第11話 3年ぶりの再会
アルバイト(解雇)からの帰り道、正義は沈んだ気持ちで歩いていた。
「はあ……また職探しか……」
解雇されるのは今回で五度目だった。理由は全て同じだ。
「……今度は母ちゃんに何て言おうかなあ……」
そして、彼は解雇された理由を母にどう言おうか、考えを巡らせ始めた。
しかし、その思考は思わぬ人物によって中断させられる。
「田中」
誰かが彼の名を呼んだ。
「?」
振り向くとそこには、久しぶりに見る友人の姿があった。
「……お前……鈴木……?」
「三年ぶり……か」
説明しよう。彼は鈴木英雄。正義と同い年で、同じく人知れずダークと戦っている少年である。三年前、正義がまだ高校生の頃に一度出会い、衝突の果てに友情を築き上げたのだ。
「鈴木! 久しぶりだな! 元気だったか?」
正義は数年ぶりに再会を果たした英雄に対し、喜びの声を出す。かなりの変わり者であるが、同じ立場にある者として、純粋にまた会えた事が嬉しかった。
「ああ……まあな……ごほっ!」
「そうか……ドクターもこっちに来てるのか?」
「ああ。というか、俺がそれについてきたって感じかな。何か博士に用があるみたいでな」
「そういや前も何か話した
ドクターとは英雄が起動するシステム、クリスマス・システムを開発した科学者、ドクター独田の事である。正義も詳しくは知らないが、どうやら葉加瀬の元上司らしい。
ふたりは並んで歩き始めた。
「それにしても田中……お前、かなり有名人になってるな。そこら辺の交番に張り紙がされてたぞ」
「間違った方向だけどな……」
「ちっ。うらやましいぜ」
英雄は悔しそうに舌打ちをする。
「……相変わらずだな」
「そういえば、お前、博士の過去について何も知らないのか?」
「え? 何で?」
「いや、ドクターが博士を訪ねる理由がよくわかってないんだろ?」
「ああ……まあ、うん」
確か前おっさんがドクターと会った時に、戻らないとか何とか言ってたっけ……ドクターがおっさんの元上司とか言ってたし、まあ、何となくの事は推測できるけど。
「なら、博士にかつて何があったのかも、お前、知らないんだな。この三年間一緒に戦ってきて」
「一緒に、何だって?」
正義は思わず聞き返した。
「一緒に戦ってきて」
「何だって?」
「……何でもない。とにかく、知らないんだろ?」
「どうでもいいし」
「……」
「……」
「まさか、あんな事が起こるなんてな」
「どうでもいい」
「……不幸な男だ、葉加瀬ひろ」
「どうでもいい」
「……今日のおうし座のラッキー・アイテムはキーホルダーなんだってよ」
「マジで? 俺さそり座」
「……八年前」
「どうでもいい」
「田中」
「ん?」
「俺が見てやるよ、この三年の間にお前がどれだけ強くなったのか。安心しろ、今度は殺そうとはしねーよ」
「……面白そうだな」
正義はにやりと微笑んだ。
続く!
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