容疑者①、白岳
鑑識さんが、容疑者が3人いるからその人達を見ていってほしいと言うので、会ってみることにした。
1人目は、被害者の隣の部屋に住む、白岳という男だった。
「こ、こんに、こんにちは、は。あ、あああなたはああ、けい、けいじ、さ、んです、か。」
痩せ細った男だった。30前後だ。薄汚い服を着て、これまた薄汚いズボンを履き、極めつけに薄汚い帽子を被っている。少し離れていても臭いがしてくるし、話し方も気持ち悪い。
「いいえ、私達は探偵です。草辺と申します。」
「たた、たんて、い、さんか。め、めずら、めずらし、いなまえ、だな。」
「隣の部屋の殺人事件について、警察にも訊かれたとは思うのですが、私達にも話してくださいますか。」
「あ、あ。わかっ、わかった。ひ、ひっこして、きて、きてから、いちどはあ、あいさつし、に、きてくれたん、だけ、だけど、さ、さいしょ、のひ、からはみなく、みなくなっ、て、あとは、しら、しらない。」
「そうですか。ありがとうございます。」
こういう所はさすがプロの探偵。礼儀正しく話を聴いている。
「先生、その……怪しくなかったですか?えっと……凄く。」
「こらこら芦洲くん。決めつけはダメだぞ。あの人は確かに犯人かもしれないし、本当の第一発見者かもしれないし、もしかしたら政治界の黒幕かもしれないし宇宙人かもしれないけれど、でも決めつけは良くない。」
宇宙人説が1番信じられる気がした。
「大家さん。んっと……あの人はいつもああなんですか?」
「ん?...ああ、あの隣の白岳さんね。ずっとあの調子だよ。もうすっかり慣れたけどね。」
「そうですか……」
「4、5年も世話してたら、あれくらい誰でも慣れてくるよ。」
私もいつか草辺先生に慣れてしまうのだろうか。と考えると恐怖を感じた。
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