第15話 潜入ダーク本拠地へ
正義が渋谷駅の改札を抜けた時、ハチ公像の前に英雄の姿を見つけた。
「……」
ゆっくりと近付き、彼の前で立ち止まる。
「……しばらくぶりだな」
かけていたサングラスをずらし、瞳を彼に見せた。
「生きててよかったよ」
そう言って再び正義はサングラスをかける。
「この俺が簡単に死ぬか。ごほっ」
正義はにやりと笑った。確かにその通りだ。この男が簡単に死ぬはずがない。
あれから二年間、正義と英雄はそれそれ単独で全国各地にあるダークの拠点を襲撃していった。だが、たったふたりきりの戦いではなかった。葉加瀬が例の組織へ復帰し、独田と共にふたりをバックアップしてくれたのだ。日本国内ではダークに対するレジスタンス運動が行われており、この組織がその中核となっている。先ほどサービスエリアで正義にメモを渡したのもこの組織の者である。メモにはこう書かれていた。「暗黒の根源を見た。忠犬と共に君を待つ」。
そこで正義は渋谷にやってきたのである。
「……それで」
彼は声を潜めた。
「ついにわかったんだな、ダークの本拠地が」
「……ああ」
英雄は腕時計に目をやる。
「……時間だ」
彼の言葉と共に銃声が鳴った。
「!? 何だ!?」
すると音がした方から大勢の人が走ってきた。
「大変だ大変だ! レジスタンスだ!」
「レジスタンス!?」
思わず動き出そうとする彼の腕を英雄が掴んだ。
「慌てるな」
「何でだよ!? レジスタンスなら、加勢に行かないと……!」
「何だ! 騒がしい!」
その時駅からテシータ達が出てきた。渋谷に常駐しているグループのひとつである。
「向こうでレジスタンスが暴れているらしい!」
そう言ってひとりを残しテシータ達は人々の流れの源へと向かった。
「……よし。ちょっと待ってろ」
英雄はひとり残ったテシータの背後へ近付き、すばやく手刀で首を攻撃し、気絶させた。その間に正義は駅の中を窺う。他にテシータが出てくる気配はなかった。
「……どういう事なんだよ、鈴木」
「言っただろ、ダークの本拠地を見つけたって」
「だから、それはどこに……」
彼の言葉を最後まで聞かずに英雄は再びハチ公像の前に駆け寄った。
「鈴木?」
彼はハチ公像の首輪を右に二周、左に一周、そしてもう一度右に一周回した。
すると、ハチ公像はごごごと動き出し、その下には地下へと繋がる階段が現れた。
「……! まさかこれが……!」
「組織から来た情報だ。その通りだったな。さっきの騒ぎは組織の連中だ。銃声音も逃げてきた奴らも全部な。こうもうまくいってくれるとは思わなかったぜ。田中、お前カンはいくつ持ってる。ごほっ」
「10本だ」
ハロウィン・システムを起動するためのセットアップ・カンは彼が提げているポーチの中に入っていた。
「……俺は5本だ。お互いリミットはほぼ変わらねーか」
「……行くか」
「ああ」
そしてふたりは闇の中へと降りていった。
続く!
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