第15話 手の目


「たあああああ!!」

 ヒュン! 暗闇が街を包み込む中、少女が刀を振っていた。

 こんな時間なのに、白を基本とした制服を着たセミロングの少女は、目の前のソレに斬りかかる。ソレというのは変な言い方だったか、しかし、人の形のソレは人間ではない。どこをどう見ても人間と遜色ないソレは、ただ一点だけ人とは違う部分があった。

手だ。

 ソレの手のひらには、普通の人にはまずない目玉があった。

 そう、妖怪、手の目だ。

 少女が刀で斬りつけたせいか、血のようななにかが手の目から飛び散る。

 少女は返り血を全く浴びずに次の一太刀を入れる。

「トドメだ!!」

 縦一線、手の目の頭から股間までをスパッと斬る。斬られた手の目が、左右に分かれるより早く、その存在は消えていった。

「はあ、はあ……」

 呼吸を整える。

「これで、八体目」

 少女は呟く、そして刀を竹刀袋に収める。

「あと一体、そうして最後に……戦場大助、そして小守。お前たちの番だ」


「あの、すいません」


「ひゃい!?」

 突然の呼びかけに少女は驚きを隠せない。

「ななな、なんでしょうか」

「いや、なんか一人でブツブツ言ってるから大丈夫かなと思って……」

 少女に話しかけてきたのは二十代後半くらいの女性だ。

「だ、大丈夫です! 失礼しました!」

 少女はその女性から逃げるように走り出して行ってしまった。

「――なんだったんだ? アイツ」

 女性は不審に思いながらも、特に追いかけたりはしなかった。

「まあ、あんなのがいるってことは、今回もまた『出てない』ってことだろうし、最近本当に出てこないな。まあ、平和が一番ってことか」

 女性は「あーあ、また無駄足だった」と言って、自宅――何でも屋『ツバサ』へと帰った。

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