第7話 ユニークスキル

「はぁ!?ユニークスキル!?なんで!?どこで!?どうやって!?」

ガタッと椅子を鳴らして立ち上がって大げさな反応をするロータス、それに反応して一気に周囲の人の視線が集まる。

「落ち着けよ」

集まった視線に少しばかり居心地の悪さを感じつつロータスに言うとロータスも視線に気づいて大人しく椅子に座りなおし急に小声で話し出す。

「それ、私以外の誰かに言ったりした?」


「そんな相手いないよ」


「あぁ、それもそうか」

それだけ言うと「ふー」っと長い溜息を吐くロータス


今いるのはロータスが泊まった宿の1階に併設されたレストラン、自警団の訓練所で依頼の完了を報告した後ロータスと合流した後朝食を食べるというのでそれに付き合うついでに成果報告という流れになったのだが、依頼を無事に完了したことと取得したユニークスキルのことについて報告したらこの反応というわけだ、ちなみに洞窟の中で得た白金貨のことを話した時も全くおんなじ反応だった。


「ベル君取り敢えずここで話すのはちょっといろいろまずいからいったん私の借りた部屋に行ってから話そう」

そう言うと、急いで目の前の朝食をかきこむロータス

「そんなに急がなくても…待ってるから落ち着いて食えよ」


「ほががほごふがっががー!!」

口に食べ物を入れたまましゃべるな…。




そうして慌しい朝食を終えたロータスと共に宿の1室へと移動する。

廊下を確認してからドアを閉めてから用心深く部屋の中を調べるロータス、ちなみにこのゲームにおいて宿や自分の家といった場所は権利所有者とその者が認めたプレイヤー以外は入室はできず内部の音や状況を確認したりすることも出来ない(ロータスが言っていたことで、このゲームには街でも戦闘行為等に制限がないため代わりに宿の安全が保障されているということらしい)のでその行為に意味はない、まぁ気分的な問題だろう。



ようやく気が済んだのかゲームシステムを思い出したのかは分からないがやっと椅子に座るロータス。

「ベル君、君に一つ忠告しておくことがある」


「というと?」


「まぁ、これは私が言ってなかったのも悪いんだけど、自分の持ってるスキルやその構成については絶対に他の人に言っちゃだめだ、それがたとえどれだけ信用できる人でも」


「それはロータスにも?」


「ん…まぁこの際私のことはおいておこう、だけどできれば私にも言わない方がいい、何故ならこの手のオンラインゲームにおいて特にこのゲームではスキル構成ってのはイコールそのキャラの強さや特性だからだ、何ができて何ができないのか、どういう状況に強くてどういう状況に弱いのか、そういうものがスキルの構成でわかってしまうんだ」


「わかった気を付けるよ」

そういうと少しだけロータスの雰囲気が緩くなる。

「まぁ忠告はそれだけ、それでユニークスキルってどういうことかな?」


「この流れで聞くのかよ…」


「大事なことなんだよ、それに私がこのゲームで君と戦う何てことはありえ無いし、絶対に君の情報を漏らすなんてことはない」

得意げに指を立てて宣うロータス

「まぁいいけど、それよりユニークスキルってそもそもなんなんだ?」


「そういえば説明してなかったか…まずこのゲームのスキルには基本スキルとして種族専用スキルと職業専用スキルそれに幾つかの種族や職業で取得可能な共通スキルってのがある、これはまぁレベルアップした時に出るものだからベル君ももう知ってるよね」


「あぁ、吸血とかアクロバットとか罠解除とかな」


「そうそう、だけどそっちは今はどうでもいい問題なのは今から説明する方だ、今説明した基本スキルに加えてエクストラスキルとユニークスキルっていうのがある、エクストラスキルは特定のNPCの下で修業したり特殊条件を満たしたときに発生するスキルだ、ベータテストのときから判明してて有名なのは一定以上のダメージを継続して受け続けたときに取得できるリジェネレートと1日の一定以上の死亡によって取得できるリビングデッドだね」


「リジェネレートは名前で何となく効果がわかるけどリビングデッドってなんだ?」


「死亡後2分間ゾンビになって行動できる、まぁかなり弱体化するからあんまり意味ないけど、リジェネレートは予想通り30秒毎に体力が5%ずつ回復していくスキル、まぁリビングデッドの取得の死亡回数もリジェネレートの条件の継続ダメージもそこそこレベルが上がってからじゃないと無理だし狙って取れるようなものでもないんだけどね」


「なるほど」


「それで問題のユニークスキルっていうのはこのゲームで1人しか取得できないスキルのことなんだ、条件も噂だといろいろ有るみたいだけど取得した人が口外するわけもないからベータテスト時に出た情報もスキル名だけかよくてスキルの能力についてまで、それも本当かどうか分からないってものだけど、ネットに上がってる情報だと判明してるユニークスキルは3つで即死無効、金剛、鷹の目、即死無効は一定以上体力が残っている状態で攻撃を受けた場合必ず1%残る、金剛は骨がなんかの金属になるとかで四肢欠損にならないのと格闘時攻撃力、防御力の上昇、鷹の目は詳細不明だけどベータテストのとき戦ったプレイヤーの噂では全方位が見えているような動きだったって」


「なんかすごいようなしょぼいような…」


「まぁ使い方次第って事じゃない?それよりベル君のユニークスキルはなんなの?」


口で説明するとロータスのように長々としゃべることになりそうなので取得したいきさつを話しつつ自分のステータス画面を共有化する。



「な…な、なにこれ」

困惑したように口をつぐむロータス


ロータスは数秒ほどの沈黙の後ガバッと顔を上げるとそんな必要はないのだが声を潜めて言う。

「ベル君、このスキルのことは絶対に人に言っちゃだめだよ、それと残りの薬のことも」


「つってもこの薬は持ってても使えないし売ったりした方がいいんじゃないのか?」


「それもそうなんだけど噂が広まれば街中でも狙われたりするし厄介ごとに巻き込まれるかもしれないからね、今のベル君だとベータテストからやってる人と戦闘になったりしたらかなり危ないし」


「なるほど」


「たしかに早いとこ売っちゃえればそれが一番いいんだけどね、効果もわからないのに1度使うと別の薬剤が使えないってのも結構意地悪だよね」


「一応バランスとってるってことじゃないのか?」


「そんな壊れ性能なスキルとかとってて言われても説得力ないよ」


「それもそうだよな」

二人同時にはぁ…とため息をつき何方ともなく笑う。


「まぁこの話はこの辺にしておいて今日はどうする?」


「んー、金はあるけど遮光ジェルを買ってまで外に出るも用事もないし昼間は訓練所でナイフの訓練するかな」


「じゃあせっかくお金があるんだし装備とか整えちゃえば?私も今日は街でやることあるし、一緒に店回ろうよ」


「じゃあそうするか」


本日の予定も決まりそれ以上話さなければいけないこともないので部屋を出る。

自動迎撃は手に入れたものの結局一度も使っていないので訓練で初めて使うことになるだろう、実際に使ってみるのが楽しみだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る