【Ⅱ】

部屋から全員が出て行ってすぐ、俺は病院から逃げた。どうやって?それはプロに質問する程の事ではない。


仕事をしなかった殺し屋を組織はどうするだろうか。1箇所に留まるのは危険だ。まあ、看護師と警察が鬱陶しかっただけだが。命の恩人である医者には感謝の手紙を置いてきた。もう2度と会うことはないだろう。


あてもなく街を彷徨う。日が落ちる。寒い。途中、服屋で1着失敬してきたものの、中は入院患者用の薄い服だ。どこかに入ろう。そう思っていたら、心地よい酒の匂いがしてきた。バーか。ここでいいか。入ろうとすると、出てきた人に肩をぶつけた。


入ると、暖かかった。木と酒の匂いがする。隠れ家的とはまさにこの事だな、と思った。

「いらっしゃいませ。」

バーテンダーの少し皺がれた低い声は、その生きた歳月を示していた。

「そうだな。さっきの人が飲んでいたものでも貰おうか。」

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