瞽人

「ふぅ。」

出版社を出て、大きく溜め息をいた。写真を見ても話を聞いても、結局何も出てこなかったからだ。骨折り損の儲け無し。

日は傾き掛けて居た。しかだ仕事は残っている。写真を見ていた時、那須と名乗る看護師から、手術が成功したと連絡が来たのだ。写真で見た怪我の状況から、正直半信半疑だった。病室に行ってみると、確かに彼は生きていた。が、目はおぼろげで、焦点が合っていない。訊くと、失明したそうだ。



「事故について何か知っている事は?」

「無いと言っているだろう。」

押し問答を続けても、一向に話す気配が無い。怒って居る様でもある。手術後直ぐに質問攻めにされた事からなのか、警察が敵に成る様なな生き方をして来たのか。

思考を巡らせながら質問を重ねたが、収穫は無い。那須が遮光眼鏡サングラスを渡す。目を隠す為の物か。

恐らく此奴こいつは殺し屋なのだろう、という直感はしていた。仲間の警察が追っていた事からも裏付けられている。記憶を失った訳では無いので、自白剤でも呑ませればくのかも知れないが、持って来ていなければ一般人、しかも怪我人に飲ませる様な薬でもない。


「……帰るか。」

酒場へ。

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