第19話

 雨が降っていた。


 テントの横にちょこんと待機するTA999。


 テントの中で文庫本を読む北畠。雨の音と、ページをめくるかすかな音。


 12の目のうち2つをテントに向ける。


 しばらくすると別の方向へと向けた。


 そこには同じく雨宿りする鳥がいた。


 鳥は鋼鉄の蜘蛛には興味がないらしく、ただぬれた羽を揺らしていた。




 湖の湖畔では大変な事になっていた。


 夏休みのど真ん中だ。


 TA999のルートはおおまかにあらかじめ報道されている。


 だがヤマト工機の宣伝をかねたこの旅ではこういう騒ぎもしかたないことだ。


 イカ焼きの香ばしいにおいが観光地だと主張している。


 TA999は喋れない。


 だが誰が命令したわけでも、教えたわけでもないのに子供達と当たり前のように遊んでいた。


 子供達も当たり前のようにTA999に乗ったり叩いたりして遊んでいた。


 今日はヤマト工機からキャンペーンガールがトラックでお手伝いに来ているのでやることのない北畠。


 ただあつい太陽をまぶしそうに眺めていた。

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