容疑者②、比江

2人目は、被害者のすぐ真下の部屋の住人だった。日江という男性だ。

「殺人事件について何か知っていることはありませんか?」

「シッテルヨ!オイラ、ソイツ、シッテルヨ!」

生きている感じの全くない、高い声で日江は叫んだ。大家さんによると、ふざけているわけではなく、いつもこれらしい。

顔を白く塗り、目元は黒く染め、口周りに真っ赤な大きい口を書いている。ナイフをポイポイとジャグリングしながら彼は続けた。

「オイラガセッカクトクギヲヒロウシテルノニ、アイツハミムキモシナインダ!マッタクヒドイハナシダロウ!?」




「決定的でしたね。」

「何がだい?」

「今回の殺人事件。凶器はナイフ。そしてさっきナイフでジャグリングしてました。動機もありそうですし。狂気が見え隠れしてますし。」

「ははっ。凶器と狂気でかけたワケか。うまいが、割と古典的だぞ。」

「そんな話をしてるんじゃありません!」

「だから言っているじゃないか。決めつけるなって。ただのジャグラーかもしれないし、浪人生かもしれないし、経済学者かもしれないし、ランプの精かもしれないじゃないか。」

「……」

この人は、もう手遅れなのかもしれない……と思いながらも、私はこの後脳外科医に連れて行ってみることを決意した。

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