そして風呂へ
野宿しました。宿代払ってるけど街の中に入れずに野宿しました。狼とかいる草原で、一晩中恐怖で寝れなかったけど野宿しました。もう二度とクソウサギシューティングに夢中になって時間を忘れるなんてしません。嫌いなピーマンも日本ではもう二度と残しません。だから神様、早く朝になって。
***
「お前、何やってんだ?」
そろそろ朝日が昇るかなって時間、やっと門が開いて、出てきた警備の人の第一声はそれでした。
「わははははは。狩りに夢中になって、閉門時間過ぎてからずっとここで待ってたのか!そういう時は、南門はずーっと開いてるからそっちに回れば入れたのにな」
俺の事情を聞いた警備の人は、遠慮なしに爆笑してくれた。しらねーよ!そういう大事なことは閉めた門に書いとけよ!あ、でも俺文盲だった。ダメじゃん!
一晩中、狼の影に怯えてずっと気を張ってたから怒る元気もない。さっさとギルド証を確認してもらい中に入る。キャリーに積んだウサギが入ってる袋はパンパンで、見た目ダンボール集めか、空きカン集めのホームレスみたいになってる。稀に朝早く活動を始めてる街の人がその袋を見てぎょっとした顔を向けてくるが、それに反応する元気は無い。
もうダメだー。さっさと換金して宿に行こう。朝飯食って爆睡しよう。
ギルドまでの道がこんなに辛いのは初めてだ。やっとギルドが見えてきた。さっさと解体小屋へ回る。開いてない。何これ?なんで開いてないの?ギルド開いてるのに馬鹿なの?袋持ってるからギルド入れないし、むしろ物理的にドア通んないし。意味がわかんないんだけど。意味わかんないんだけど!
解体小屋の前でイライラと待ち続ける。一晩待ち続けたこと考えれば、狼の心配が無いだけまだマシだ。ちゃんと神様に対する誓いは実行するよ。もう二度とクソウサギシューティングなんて夢中にならないし、日本に帰れたらすぐアメリカに飛んで就職もアメリカでするつもりだから、日本でピーマンなんか残す以前に食わねーし。
ガラガラっと、シャッターが開く音がして、解体小屋からケミットがあくびをしながら顔を出した。おせーよ!小人は妖精じゃねーのかよ!いい子の見本で早起きしろよ!失格!妖精失格!ミゼットとして生きる価値ねーわ!
「なんじゃこりゃー」
ミゼットの低身長からすると、目の前いっぱい袋になってるだろうから、いきなり目の前にそんなもんがあればビビるだろう。ケミットの焦った声を聞いて少し溜飲が下がる。
「あ、やっと開店ですか。解体お願いします」
「お前、こんな朝早くから何持ってきてんだ」
「いやー、昨日夢中でウサギを狩ってたらウッカリ締め出されちゃいまして。南門が開いてるって聞いたのも今朝のことだったんで、朝に開門するまで待って、やっと着いたところです」
「夢中でって、何匹いるんだ?」
「さあ、それこそ夢中だったんで覚えてません」
「とりあえず確認するぞ。お前らも運ぶのを手伝え!」
解体小屋の従業員総出で袋を小屋の中に移す。解体小屋の中に入れるのも少しギリギリだった。運動会の玉入れの数数える時って、なんであんな面倒なことするんだろうって思うよね。別に個別で数えて報告すりゃいいじゃん。なんでそんなことを言い出したかって?袋の中のウサギの数を数えるミゼット達の行動が似てたから。一匹ずつ取り出しては数え、取り出しては数え、いつまでかかるのかちょっと頭痛くなってきた。ケミットが言うには、取り出して、他のミゼットに渡すまでに状態を確認しているらしい。ダメなものがあればそれは討伐の数になっても解体の素材の数には入ら無いって事だ。
「合計で232羽だな。っていうか、よくこんだけ居たな。ダメになりかけだったのはあったが、一応全部素材として引き取れる。一羽につき50ディナール、解体費用が1割だからー」
「合計で11600ディナール、解体費用が1160ディナールで10440ディナールですね」
「まてまて、今計算する」
さすがに額がデカイので、信用しないらしい。低脳が人のこと待たすんじゃねーよ。この程度の計算、3秒でやれ3秒で。
「確かに、10440ディナールだな。討伐分は5羽で一回分だから46個でいいのか?2羽は半端だから討伐分には入らない」
ずいぶん待たされたが、お金が出てくるとなれば不機嫌もどこかへ飛んでいく。ケミットが慎重に鑑札の山と硬貨を持ってくる。
「10440ディナールだから、金貨1枚と銀貨4枚、それと大銅貨が4枚だな。あと鑑札が46個。転けてぶちまけるなよ!」
硬貨はいいんだが、鑑札が46個は確かに、こけたが最後、集めるのは面倒だ。キャリーの上にジェンガのように積み上げられている。ゆっくり慎重にギルドへ向かう。朝早くギルドへ来ても、解体小屋で時間を取られすぎたのか、すでに朝のピークタイム的な時間だったらしい。初めてこの時間にギルドへ来たが、思った以上に冒険者の数がいる。俺が慎重に鑑札の山を持ってギルドに入った時、どよめきが起こった。まあ、俺もこんなに鑑札を持って入ってくるやつがいたらびっくりすると思う。
難関のギルド前の階段は突破したからあとはゆっくり押していけば大丈夫。確認もせずに空いてそうな受付に並ぶ。
受付が終わり、俺の横を通るたびに、なんだこいつは的な視線を送ってくる。しょうがないとは思うけど、そろそろウザい。早くおわんねーかな。金ができたんだから、さっさと終わらして朝飯食ったあとに風呂付きの宿を探すんだ。
「次の方、どうぞ」
お風呂の妄想でトリップしていると、やっと俺の番になったらしい。受付にいるのは何の因果か、昨日のラテン少女だ。俺のことをかわいそうな人扱いしたのは忘れない!
「あ、どうも」
「おはようございます」
昨日は微妙な雰囲気でそのまま別れたからお互い微妙に顔を合わせづらい。
「討伐達成報告をお願いします」
「朝からですか?」
当然の疑問だと思う。でもね、それもう今日2度目。
「昨日、ちょっと。していただけますか?」
「はい。鑑札とギルド証をお願いします」
受付のカウンターの上に鑑札を並べていく。鑑札って少し厚すぎると思うの。全部机の上に並べたら鑑札の壁で、ラテン少女の顔が見えなくなった。
「あの、数を改めさせていただきますね」
壁の向こうから聞こえてくるから、とってもシュール。
「全部で46個で宜しいですか?」
「はい」
ラテン少女はフラフラしながら鑑札とギルド証を持って奥へ行く。
周りの視線に居心地が悪い。敵意のような視線と、興味深そうにこちらを窺う視線、それに比較的好意的な視線が等分されている。周りを見渡すと敵意の視線は昨日同じ場所で狩をしていた面子で、まぁ納得してしまった。自分の狩場が荒らされたら気分は良くないだろう。でも悲しいことに、ランク的には適切なのよね。残念でしたー。疲れてるけど今日も荒らしに行ってやろうかな。
何てことを考えてると、ラテン少女とサイファが連れだって奥から出てきた。
「先日はどうも」
「ヨシヒサさんは順調のようですね。今回の達成でランクアップ試験の要項が満たされましたので、お知らせいたします。ランクアップ試験はゴブリンの討伐を3回達成することですので、なるべく早く達成してください。それまでウサギの討伐は控えていただけるとありがたいですね」
まぁ、いくらランクは適正といっても今回みたいなことが繰り返されたら問題になるだろうし、当然かー。もうちょっと、敵意むき出しのガキンチョどもをおちょくりたい気持ちもあるけど、このサイファの感じだと遊ぶと本気で怒られそう。残念。
「本当ですか?頑張ります」
「よろしくお願いします。メルティア、あとは頼みます。それでは仕事がありますので、これで」
サイファは受付を離れる前、こっちを見据えて一拍動きを止める。あーこれはあれだね。釘を刺された感じ。ちょっと本気でガキンチョをおちょくるのは諦めよう。残念だけど!残念だけど!そういえば、ラテン少女の名前発覚。メルティアだって。可愛い子は名前まで可愛い。たまにいるけどね。名前負けが著しくて、それだけで殺意が沸くやつ。
「こちらがツノウサギ討伐の46回分の報酬で、920ディナールになります。続いて、ランクアップ試験についてご説明します。ランクFのランクアップ試験はゴブリン討伐の3回達成ですが、その間、素材買取はできますが、討伐報酬は受け取ることができません。ランクアップ試験を受理してもよろしいでしょうか?」
無性にNOといいたい。だって、俺NOと言える日本人だし。でも、さっきのサイファがちょっと怖かったので、ここは無難にYES。君子危うきに近寄らず、美少女もお願いにも気分が乗ればYESMAN!不細工?死ねば?
「それでは、ランクアップ試験の受理をさせていただきます」
そういうメルティアちゃんは少しホッとした表情になる。受理したって言ったのに、ギルド証
更新しにいかないじゃないですかー、状況証拠的に返事聞く前に受理してましたよね!それ!でも、美少女だから許しちゃう!別にサイファが怖いからじゃないからね!
「では、ギルド証をお返しいたします。ランクアップ試験、頑張ってください」
「ありがとう。頑張りますね」
ギルド証と討伐報酬の銀貨と大銅貨を受け取って、カウンターを離れると、敵意むき出しのガキンチョどもを素通りしてキャリーを押してギルドを出る。まだ宿で朝飯が食えそうだから宿に戻ろう。
***
「あ、おかえりなさい」
ほぼ1日ぶりに宿に帰る。1日分の宿と飯代がもったいないから、朝飯だけは絶対に食べてやるんだ。
「ちょっと昨日は用事で帰ってこれませんでした。朝食は大丈夫ですか?」
用事ってのは狼に震えながら、夜通し銃を構えてただけだけどね!
「はい。今日までの契約なんで大丈夫です。あ、チェックアウト前に部屋の確認しますか?」
確か、全部スーツケースに入れてるはずだけど、一応確認していったほうがいいか。
「それじゃあ、朝食をいただいたあと、部屋の確認をさせてもらえますか?忘れ物があるといけないので」
「はい。それじゃ、朝食を運んできますね」
ナイリーネはそのまま、厨房の奥へ入っていき、俺はこの2日間定位置だったカウンターの端に座る。すぐ朝食のプレートが出てきて、先日同様のフルーツ水も付いてきた。このフルーツ水だけはちょっと惜しい。
あっという間に食べ終わって部屋の確認をしたが、部屋の中にはやはり私物はなく、兎狩りに出たままの状態だった。大した感慨もなく、鍵をナイリーネに返し、宿を出る。さらばフルーツ水。風呂を求めて俺は行く!
***
とは言ったものの、風呂がある宿に当てがあるわけでもなく、街の中をぶらつきながら、適当な路地で手持ちの荷物を全てスーツケースに入れて身軽になった。当てもなくさまよっているうちに、広場にたどり着く。こっちに来てすぐ、ギルドと西門、宿の往復の生活だったから、詳しく見たことがない。広場の片隅では、露店が軒を連ねて、蚤の市になっているらしい。それなりに混雑していて、店頭の呼び込みの声が不協和音で耳障りだ。別に今すぐやらなければならないこともないし、冷やかしに覗いてみる事にする。
売っているのは、日用雑貨から農作物や塩、香辛料などの食物、布や皮などの素材などで、店舗を持っていない行商人なんかの販売場所になってるらしい。見て回った感じ、すっごいファンタジィな物がある訳じゃなさそう。でも、醤油や味噌なんかの日本的な調味料は存在しなかった。香辛料を扱っていた店主にそれとなく質問してみたんだが、大豆で作った調味料?は?みたいな対応をされた。
まあ、アメリカみたいに簡単に日本の調味料が手に入っても、日本食レストランなんて基本的に絶望しかないんだから、こっちにあったところで、扱いきれないで謎食を出されて絶望するよりは、最初からないほうがかえって心の平穏が保たれる気がする。自分で作る?袋ラーメンを料理したっていう人間ですよ、俺。食べ専、Eat Only Member略してEOMね。
奥に行くと、フードコートのように料理の露店が増えた。こっちの世界で、露店での買い食いは少し遠慮したいです。グロいオークやネズミが食用だったのは忘れてません。
食欲を刺激する香辛料の香りが漂ってきても、すでに朝食をとっている俺に抜かりは無い。一通り、市場を回って、お客と店主なんかのやり取りを観察してみたが、面倒な事に、値段交渉が当たり前な文化らしい。面倒過ぎる。いざとなれば、言い値で買っちゃってもいいかもしれない。その程度でぐらつく財布ではなくなったのだ。現在の所持金は、金貨1枚、銀貨15枚、大銅貨14枚で合計11640ディナール。日本円にして116万円。ウハウハ。笑いが止まらんねー。
とりあえず、必要なのは依頼に行くときに持っていきたい水筒。今まで街で暮らしてるのに、常に喉が乾いた状態だった俺は何なんだろう。あ、金がなかったからか。あと、財布とちょっとしたポーチみたいなので良いのがあれば欲しい。確かにスーツケースがあれば、不思議パワーで重さもなくなって便利なんだが、いちいち取り出すのは手間なんだよ。
目をつけていた日用雑貨のお店で水筒を選ぶ。この世界の水筒は皮袋がほとんどで、それ以外になると隊商が運ぶような大型の樽になってしまうらしい。しかも皮袋っぽい見た目の癖に元は胃とか膀胱って聞いた時点で本気で遠慮したい。とはいえ、大型の樽を持ち運んだり、それで喉を潤すのも不可能だろう。いや、運ぶのはスーツケースがあれば行けそうな気もするけど。
「うーん、お客さんが求めてるようなのは、魔道具しかないんじゃないかなぁ」
店主のおっちゃんは人がさも贅沢な注文をしてるかのように少し呆れ気味に言う。かさ張らなくて、いつでも美味しい水が飲めて、なるべくなら容量が大きい、軽い水筒が欲しいって言っただけなのに。人をわがままみたいに言うなんて、謝罪と賠償を要求する。具体的には、水筒以外の財布とポーチを半額にすべき。まずもって魔道具って何さ。ザ・ファンタジィな超性能便利グッズか何かですか?わかりません。ギルドで使ってたのはどっちかっていうとコンピューターみたいなもんだと想像してたのに、水筒の代わりになるって意味がわからないです。
「東の大通りにある魔道具屋に行ってみな。魔道具っていってもいろんな種類があるから、実際に見てみたほうが早いよ」
結局、謝罪も賠償も受けることなく言い値で財布代わりの皮袋と腰に付けられる小ぶりなポーチを銀貨5枚で買わされた。許さない!絶対にだ!
「風呂のある宿?南門近くの一番大きい門前宿にあるって聞いたことがあるけど、貴族や大商人御用達の店だから、俺たちみたいな一般人には手が出ない値段するぞ」
日本円にして100万を超える所持金を持つ俺様に不覚はない。お大尽なのである。君みたいなしがない行商人ごときが同列に扱う事など、本来打ち首レベルの大罪悪なのだよ。俺様の宇宙よりも広く、御釈迦様にももしかすると勝っちゃうんじゃないかってくらい慈悲深い心に感謝しときたまえよ。
***
魔道具は俺の想像以上のザ・ファンタジィな超高性能便利グッズでした。高いけど。
「こちらが、魔石を消費して水を生み出す水瓶の魔道具になります。底に魔石をはめ込む事によって、ゴブリン程度の魔石で約100リットル程の水を生み出す事が可能になります。お値段の方は、銀貨20枚程となっておりますが、当店でも売れ筋の商品です」
揉み手で商品の説明をする魔道具屋の店主は、高級そうな身形で、軽くて美味しい水を飲める水筒が欲しいという俺の言葉を聞くと、直ぐに棚に置いてある商品の説明をしだした。水瓶の魔道具はその名の通り、不思議な金属でできた小さいピッチャーみたいな外見をしていて、表面には幾何学模様の彫り込みが入っている。そして、高い!でも、あの鶴瓶を使った井戸の事を考えれば安い、のか?
「私は今冒険者として働いているんですけど、この水瓶以外にも持っていて便利な魔道具ってありますか?」
「そうでございますね、野営を行うにも水瓶の魔道具はとても便利なものでございます。その他にも、冒険者の皆さんですと、発火の魔道具や魔法の小箱なんかをお買い上げ頂くお客様が多くいらっしゃいます。冒険者の方でしたら、魔石も自給自足出来ますので、維持費用はお安くなるでしょう」
「魔法の小箱?」
「はい。こちらの商品でございます」
そういって別の棚から取り出したのは、ちょっとしたクーラーボックスくらいの大きさの箱だ。
「技術的にこの大きさが最大の物になりますが、この小箱の何倍もの体積を収納する事が可能です。おおよそ、この大きさで大振りのリュックの4つ分の荷物を保存する事ができます。ただ、魔石の消費が早いのと、魔石のついたままの魔道具をしまってしまうと魔道具についていた魔石も吸収してしまいます。一番重要なのが万が一内容物が入ったまま魔石の魔力がなくなってしまうと、中から入っていた物が弾けて、入っていた物も魔道具も破損する恐れがあります。ですが、荷を軽くするには最適な魔道具ですので、こちらも大変人気の商品となっております」
スーツケースの劣化版じゃないですかやだー。って事はスーツケースも弾ける未来があるんだろうか?中からキャリーが飛び出てくる未来を想像してしまった。とはいえ、なんだかんだキャリーも使う場面があるので、狩りの際に宿に置いていくといった選択肢はない。スーツケースも魔石を消費して延命する事が可能かもしれないので、後で試してみる事にしよう。
その他、大した物もなかったので水瓶と発火の魔道具を銀貨35枚で購入して店を出る。発火の魔道具は、魔石がくっついたチャッカマンそのまんまだった。包装なんてされてないから、かさばって仕方ない。目に付いた裏路地で人目を避けてスーツケースにしまってしまう。付いていた魔石は結構簡単に外れた。外さないともしかするとスーツケースでも魔石がなくなっちゃうかもしれないからね。そして気づいたらお金が半分近くなってしまった。残り、7640ディナール。金貨を崩したら、銀貨20枚分という銀板が貨幣に存在していることを発見した。まあ、銀貨100枚で金貨をになるとはいえ、ジャラジャラ何十枚も持つのは無理があるだろうしね。たぶん大銅貨の下にもまだ何種類か存在してるんだろうと予想してる。あんまり買い食いとかもしないから小銭にくずす機会もないんだ。魔道具屋にも風呂のある宿について質問すると、南門の方にある山の雲庵という高級ホテルに存在し、一泊銀貨9枚と、とても手頃な値段で宿泊できるらしい。手頃じゃねーよ。むっちゃたけーよ。一泊9万円ってどんなスイートな部屋だよ。でも風呂の魅力には抗えないので、泊まっちゃう。
***
この不思議世界についてまだ3日目。臨時収入があったとはいえ、もうずっと兎狩りしてれば生きていけるんじゃないかと思ってきた。ぶっちゃけ帰る当てを探す方をメインに考えてもいいかもしれない。でも今はそんな事より、風呂だ。
やってきました!魔道具屋店主イチオシの高級宿山の雲庵。随所に装飾が散りばめられた派手な柱なんかがあって、見るからに貧乏人お断りな雰囲気に包まれている。でも今はそんな事より風呂だ!
いつもだったら、こんな貧乏人お断りな雰囲気に萎縮するかもしれないが、今の俺は最高に最強の風呂ハンターだ。
堂々とドアを開け放ち内部に侵入する。装飾華美でありながらも落ち着いた雰囲気のロビーを突っ切ってフロントに直行する。ロビーの中で談笑していたお金持ちそうなダンディなおっさんどもが、闖入者の俺を訝しむ目線を送ってきたが知ったこっちゃない。この俺の風呂道を邪魔立てするなら、容赦はせんぞ!邪魔しなくても、なんだこの貧乏人?みたいな視線がイラつく。生活習慣病で苦しんで死ね!
「ご宿泊ですか?」
「風呂を一つ」
「は?」
「あ、いえ。とりあえず2泊でお願いします」
フロントに立つセバスチャンみたいな執事然としたフロントマンに対して思わず思考が漏れる。ヤバいヤバい。いつもなら外面で完璧に内心を隠し通せるのに、風呂の魅力でうっかり漏らしてしまった。セバスチャンはこれぞ高級店のサービスといった具合に、先ほどの意味不明な言葉などなかったように、温和な笑みで宿帳にサインを求めてくる。フクロウの宿り木亭で氏名を代筆をしてもらった際、ギルド証の名前の位置を確認しているので、ギルド証を見ながら慎重に書き写し、財布から取り出した銀板を一枚添えてセバスチャンの方へ返す。
「お預かりいたします。2泊で銀貨18枚になっておりますので、こちら銀貨2枚のお釣りでございます。朝と晩、一泊につき2回の食事をお部屋まで運ばせていただきますが、飲み物のオーダーは別料金となっておりますので、お手数ですがその都度給仕にお申し付けください。御用の際は部屋に備え付けの鈴を鳴らしていただければ、部屋付きのメイドがなんなり対応させていただきますので、ご気軽にお申し付けください。浴場は予約制となっており、少々お時間をいただきますので、ご希望の場合はお早めにお申し付けください。お部屋までは係りの者がお連れいたします」
いつの間にか隣に立っていた、おにーさんが部屋まで連れてってくれるらしい。さすが高級店だけど、そんなことよりまず、風呂だ。無言で部屋に向かうが、頭の中では風呂という単語がゲシュタルト崩壊しそうなほど溢れてる。うっかり口を開くと俺の完璧な外面が崩れてしまいそう。
「こちらがお部屋になります」
「さっそくで悪いんだけど、お風呂をお願いします」
部屋にたどり着き、鍵を渡して恭しくお辞儀をしてくるポーターにお風呂をお願いする。ポーターに頼むのは品がないかもしれないが、もう十分待ったよ。これ以上待てなんて言われたら、思わずコロンバインみたいな銃乱射事件を起こしちゃうよ。
「かしこまりました。少々お時間を頂くので、従業員がお呼びするまでお部屋にてお待ちください」
そういって、ポーターはチップを要求するでもなく、荷物を置いて出て行った。風呂に対するウキウキが止まらない。チップ文化はなさそうだなーとか、部屋の内装も豪華だなーとか、他のことが頭に浮かんでも直ぐに風呂という単語に汚染される。アメリカとか日本にいるときはそこまでお風呂好きっていう自覚はなかったんだけど、俺って風呂好きだったんだなーと、失って初めて気づく事実。ベット脇に置いてあるソファーに座りながらまんじりともせず待つこと30分。
コンッコンッ
「………っ 、どうぞ」
ノックの音に思わず風呂か!と叫びそうなのを飲み込んで意識して声をかけた。部屋に入ってきたのは、メイドの衣装に身を包んだハーフティーンくらいの女の子。秋葉原のなんちゃってメイド服じゃなくて、肌の露出が全くない本格的なやつだ。白人にしては地味目な顔をしてるけど、風呂でテンションが上がった俺には美少女に見えた。今なら、風呂に連れてってくれさえすればどんな不細工でも女神に見える自信がある。
「この部屋付きのメイドのサマンサと申します。お風呂の用意ができましたので、ご準備がよろしければご案内いたします」
「お願い」
スーツケースから取り出していた着替えを持って立ち上がる。
***
風呂に入るときはさ、誰にも邪魔されず自由で、なんというか救われてなきゃあだめなんだよね。一人で、静かで………断じて筋肉むきむきのマッチョとか白人のくせに貧相な体をしてるガリガリの裸の女に囲まれるなんて許されざる暴挙だよ。風呂に対する。
意識がトリップしている間に、俺の全身はナイフのようなアカスリ器具を持ったむきむきマッチョと、何故か風呂まで付いてきたサマンサとかいうガリガリの不細工女に隅々まで洗われていた。確かにさっぱりとはしたけど、精神的に汚されちゃったよ!
あのあと、お風呂まで案内されて、サマンサが出て行くのも確認せずにまっ裸で風呂に続くドアを開け放った俺は、湯気の中でこちらに笑いかける股間を隠しただけのマッチョの男を見て意識を失った。そして、気づくとマッサージ台みたいな机に寝そべっていて、マッチョの男と裸のサマンサも一緒になって、全身をもみくちゃにされていたのだ。
垢すりと言う名の公開恥辱刑が終わると、汚されちゃった悲しみのこの世の終わりみたいな絶望でまだ半分意識が飛んでいる俺はサマンサに手を引かれて最高目的だった浴槽に浸かることに成功したのだった。
きもちえー。お湯は少し温めの水温で、さっきまでの絶望を忘れさせてくれる。他の人間は少し見苦しい置物かなんかだと思えばいいんだ。俺は何に絶望していたのか。この世はすでに全て愛で満たされていたというのに。ラブアンドピース。全ての災禍は風呂によって解決する。
浴槽の中で腕を取ってマッサージを行っているサマンサとかいう全自動マッサージマシンは、これはこれでいいもんだ。血行が良くなった体を、程よい強さのマッサージがほぐしていく。だが筋肉マッチョ、てめーはダメだ。どう取り繕うと、見苦しすぎるその見た目はこの世の全ての罪悪にもまさる。だから、こっちを見んじゃねー。俺にホモっ気は一切ねーんだって。
マッサージ台の近くに立つ筋肉マッチョがチラチラこっちに目線を送ってくるのを感じて、さっきまでの至福の気持ちが萎えてくる。ちょうど、サマンサによるマッサージもひと段落して体の奥にたまっていた疲れが抜けたところでそそくさと浴場を抜け出した。あの筋肉マッチョのせいで最後の最後でケチがついた。全自動マッサージマシンは今では全自動お風呂サービスマシンと化し、備え付けのタオルで体の水気を取ってくれる。これはいいかもしれない。一家に一台、サマンサ式全自動お風呂サービスマシーン。
っていうか俺今正気に戻ったんだけど、なんでこいつ一緒に入ってんの?そういうお店なの?お風呂介護中に自由恋愛は発生しなかったけどさ。日本でそういう泡風呂のお店は未経験だから、よく知らないけど、女性のお風呂介護って、ソープとかそういうもんなんじゃないの?
まあいっか。ぼったくりの店じゃなければ、追加料金が発生しても現在の所持金で足らなくなるなんてないだろうし。
持ってきた新しい服に着替えて、周りを探すがいつの間にか脱ぎ散らかしたはずの服が無くなっている。サマンサに確認すると、洗濯して渡してくれるらしい。さすが高級店、至れり尽くせりで素晴らしい。サマンサもあのメイド服に着替え終わり、また先導されて部屋に戻る。裸の付き合いをしたはずなのに一切の感情が浮かばない顔、プロですねー。
「それでは、ご用があればお呼びください」
部屋に着くと、さすがに部屋の中までは入らず、ドアの前で大きくお辞儀をして下がっていった。部屋の中でやっと一人になる。こっちのお風呂っていうのが、さっきまでのサービスが込み込みなんだとすれば、確かに高級店じゃなきゃ用意できないだろう。浴槽には蛇口なんてなかったから、多分お湯を作って運んでたんだろうと思う。風呂自体のコストもバカにならなそう。風呂に入ったせいか、喉が渇いた。部屋の中を探すと、さっき魔道具屋で買った水瓶と同じような水瓶とコップが置いてある。そういえば、水筒として使うつもりだったけどそのまま口つけるよりコップかなんかがあったほうがいいかも。コップ以外にもこれから、外で野営するときなんかに必要な道具も揃えなければならないだろう。この街から移動せずに日本に帰る手段が見つかるとも思えないからな。脳内のリマインダにメモる。よく書いたはずのメモが消えるリマインダだが、一応な。
まだ、窓から見える空には太陽があるので、お金を稼ぐためにランクアップのためのゴブリン討伐に向かうか、必要なものを揃えるために市場に向かうか迷う。兎狩りならすぐ行って帰ってこれるんだが、今日のサイファの感じだと本気で買い取り拒否されそう。スーツケースに魔石が必要なのかどうかの実験もしなければならないから、魔物を狩りに行かなければならないんだが、オークのときの恐怖もあるし、森まで行くとなると時間に余裕がなさそうなんだよなぁ。
ゲームだったら、魔物と戦うには装備が必要だよね。武器に関しては銃が強すぎるし、小動物以外にむかって接近戦なんてハナっから考えてもないからいいんだけど、防具はちょっと考えたほうがいいかもしれない。よく考えてみたら、E:ぬののふくで行こうとするのはハタから見なくてもちょっとバカかもしれない。他の冒険者がきてるような鉄製の鎧なんてクソ重いもんは無理でも、今きてるペラペラなTシャツよりは防御力のある装備は必要か。そうと決まれば、今日のところは買い出しだな。
スーツケースを持って部屋を出ると、すぐに隣のドアからサマンサが出てくる。待機部屋みたいなものまであるらしい。
「少し出てきます。晩御飯の時間までには帰るつもりなんですけど、鍵はどうすればいいですか?」
「かしこまりました。鍵はフロントへお預け下さい。お部屋の出入りは私が責任を持って見張っておりますので、ご安心ください。行ってらっしゃいませ」
サマンサのお辞儀に見送られて、ロビーに向かう。ホテルについたばかりの時は風呂に気を取られて気づかなかったが、部屋は3階にあった。どんなに内容量があっても空みたいに軽いスーツケースのおかげで階段を下りるのも楽チン。スーツケース自体の重さもほとんど感じないから、アメリカ留学の際にちょっと奮発していいものを買ってよかった。
ロビーではあいも変わらず、大商人か貴族かっていう身なりのいいダンディなおっさんどもが酒を片手に談笑してる。暇人どもめ。
フロントに鍵を渡すついでに防具屋の場所を聞くと、東通りにあるお店の紹介を受けた。宿を出て大通りを歩くと、どうやら、冒険者みたいな労働者は西、職人関係は東、ハイソな連中は南、と住み分けがされているらしい。大通り以外にも小さい通りがそこかしこにあるが、迷うし危ないから入りません。知らない街で、小道に入るとか平和ボケ日本ならまだしも、海外のどこいったって、危険なフラグにしかならんと思う。アメリカに行ったばかりの時に、LAのダウンタウンで怖い思いをしたのは今となってはいい思い出。友達の体験談とか聞くと、俺なんかはまだ全然怖い思いに入らないけどね。カツアゲされて財布の中の200ドルを惜しんで、暴行受けて治療費1000ドルかかったとか爆笑。
財布はスられないように前ポケット、ポシェットはいざという時にひったくられてもいいように大事なもの入れない。スーツケースみたいな大物は、置き引き以外は案外安全だから楽だね。治安がいいようにみえても、旅行者なんてカモ同然なんだから自衛は必要ですよ。
***
市場で食器類を手に入れるついでにそれらを入れるリュック、テントなんかを購入して、ただいま紹介された防具屋、ナウ。盾とか中世の騎士みたいな甲冑など、見ていて飽きない。来る途中、何件か見かけた他の武器屋とか、防具屋と比べるとここは高級宿で紹介されただけあってちょっとお高い雰囲気。整然と並んだ防具たちは埃一つ被ってない。
キョロキョロお上りさんよろしく観察してたら、カウンターの奥からこっちをじーっと見てるミゼットが見つけた。っていうかミゼット多いな。
「そんなに珍しいもんでも置いてあるか?」
無愛想な店員である。店の中は高級店で品物はいいのかもしれないけど、この店員だけで口コミ評価マイナスだな!
「いえ、どれも素晴らしいものだったので、見てるだけで楽しくなってしまって」
「お、わかるか」
わかるわけねーだろ。ぶっちゃけ現代人に鎧の良し悪しがわかったら、そいつは単なる変人だよ。使い道もないスキル貯めるくらいなら簿記の一つでも勉強しとけ。つーか、なんでこいつ嬉しそうなの?こういう鎧とかに愛感じちゃってる偏愛者なの?気持ち悪いから10m以内に近づかないでください。変態がうつったらどうしてくれるんですか。
「いえ、私自身が物の良し悪しがわかる目を持っているわけではないですけど、とても大事にされているのはわかります」
あんたが物偏愛の変態だってこともな。
「そうなんだ。装備ってのは確かに汚れてなんぼのもんだが、大事にしてやりゃそれだけいざって時にてめーの命を守ってくれるもんさ。そこんところを理解しねーバカもんどもも多いが、にいちゃんはちゃんとわかってるみてーだな。気に入ったぜ。それで、何を探しに来たんだ?見た所駆け出しの冒険者って風だが?」
お前の変態な性癖に理解なんて一欠片もねーよ。同類扱いすんな。そしてちょっとチョロすぎるんじゃないですか?物偏愛なんてマイノリティすぎて友達いないんだね。
「防具を見に来たんです。私には金属の鎧は重すぎるのでそれなりに重くない鎧があれば見せてもらえますか?」
「まー、その体じゃな。重くないってなると、鱗か皮の装備になるが予算はどれくらいだ?」
先ほど細々した物を揃えて残り4532ディナール。大銅貨の下はやっぱり銅貨だった。あと1ディナール以下の賎貨が何枚かあるが、面倒なので数えてない。もしかすると、宿で追加料金が取られるかもしれないのでその分を残して、となると予算は銀版2枚の4000ディナール程だろう。防御は予算を聞いたミゼット店主は奥から、日本の戦国時代の農兵が着ていそうな鎧を抱えて出てくる。
「キングリザードの皮を使ったハードレザーの鎧だ。少し重いが皮自体よく粘るし、表面の鱗は斬撃に対しては金属並みに強い。衝撃はどうしても通しちまうが、心臓なんかの急所には金属で補強もしっかりしてるから革製の防具の中では一番のオススメだな。本当はもう少しするんだが、ニイちゃんなら4000でいいぞ」
恩着せがましく予算ギリギリを出してきやがった。でも、カウンターの上に乗ってる鎧は金属の鎧と比べると軽そうだし、カウンターに置いた時の音は金属のように硬かった。偏愛仲間と思ってるんなら、騙そうとはしないだろう。買ってもいいかもしれない。また金欠になるけど。
「試着は大丈夫ですか?」
「ああ。ちょっと待ってろ。ドワーフの俺じゃ難しいから、奴隷を呼んで手伝わせる」
ちょっと待て、急にいろんな情報をぶち込んでくるな。ミゼットかと思ったら、ドワーフだとか抜かし出したよ。遺伝子異常じゃなくて別種族のピグミーみたいなもんだったのか。それならこんだけ溢れてても不思議じゃないのかもしれない。そんなに多くて差別が無いのが不思議だけど。そして極め付けは奴隷ですか。っていうかいるんだ、奴隷。別に人道派でも人権至上主義でもないから俺と関係なければどうでもいいや。
「待たせたな。こっちに来てきてくれ」
店主ドワーフが連れてきたのは俺よりちょっと年嵩の男だった。奴隷っていっても別に粗末な衣服を着てるわけでもペットみたいな首輪をしてるわけでも無い。奴隷って言われなきゃわかんなかったな。その男に手伝ってもらいながら鎧を試着する。アジャスターを調節して体ぴったりに合わせる。ドワーフの言うことには、少しでもたるみがあると、いざ攻撃を食らった時にズレたりして怪我の原因にもなるとか。
鎧を着てみた感想は、皮っていう割にはそれ程重くも無いし、動きが阻害される感じもしない。それでも、店主が結構な強さの拳で殴りつけてきても平気なくらい防御力もある。
「どうだ?」
「これはいいですね。時間をかければ次からは一人でも着れそうですし。手入れみたいなのはどうすればいいんですか?」
別に物偏愛なわけではないが、それなりに値段がするもんだから長く使うためには手入れは必要だろう。
「基本的には汚れをきちんと濡れた布で拭き取って、乾いてからオイルを塗っとけばいい。しっかりしたメンテは素人には無理だから、たまにでいいからこの店に持って来い」
「わかりました。布は市場で買うので、オイルがあればそれもいただけますか?」
「ああ、布も腐るほどあるからオイルと一緒に大銅貨5枚でつけてやる。それでいいか?」
「はい。それでお願いします」
銀版2枚と銀貨を出し、大銅貨5枚を受け取る。店主ドワーフはルットナーと言う名で、この防具店の店主兼職人だと自己紹介され、こちらも名乗ったあと再来を約束をしてから鎧を着たまま店を出た。ココ何日かで俺の出で立ちもこっちの世界の一端の冒険者に見えるようになった。まぁスーツケースを引いているのは少し異様だが。しかし、昼間まで大金を持っていたはずが所持金が482ディナールまでまた一気に減ってしまった。早めにランクアップを済ませないと、また風呂無しの生活に戻ってしまう。明日は朝からゴブリン退治だ。宿に帰って鎧を脱ぐのに四苦八苦して結局サマンサに手伝ってもらい、晩飯をいただいてから明日に備えてすぐに就寝した。
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