「むやみに動かないで下さい。」
一旦おちついたので、ちゃんとベッドに寝かせて事情聴取を受けさせる。でもその前にお説教。
「だから、イルカさん。あなたは生きているのが不思議なくらい死にかけてたんです。むやみに動かないで下さい。」
「いや、俺はこれから仕事がある。急がねば上司に怒られる。」
はぁ?あんた仕事どんだけ大事なの?仕事人間なの?徳田先生か?徳田先生なら許すけどちがうでしょ?
もちろん、これは声には出していない。
「仕事は今はいいでしょう。それより、事故について何か覚えていることは?」
「さっきから無いと言ってるだろう。」
気が早い刑事さんは、栗竹という名前だそうだ。治療終わってからにしてよ。
刑事さんが帰って、イルカさんにも散々怒って、やっと安心して事務に戻った。まったく。なんなのよ今日は。患者は暴れるわ警察はしつこいわ。なにより先生がいないのが問題よね。もしいたらバシッと解決してくれるんでしょうけど。
事務の仕事も、今日はかなりめんどくさい。大手術だった上に失明したし、身元も分からないからレポート作らなきゃいけなくなった。あー。帰ったら寝よ。
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