第12話 奇跡の瞬間

 ふたりは公園にやってきた。幸いな事に人影はなかった。

「よし、ここでいいか」

 英雄はからっていたリュックサックをどさっと下ろし、中からシャンメリーのビンを一本取り出した。そして以前正義の前でやってみせたように、一気飲みを始めた。

装飾げええっぷ!」

 彼の体は光に包まれ、クリスマスクへと変身した。説明しよう! 鈴木英雄はビン一本のシャンメリーを12秒25以内に飲み干す事によってクリスマス・システムを起動する事ができるのだ!

「もはやイルミネーションのイの字も言ってねーじゃねーか……よくあれで変身できたな」

「田中、お前もシステムを起動しろ」

「待ってろ、今から買ってくる」

 正義は公園の入口にある自販機に駆け寄った……うん、これなら大丈夫だ。130円を投入する。

 すると、何と、奇跡的に初めて一度で当たった。

「マジか!」

 とても嬉しかったが、邪身が現れた時に起こってくれたらなあ……と思ったり。

「よ~し」

 彼はプルタブを開け、中身を飲みながら英雄の元へと戻った。

「待たせたな!」

「来い、田中」

「おう! へん!」

「あのー、ちょっといいかな」

「へ?」

 変身の途中で誰かが口をはさんだ。英雄の後ろにふたりの警官が立っていた。一度見た事がある光景だった。

「何だ? 俺に何か用か?」

 英雄は動じずに答える。

「ちょっと署まで来てもらっていいかな?」

「……やれやれ、今度こそやっと菊花章か」

 もうひとりの警官が正義の元へやってくる……ヤバい。

「君」

「は、はい!」

「大丈夫か?」

「は……はい?」

「ケガはないかい?」

「……は……はい!」

 どうやら英雄に襲われそうになっていたと勘違いされたようだ。これは……ラッキー。

「……彼、君の知り合いかい?」

 警官は英雄の方を見て正義に尋ねた。

「いえ! まったく知りません!」

 正義ははっきり言い切った。

「そうか……それじゃ、不審者に気をつけてね」

「はい! 気をつけます!」

 警官は英雄を連行していった。正義はそれをただただ見ていた。権力って怖いなーと思いながら。

 その時、携帯邪身出現報知機が再び鳴った。

〈ジャシンダヨ! ジャシンダヨ!〉

「! またかよ!」

 彼は急いで現場へ向かった。そこで彼の運命が変わるとも知らずに。


 続く!

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