ、バカじゃないの?

「いいか、こういう当たり前な事を先に確認しておくことによってな、解決編に入ったときにひらめきが入るだろ。常識を疑った先には大体のミステリーの答えがあるんだから、今言った言葉を一つ一つ確認したり吟味している間に多分牢屋から身体が抜け出せるんじゃないかと思うのだよ」

―なにいってんだこいつ

「つまり俺がここから出れることっていうのは確定事項な訳。だったらその為のブラスをここで積み上げておくひつようがあるってことなのよさ」

―なるなる。でブラフって何?

「……フラグの親戚とかじゃにゃいか?」

―先生ここに知ったかぶりがいまーす!

「わーバカバカやめろ! ここでいうな恥ずかしいだろ! 他の看守とお風呂に入ったときに童貞扱いされるだろ!」



「うっさいぞそこの変態糞ミジンコ減らず口どもが!」


 なんということでしょう。アズヲルトン君の牢屋の前に大きな太鼓腹の制服ピッチピチのあごひげ連結モミアゲゴリラが警棒を持ってずんぐりと登場しました。


「なんだこの糞語り手は! 俺様が腐れゴリラとでもいうのか!」


 ここで何故か怒りの矛先が私に向けられたせいで、私はゴリラに羽交い締めにされ色々とむき出しにされ、色々な辱めを受けるみたいなどこたのラノベのヒロインみたいな妄想をしている暇もないので逃げ出しました。

 その後ろをゴリラ・ゴリラ がものすごい興奮した表情で猪突猛進追いかけてきます。おおこわ。

 私の身体は性別を超越した性別無の身体。たぐいまれなる美貌を持ちながら、両性としての性器、性質を持ち二つの性の安寧を司る女神であるところの私がこんな減らず口の男の相手をなんでしているのか、これは上位世界の神の仕業なのでしょうか。ああ私がなんでこんなところで語り手なんかやっているのか、自分の記憶はどこに言ったのでしょう。アズヲルトンという存在とは一体なんなのでしょう。おお神よ。あなたは私になにをしろというのですか。こんなゴリラゴリラに追い掛け回されて辱めを受けているところに誰か助けに来て物語は進むというのでしょうか。

 

 まさにその通りでございました。私をおいかけてきた看守の主こと、ゴリラは横から飛んできた熱弾によって左方向に吹き飛ばされ、宮殿の奥地にある地下洞窟の壁に衝突し、そこで膵臓を潰し、おなくなりになられました。して、その熱弾を飛ばしたのは、なんとアズヲルトン君だったのです。アズヲルトンはゴリラに追いかけられた私を見て右手から火の玉を出す方法を思い出したというのでした。


「おおっこいつはすごいぞ!」


                       

                          疲れたので、一端休憩…

                      

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

バイバイ、アズヲルトン 雨皿 @amasara_kayahata

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ