第5話 謎の少年現る
正義と葉加瀬が駅前に着いた時、その場はパニックに陥っていた。コウモリ邪身アイとその手下たちが暴れていたのである。
「ケーッケッケッケ! どこだあ、ビタミンかめえん!」
アイはハロウィン仮面の名を叫んでいた。相変わらず正しく覚えられていなかった。
「ハロウィンだっつってんだろ! いい加減名前覚えやがれお前ら!」
生物種を問わず正義はつっこむ。いつになったら覚えてくれるのかダークは。バカなのか?
「田中君! つっこみはいいから早くシステムを起動するんだ!」
葉加瀬が横からそそのかす。
「わかってるよ!」
正義はポケットに手を入れて財布を取ろうとする……が、何もない。
「……あれ?」
「どうした!?」
「……財布忘れた」
「何だって!? 君はこんな時に何をやってるんだ!」
葉加瀬の声は呆れと怒りが入り混じったように正義には聞こえた。
「
すがるように正義は葉加瀬に頼んだ。
「断る!」
しかし彼はきっぱりとその願いを拒否した。なぜ?
「何でだよ! 非常事態だろうが!」
「断る!」
「ちゃんと返すって!」
「断る!」
どれだけ頼んでも葉加瀬は頑としていた。こいつ、ほんとに世界を救う気あるのか。
「損をするのは君だけでいい!」
彼はそう続けた。
「あんた心の奥底で思ってた事普通に言い切ったな! あんたの方がよっぽどダークじゃねーか!」
その時アイが正義に襲いかかってきた。
「うおおおおおっ!」
「うわああああっ!」
しかし、アイの右腕が正義に伸ばされたその瞬間、何者かがその攻撃を止めた。誰かが突如横から跳び蹴りをくらわせたのだ。
「ぐはあっ!」
アイはそのまま地面に倒れた。
「な……何だ……?」
状況を飲み込もうとしている正義の前に、ひとりの少年が降り立った。
「……田中……正義……」
少年は正義の名を知っていた。だが正義は目の前に現れた少年に見覚えはなかった。
「ハロウィン仮面……か……」
彼は正義がハロウィン仮面である事も知っていた。正義は戸惑った。こいつは敵なのか? だが、たった今邪身に攻撃した。では味方なのか。でもどうして俺の事を知っている?
どうすればいいかわからず、正義はただ眼前に立つ金髪の少年を見つめていた。
「……」
彼は黙っていた。ふたりの間に少しだけ沈黙が続いた。
そして、彼は目を見開いて言った。
「英雄はひとりでいい」
「えっ?」
気がつくと正義は腹部に拳をくらっていた。
「うっ!」
痛みのあまりそのまま膝をつく。拳を繰り出したのは目の前の金髪の少年だった。
「な……何すんだよ……!」
ちらりと左に目をやると、アイがテシータたちと共に逃げていく姿が見えた。
「おっ! おい待て!」
アイたちを追おうとするも、少年にすかさず襟元を掴まれ、体を持ち上げられる。
「なっ、何だよっ……! お前の敵は邪身じゃねーのかよ……!」
「ああそうだ。だがお前も邪魔だ」
「いっ……意味わかんねーよ!」
正義は必死に彼の腕を掴み返すが抵抗空しく後方に押し飛ばされてしまった。
「うわっ!」
「英雄はひとりでいい」
少年は正義の方に歩いてくる。
「だから、田中正義、お前を殺す」
続く!
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