4


 一度に放たれる弾丸は十発。幾億の開発を繰り返した人間が、僕に取り付けた最新型であり最終型のそれは超高速で弾を打ち出す。


 飛んでいったと認識した次の瞬間には、彼女の急所を貫き、文字どおり全部を終わらせる。


 魔法使いの体から流れ滴る血の色が、彼らの降伏の印となり。


 人類が勝利する。


 途方もない歳月をかけて繰り返された大戦に、ピリオドが打たれる。


 ――。


 はずだった。

 確かに。そう、確かに僕が放った弾丸全てが彼女を襲った。彼女の柔らかそうな、白い体にのめり込み、肉を抉り貫通する。はずだった。


 そうなるに決まっていた。だというのに。


 気がついた時には――なんと鉛玉は僕を襲っていたのだ。

 あまりの出来事に反応が遅れて、一発目、二発目は胸部と右脚のつけ根に受けてしまった。三発目は左袖を掠め、四発目は頬の真横をすり抜けた。残りは変則的に、そしてバラバラの方向から飛んできたものの、それをかわし、弾は壁や床にそれぞれ被弾して煙を上げた。


 なんだ、今のは――。


 なにが起こったか瞬時に理解できなくても、弾丸がどうなったかは把握できる。弾を……弾かれた……?


 だが、どうやって。


 目で見たものを巻き戻し、スロー再生しても解析できない。彼女はそんなことをする素振りなんか見せてなかったし、第一あんな速度で、なおかつ複数ある弾丸をこちらに打ち返すなんて。そんなのあり得ない。だけどまだ驚いちゃいけない。これはほんの一部。


 想定外の出来事はまだ続いていた。


 僕が人間だったなら、きっと絶叫して飛び上がっていたところだ。だってすぐ目の前にいた彼女が、こつ然と姿を消して。


「いやあ、びっくりした……死んじゃうかと思ったよ」


 今、僕の斜め後ろにいるのだから。

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