第5話 防犯カメラに映るのは……

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 俺の首筋にくっきり浮き上がっていた引っかき痕は、次の日にはすっかり消えて、まるで初めからそんなもの無かったのだと思いたくなるぐらい瘡蓋かさぶた一つそこには見当たらなかった。


 俺は自宅の洗面所の鏡を前に、それはもう救いようがないくらいマヌケな顔をしていたが、仕方ないことだった。


 だって確かにこの目で見たのだ。

 コンビニのトイレで、自分の首筋に思い切り引っ掻いたような痛々しい痕があったのを。


 それがどうしたことか、今朝顔を洗った後に、どんな具合かと鏡を見てみれば、そんな痕どこにも見当たらない。

 本当に腫れが引いたとかそんなんじゃなくて、何もなかった。


 これはおかしいことだよな。

 明らかに変だよな。

 というか、首筋の痕が消えたとかいう前に、あの時の言葉に表しがたい体験。

 あれ、なんだったんだ……。


 平井さんが途中から来て何故か俺は得体の知れない苦しさから解放されたが、平井さんが来なかったら、俺。


 どうなってたんだ。


 今まではあまり良くは考えなかったけれど、コンビニのアルバイトを始めてから俺はもう何度も不可思議な体験をしていた。

 風とか、ゴミとか、目の錯覚とか……。

 今まで散々そう思っていたけど、そう自分に納得させてきたけど。


 今回ばかりはこの不思議現象の理由を俺は思いつくことができなかった。


 今夜の仕事まであと十数時間……。


 こぢんまりした部屋を見回す。窓際のデスクには俺がアルバイト探しに普段使っている安物のノートパソコン。


 今日は妹は来ていない。友達と映画を観に行くとこの間言っていたから。


 俺はインスタントのコーヒーをマグカップに淹れて、普段あまり使わないノートパソコンを立ち上げ、デスクトップの画面からインターネットに接続し、一番最初に出てきたGoogleページの真ん中の大きな検索バーにカーソルを合わせて、片手でカチカチと文字を打ち込んだ。


『×県×市 樹海 ニコニコマート』


 エンターキーを軽く押せば一秒も経たぬうちに検索結果が出された。


 ウェブ検索結果、12,300件……。

 うわ、結構出たな……。


 画面のカーソルを下に下ろし、馬鹿みたいに沢山出てきたその結果の中から、それらしい、一番目についたものを見つけて、俺はまずそのページに飛んだ。




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