Scene6   男のひとも女のひとも、みんな仲良くしないとダメだよ  sight of マユスィー






まえがきに代えた

 少女趣味が嫌いだという人向き Scene6のあらすじ


CAST

 《マユスィー》  《クリス》  《境夜》  《レイジ》  



天然主人公一人称の少女小説風です。




アヤサ村は、色々変わった。

でもクリスはツンデレのままだった。

マユスィーも、天然のままだ。

村の若衆頭はレイジという名前だと忘れられてました。

みんな、笑いました。





注意事項



●マユスィーはただの天然であり、実は腹黒キャラだったりはしません。


●異世界出身のキャラなので、マユスィーは現地語で語っていると考えてください。


●《》内の単語は、日本語として発音されています。


●《》内の単語は理解しているものは普通の日本語表記です。


●《》内の単語で理解していないものはひらがな表記になります。


●桜花芳神は普通の剣術の技で、衝撃波を飛ばしたりはしません。





 





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Scene6

  男のひとも女のひとも、みんな仲良くしないとダメだよ  sight of マユスィー

 

 





 境夜さんが来てから、村はいろいろ変わりました。

 初めは驚いたり、境夜さんが悪いひとじゃないかと心配したひともいたけど、今ではクリスちゃん以上に頼りにされてます。


 《魔境の森グヴァルー》から出て来るコワイ魔物が入ってこれないように大きな御堀と《こんくりーと》の塀が村を囲いました。


 防衛戦略がどうとか、対軍施設としてどうとかで、それだけが理由じゃないってクリスちゃんは言うけど、マユスィーには難しいことは解らないのです。


 でも、境夜さんの魔道具がスゴイのは判ります。

 《ぶるどーざー》とか《しゃべるかー》とか、建築機械っていう種類の魔道具を使うと、何百人ぶんの仕事が一人でできるのです。


 使い方は難しいけど、境夜さんの教え方が上手なので、みんな直ぐに覚えられました。

 でも昔の建築機械は、もっと難しかったらしくて専門家が操っていたのだそうです。


 《こんぴゅーたー》を使って、境夜さんがそれを誰にでも動かせるようにしたんだって、クリスちゃんが言ってました。


 そのクリスちゃんとわたし極東の剣は、境夜さんのおうちにお引越ししました。


 秘密結社の活動は秘密の場所で行うからだって、クリスちゃんは言うけど、ホントウは、《えあこん》とか《でーぶいでー》とかの魔道具があるからで、何より、毎日、お風呂に入れて綺麗なのが嬉しいみたい。


 前は頑張っても何日かに一回しかお風呂を沸かせなかったけど、太陽や地熱や風の力を使って魔道具を動かしているので、お湯はレバーを回すと簡単に出てくるのです。


 アラビア数字っていうのを覚えたので、お湯の温かさも変えられます。

 このおうちの魔道具は、スゴクてマユスィーは、驚きっぱなしなのです。


 このおうちを設計したのは、境夜さんで、境夜さんが発明した魔道具でいっぱいなんだとクリスちゃんが説明してくれました。


 世界を変えるような発明を、境夜さんはいっぱいしているんだそうで。

 世界を変えられるスゴイひとだから《ラスボス》なんだそうです。


 難しくてよく解らないけど、それが解るクリスちゃんも、スゴイとマユスィーは思うのですよ。


 土地代の代わりに魔道具を借りて、村を広げると決めたのも、長老さん達を説得したのもクリスちゃんなのです。

 

 お堀は、離れた川から水が引かれているので、釣りもできて村のみんなは喜んでいます。


 川に棲む魔物が入ってこれないように堰を造ってるので、安心して水浴びもできるのです。


 畑は今までの何倍も広がって、村のみんなに配られました。


 境夜さんは、学園というのを造って、咲夜さんが先生になって、子供達が運動する運動場も造りました。


 若衆の人達もスキルの練修をしたいっていうので、修練場も造りました。


 今日は、修練場のお披露目なので、境夜さんと若衆頭さんの訓練を若衆の人達や子供達と一緒に《極東の剣》のみんなと見に来たのです。



「スッゲースキルだったな、今の! 初めて見たぜ!!」


 境夜さんの剣の一振りで倒されてしまったのに、若衆頭さんは、大きな声で楽しそうに聞いてます。


「院流奥義、桜花芳神。スキルではなくて我流の《わざ》だよ」


 境夜さんの方は、静かだけどよく通る声で答えて、微笑わらってます。


「スキルじゃなくて、ワァザァ?」


「ああ、人の個性として体と心に刻み込まれた技が、生き方そのものとなり、意志や心の在り方と切り離せなくなったものという意味を持つボクの国の言葉だ」


「なんか、難しいな」


 若衆頭さんが、ホントに難しいなって顔をしてます。


 マユスィーも、境夜さんに色んな言葉を教わりましたけど、境夜さんの国の言葉は難しいものが多いのですよ。


 マユスィーは頭が良くないので直ぐには解らなかったけど、境夜さんがゆっくり教えてくれるので、色々と日本の言葉を覚えました。


 若衆頭さんも考えるのは得意じゃないけど境夜さんの言う事なので真剣に考えてます。


 若衆頭さん、初めて境夜さんに会った時は、ヘンな格好の胡散臭いやつだーって怪しんでたのに、今では境夜さんが大好きなのです。


 クリスちゃんは、男たらしっていうけど、男のひとも女のひとも若いひとも御年寄りのひとも、今ではアヤサのひとは、みんな境夜さんが好きだから、人たらしじゃないかなあ?


 そういったら、クリスちゃん、「何そのヒデヨシ? あれはラスボスのカリスマよ」って言ってたけど、アレどういう意味だったんだろう?


 マユスィーは、クリスちゃんみたいに頭が良くないから、日本の言葉じゃなくても、難しい言葉は解らないのです。


 でも、境夜さんと咲夜さんは、そんなクリスちゃんの言う事も、みーんな解ってるみたいで、スゴイなあ。


「スキルじゃないのに、あんな真似ができるんだなあ」


 そんなことを考えてたら、若衆頭さんも、境夜さんに感心してました。

 何でもできるクリスちゃんと境夜さんは似てるのかも。


「何あれ? アタシの時とは態度が大違いじゃない!」


 でも、そんな風に仲良くなった二人を見てたクリスちゃんは、御機嫌ナナメなのです。


「態度って?」


「アイツよ! 前にあたしに負けたときはズルしたとか、何とかイチャモンつけて不満たらたらだったじゃない」


 そういえば、若衆頭さんとクリスちゃんは、クリスちゃんが《極東の剣》を作るって言ったときに、力試しをするってことになって試合をしたのでした。


「でも、あれは、しかたないんじゃないかなー」


 クリスちゃんは気づいてないけど、若衆頭さん、クリスちゃんを好きだったから。


「負けたら俺の女になれとか言って、負けたからって不貞腐れるようなやつのくせに、何であんなイイ顔して負けを認めてるのよ! 男に負ければ相手を認めるのに女だと認められないっていうの!? これだから男ってのはっ!!」

 

 うーん……これは言っちゃだめかなあ。


「だいたい、俺の女ってのが気にいらないのよ。あたしはあたしのものよ。ああいうのに限って、処女じゃなきゃビッチだとか言って女の人格を認められないのよ。恋と欲情が同じで愛と所有欲が同じだって疑いもしないタイプね」


 クリスちゃんは、男のひとには、ちょっとキビシイのです。


「男のひとっていうのは、そういうものだってお母さんがいってたよ。それに、境夜さんは勝ち負けを決める試合じゃなくて訓練だって言ってたから」

 

「そういう甘やかしが男をつけあがらせるのよ……でも、まあそういうことなら話は解るわ。アイツ等は面子とかに異常にこだわるから」


 そう言ってはいても、クリスちゃんの御機嫌は直っていないみたい。


「でも境夜さんは威張ったりしないし、そういうのは気にしないんじゃないかなー」


「あのね、マユスィー。 ラスボスを男と一緒にしないで。人間かどうかも怪しいレベルなのよ、アレは」


「よく、そう言われるけどボクはただの人間だよ。スキルなんて力も魔法も使えないね」


 いつの間にか、ホントにいつのまにか境夜さんがいて、話に加わってきます。


「ふえー、マユスィー、驚いたのです!」


 驚いて、思わず声が出てました。


 クリスちゃんも驚いたみたいで、あたふたしてます。


「驚かせたようで、ごめん。マユスィー、クリス」


 境夜さんは、謝りながら、わたし達の顔を見て微笑わらいかけてきます。

 大人の男の人なのに、笑顔だけは子供みたいに邪気がありません。


「ホント、驚かすんじゃないわよ! 訓練はもういいの?」


 クリスちゃんは、ぷいと境夜さんから顔をそらします。


 怒ってるわけじゃなくて、たらされないようにするんだそうだけど、でもホントは照れてるんじゃないかと、マユスィーは思うのです。


「ああ、もう終わったよ。レイジが、君達を呼んできて欲しいって言うから迎えに来たんだよ」


 レイジ? ──────若衆頭さんの名前でした。

 マユスィー、うっかり者なので忘れてました。


「何それ? 話があるならこっちに来ればいいじゃない」


「ああ。そうじゃなくて、クリスとマユスィーにも一緒に訓練に参加して欲しいってことだよ。直接誘うのは、恥ずかしいらしいね」


「くだらない! あいつらと訓練しても、今更得るものなんてないわ。何で汗臭い男どもと一緒に、そんなことしなきゃならないのよ!?」 


 クリスちゃん、男のひとが嫌いだからなあ。


「何故、そうしなくてはいけないのかかい? そうだね──人という弱い生き物は、子供の頃は誰でも誰かに頼って生きていくしかない。子供は、やがて一人で色んな事ができるようになって成長していく」


 あれれ? 境夜さん、クリスちゃんが本気で聞いてるんじゃないってことにきづいてないのかな?


「けれど大人になって一人でできる事には限りがあるのだと気づく。そしてただ誰かに頼るのではなく、助け合って生きていくことを覚えるんだ。クリスはその事を知ってるはずだよ?」


「何それ? 説教なの?」


 境夜さんがスゴク大事な事を言ってるのに、御機嫌ナナメなクリスちゃんは、聞きたくないみたい。


「いや、ボクは今まで、クリスがやってきた事の手助けをしたいだけだよ。ここを、みんなの力でみんなが安心して暮らせる場所にするんだろ?」


 境夜さんが、そう言って、わたしのほうを手伝ってっていうように見てきます。


 そうなのです。

 クリスちゃんは、今まで頑張ってきました。

 

 若衆頭さんとは色々会って、ウマクいってなかったけど、これはチャンスなのです。

 クリスちゃんは、いつもチャンスは逃しちゃいけないって言ってます。


「クリスちゃん。男のひとも女のひとも、みんな仲良くしないとダメだよ」


 でも、マユスィーは頭がよくないので上手にしゃべれないのです。


「マユスィー」

 

 でも、クリスちゃんは、わたしの言葉に振り向いてくれました。

 クリスちゃんは、いつも判ってくれるのです。

 

 境夜さんは、黙ったまま嬉しそうに微笑わらって、そんなわたし達を見ています。


「ああ、もう! くやしいなあ。何で、あたしが何年もかかってできない事を、あっさりとやっちゃうのよ」


 クリスちゃんが、今度はそんな境夜さんのほうを見て言います。


「ボクがしたのは、あくまでもクリスの手助けだよ。それがたまたまボクにできる事だったからね。誰かの手助けをするのはボクの趣味みたいなものだって言っただろう」


 そんなクリスちゃんとわたしに、境夜さんはホントに楽しそうに微笑わらいかけます。

 

「誰かにできない問題ことがあって、誰かにできる問題ことがあって、誰かにしかできない案件ことなどはなく、けれど誰かにしか巡り会えない案件ことはある。ボクは、ただ巡り会っただけだよ」


 境夜さんは異世界から来たんだそうです。

 だから、こうして巡り会ったのは奇跡だと言ってました。


 だからなのかな?

 境夜さんが、いつも優しいのは。


「ったく、何でもできるラスボス男に言われたくないわね。でも確かにこれはあたしの問題だったわ。ありがと、マユスィー、思い出せたわ」


 クリスちゃん、またプイって境夜さんから視線を外して、わたしに微笑わらいかけてくれます。


「そうだよ。クリスちゃんが頑張っていたからだよ」


 わたしは、あいかわらずウマクしゃべれなくて、ただ微笑わらい返しました。


 こうやって、笑顔が広がっていくのが、今のアヤサ村です。

 









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あとがきに代えた

次回予告


 



 わたしは咲夜。

 今日も、アヤサ独立自治領は平和です。

 

 けれど…………


「あー、やっぱりポテチにはコーラよねー」


「クリス、最近だらけすぎじゃないかい?」


 そうですね。境夜さんの言うとおりです。


「休暇よ、休暇。独立自治領の承認も得たし、16年も未開の異世界で頑張ったんだから、1ヶ月くらい骨休みしてもいいでしょ! ああ、文明サイコー」


(姉御が干物女になったんですけど-!?)


「クリスちゃん、クリスちゃん! あのテレビの女の子、スゴイかっこだよ。恥ずかしくないのかな」


(マユスィーがテレビっになってるんですけど!?)


 どうやら、行き過ぎた物質文明は人を堕落させるようです。









次回

Scene7

  最強の大罪、その名は怠惰  sight of 咲夜

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