第9話 銀行での戦い
今回邪身が現れたのは正義のバイト先のコンビニから徒歩10分程度の位置にある銀行だった。
「はははははははは! 金を出せえ!」
騒ぎの中ヘビ邪身ノーズは銀行員に現金を要求していた。
「銀行強盗か! 新しいパターンだな!」
「田中君! 早くシステムを!」
「わかってるよ! ええと自販機……」
正義は自販機を探しに外へ出た。幸いな事に、銀行から10メートルほどの場所にそれを見つける事ができた。当たりが出るタイプで、ばっちりコ○・コーラ社製だ。
「よし!」
急いで硬貨を投入して、適当にボタンを押した。ガシャン、と缶が落ちた後、数字が動き出す。
「……!」
正義は黙ってそれを見守る。結果ははずれだった。
「だよな!」
めげずにもう一度トライ。しかしまたはずれた。
「何をやってる! 早く当たりを出せ!」
後ろについてきていた葉加瀬が口を出す。あんたが言うな。このシステムを開発したあんたが。三度目にチャレンジする。
「まったく! この3年間何をしていたんだ!」
「それはこっちのセリフだ! あんたこそちっとはシステム改良しろよ! 何やってたんだよ!」
「裁判だ!」
「リアルだな!」
「そしてその結果離婚だ!」
「ひゃっほう! いいおかずができた! 今夜は飯が進みそうだ~!」
今度は当たってくれた。セットアップ・カンが勢いよく落ちてくる。
「よっしゃ!」
プルタブを開け、中身を一気に飲み干す。これでシステムを起動できる。
「よし! へん! し……」
「ださあっ!」
いつものださいポーズに耐えきれずに葉加瀬がツッコんだ。
「3年見続けてんだからいい加減慣れろよ! せめて言い終わってからにして!」
「どれだけ時間が経っても飽きられずに笑わせる事ができるってすごい事だと思うぞ!」
「うるせえ! へん! しん!」
説明しよう! 田中正義はコ○・コーラ社の自販機で当たりを出す事によって手に入るセットアップ・カンの中身を飲み干す事によって、ハロウィン・システムを起動する事ができるのだ! 彼はハロウィン仮面へと変身した!
「よし! いくぜ邪身!」
正義は再び銀行へと戻る。そこではノーズが黒いバッグに札束を入れているところだった。
「待ちやがれ邪身!」
「! 何だ!」
ノーズは正義の声に反応した。
「俺の名はハロウィン……」
「右ストレート!」
「ぶっ!」
決めゼリフの途中でノーズは正義の顔面に右ストレートを打ち込んできた。見事なパンチであったが、特撮ものにおいては反則だ。
「決めゼリフは最後まで言わせるのがお約束だろうが!」
「知るか! 邪魔はさせんぞ、タロイモ仮面!」
ノーズはしっぽを使って攻撃してきた。
「うお!」
正義は避けるが、続けざまにパンチが飛んでくる。これではポーズを決める余裕がない。
「ちっ! こうなったら奥の手だ! パンプパンプパンプパンプパンプパンプパンプパンピパンプパンプパンプバンプパンプ!」
繰り出される攻撃をかわしながら正義は叫んだ。説明しよう! ハロウィン仮面は決めゼリフや技名を叫んだり、決めポーズをとったりする事によって攻撃力が上がるのだ! ハロウィン仮面の攻撃力が上がった!
「ちっ! 二回噛んだ!」
「せこいぞ田中君!」
後ろで葉加瀬が非難する。
「うるせえ! 戦法だっつってんだろ!」
彼はノーズの隙を作るため足をかけた。
「何っ!」
ノーズは大きく体制を崩す。そこで正義はすかさずパンチをくらわせた。
「うおっ!」
ノーズは突き飛ばされた。あれだけ攻撃力を上げたのだからなかなかのダメージを与える事ができたはずだ。
「ここだっ! ハロウィン・ジャンプ! パンプ!」
ハロウィン仮面の攻撃力が上がった!
「必殺! ハロウィン・スタンピング・キーック!」
説明しよう! ハロウィン・スタンピング・キックとは、まずハロウィン・キックをくらわせた後、相手が離れる前に左足でもう一度蹴り、さらに再び右足で蹴り……というように、片足のキックを連続でスタンプを押すように相手にくらわせていく、ハロウィン仮面の必殺技である! ハロウィン仮面の攻撃力が上がった!
「ぐわああああああああっ!」
「みんな伏せろ! できるだけあの怪人から離れるんだ!」
葉加瀬が注意を促した。正義が彼のもとに着地した数秒後、ノーズの体は爆発した。その衝撃で蛍光灯や窓ガラスは割れていった。
「ノ、ノーズ様が……!」
後に残されたテシータたちは困惑していた。自分たちの部隊長がやられたのだ。
「さて、あとはこいつらか……」
正義は拳の骨を鳴らす。
「ひいいいいいいっ!」
テシータたちはおののき逃げていった。
「待て!」
彼は後を追おうとするが、それを葉加瀬が止めた。
「何するんだ!」
「奴らはいい。今の私たちが優先してすべき事は……」
「……はっ!」
正義は周りを見て気付いた。人々はおびえ、体を震わせていた。今の自分は、そんな彼らの恐怖をぬぐい去り、安心させてあげなければならない。小さな子供もおり、泣いているのだ。また、誰かがけがをしているかもしれない。
「……そうだな。俺、敵しか見えてなかった。もっと他に、見なければならないものがたくさんあるのに……」
「わかったのならさっさと行くぞ!」
葉加瀬は正義の腕をぐっと掴んだ。
「へっ?」
「急げ! 警察が来る前に!」
そしてふたりは銀行を急いで出ていった。
続く!
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