第3話ダイダロス平原の決戦

 勇者一行がダイダロス平原に到着すると、ちょうど目の前で魔王軍と人間達が互いに突撃を開始した所だった。

 ――遅かったか?

 そんな考えが頭をよぎったが、自らを奮い立てアキトは仲間たちに向かい叫ぶ。

 「遅れを取るな!」

 後ろから、オォォォ!……という声が上がる。

 前より応じる声が少なくなった気がしたアキトは後ろを振り返る。

 すると……賢者マーリーンが居なかった。

 ――走りっぱなしだったからついて来れなかったか?

 しかし既に戦闘は始まってしまっている。

 待っている暇は無かった。

 ウォォォォォォ!

 アキト達が突っ込んでいくと魔王軍の先頭に敵の大将らしき影を見つける。

 「あれだ!」

 アキトが叫ぶと、剣聖コジロウが前に出た。

 「……私が……相手をしてやろう……」

 コジロウが異常な加速する。あれは足だけではない。魔法によるブーストがかかっているのだろう。

 彼の姿は残像となり、次の瞬間敵の大将と思われる魔物と剣戟を交えていた。

 ガンッギンッガンガンキンッ……。

 一瞬にして何十合もの打ち合いがされる。

 「やるではないか人間!私は魔王軍大将アダ……」

 敵が名乗りを上げかけた所で、それを遮るようにコジロウは技を放った。

 「……だまれ。……奥義……虚空ツバメ返し……」

 コジロウの放った技は……空間を切り裂いた。

 彼の周囲に魔物が血しぶきを上げて倒れていく。

 だがさすが魔王軍の大将といった所か、禍々しいオーラを放つ大剣でなんとかその技を防いだ。

 「グゥアハッハッハッ!それで終わりか!」

 肩で息をしながらもコジロウを嘲笑った。

 「……あぁ……」

 コジロウは静かに答えると、その長い刀をさやにしまう。

 パチンッ……。

 その刀身が完全にさやに戻った時。

 「ぐぅあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 魔王軍の大将の体の腰から上が横にずれ、大地に滑り落ちた。

 「……他愛のない……」

 開戦早々のいきなりの出来事に、両軍ともに静まり返ってしまう。

 そこで人間側の大将と思われる男がアキトに駆け寄ってきた。

 「勇者様パーティーのご一行とお見受けした。敵の大将は倒れたが数だけで言えば当方が圧倒的に不利。誠に申し訳ないが一刻も早く魔王を倒してはいただけないだろうか?魔王軍の本拠地は北の山にある」

 今敵の大将を倒した一行への対応としては失礼に当たる物言いだが、存外に時間がないのだろう。

 「わかった」


 一言言うと勇者一行は戦場をすり抜け北の山へと全力で走っていった。


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